笑いに涙の混じる筋金入りの“話芸”の持ち主、94歳現役喜劇人・大村崑と和田秀樹氏の対談記事をまとめてお届け! ※2026年3月掲載記事を再編。

1.「片肺、片耳でもへっちゃら」94歳大村崑が元気ハツラツ! な理由

和田 小さい頃からテレビで観ている方が隣にいるのは妙な感じです。でもさすがですね。大村さんのひと声で場が一変する。
大村 そらもう長いことやってますから。もう一遍やりましょうか。「元気ハツラツ! オロナミンC」(笑)。
和田 (笑)。
大村 新幹線で移動する時なんかもね、オロナミンをこっそり席に置いておくんです。「あ、崑ちゃんや。写真撮って」と言われてこれ出すとみんな笑う。いい表情の写真になるんです。
和田 サービス精神が旺盛。
大村 声かけてくれたわけやから。ありがたいでしょ。
和田 やはり生粋の喜劇人なんですね。
大村 同年代の人はみんな死んでしまってね。喜劇人は早死になんですわ。
和田 え、そうなんですか。
大村 三波伸介さん。あの人、52歳で死んでるんです。
和田 あー。昔、NHKで似顔絵描いてましたっけ。
大村 そう。器用な人でね。本を書いたり漫画を描いたり「笑点」の司会やったり。ものすごいやり手やったんですわ。NHKが終わってから「崑ちゃん一緒にやろか」って声かけてくれて。だけど彼はボケなんです。僕もボケなんです。ツッコミがいない。それで「あんたツッコんでくれ。ツッコミも勉強してみたらいいよ」って言うたのよ。
和田 で、組んだんですか?
大村 そう。「てんぷくかご屋」って仕事のドラマを書いてもらってね。地方でやったらものすごいウケた。だから今度は二枚目の林与一とかを入れて宝塚劇場でやろうって言うてた時に死んじゃったんです。
2.94歳大村崑、元気の秘訣は「1口で40回噛む」。消化・吸収・脳によく、ボケ予防も

和田 対談1回目の終わりに「崑ちゃん流のかきくけこ」の話が出ましたが。
大村 かきくけこの「か」は感謝ね。「き」は興味。年を取ると興味が薄れてくるでしょ。でも僕は興味だらけでね。あれはなんで動いてんのやろ、中身はどうなってんのやろ、どないして作ったんやろって、何にでも興味を持つんですよ。
和田 大村さん、脳が若いんですよ。年を取ると脳も老化し、興味や意欲も落ちてくるのが一般的です。でも興味を持ち続けることで、脳は若さを保つことができるんです。
大村 なるほど。僕は工夫も好きでね。工夫の「く」です。止まってるものをどうやって動かそうとか、できないことをどうやったらできるかとか、いろいろ考えて工夫する。人にもやたらと聞きます。やってみることが大事なんですよ。楽しいでしょ。うまくできなくても、また考えて工夫すればいい。
和田 すばらしいですね。
大村 「け」は健康ね。体を鍛えるために今でもジムに行ってます。86歳のときに妻に誘われてライザップに行ったらね。「筋肉は死ぬまで鍛えられる」って言われて感動したんです。入会したらすっかり筋トレにハマってしまった。筋肉痛もあったけど、それも気持ちよくてね(笑)。
和田 筋金入りですね(笑)。
3.しゃきっと背中を真っ直ぐにしてると、脳は自分を元気だと思い込み、本当に元気になる

大村 今行ってるジムね、やたらとストレッチをやるんです。それからスクワットをやったりね。たっぷり1時間。体にも触ってくれます。
和田 いいですね。筋肉をつけるだけだけじゃなく、柔軟性も大事ですからね。それに体に触れられるとオキシトシンという幸せホルモンも出るんです。
大村 なるほど。スクワット、やってみましょか。“崑ちゃんのスクワット”って有名なんです。
和田 (笑)。お願いします。
大村 (実演しながら)ここまで腰を下ろすのよ。
和田 わあ。この姿勢をキープできるのがすごいです。
大村 ね、すごいでしょ。だから僕は足がちゃんと上がるの。もう一つ見せしましょか(笑)。
和田 本当にお元気で(笑)。
大村 「のびーる」というゴム製の健康器具を使うの。これ1100円くらいで買うたのかな。両手で持って頭の上から背中へと回していく。頭と背中にゴムが当たらないように。これ、先生にもやってもらいましょ。
和田 え、僕もやるの。(実演しながら)うーん、これ……。
大村 きついでしょ(笑)。
和田 はい。
大村 これをやるとね、肩が前に出なくなるんです。年寄りはみんな、頭と肩が前に出ているでしょ。
和田 その通りです。重心が前に傾いたまま歩くので、足が上がらないし、ちょっとした段差にもつまずいてしまう。
大村 それでひっくり返ってケガをする。骨も弱ってるからコケたら骨折ですよ。
4.一番重要なのは、患者の表情を見ること。マスク着用を義務付ける今の医療はよくない

大村 僕が元気でいられる理由は、もう一つあると思っていましてね。精神的なものなんだけど。僕は、お守りを大事にしてるんです。
和田 お守りってどんな?
大村 自分の好きな人の物を身に着ける。これが僕を守ってくれてると思っているんです。例えばこの腕輪は兵庫の門戸厄神のご住職が生前に愛用していたものです。
和田 ああ、門戸厄神。僕が通っていた塾がその近くにあったので知っています。有名なお寺ですね。
大村 はい。そこのご住職が僕を可愛がってくれましてね。お寺の階段を上がったところに提がっている大きな提灯にも「大村崑」と名前が入ってる。そのぐらい深いお付き合いをさせてもろうてね。
和田 そうなんですね。
大村 そのご住職が亡くなったとき、僕は檀家代表で弔辞を読んだんです。涙が止まらなくてね。寂しいし悔しいし。その帰りしなに、お嬢さんが僕を追っかけてきて、「これはお父さんが昨日まで着けていた物です。父は大村さんが大好きだったんで、もらってあげてください」と言ってくれたんですよ。それを持ってからね、僕はケガも病気もしなくなったのよ。不思議でしょ。
和田 なるほど。僕もわりとそういうことは信じていまして。
大村 そりゃよかった。精神科の先生に聞いてみたいと思ってたんですよ。
和田 守ってくれると信じるのがいいのかもしれませんね。
5.94歳・大村崑ちゃんの元気を支える“5本指運動”。必要なのは新聞紙とゴルフボール

大村 最近、いろんな人から「大村さん、元気の秘訣を教えてください」と言われるようになりましてね。
和田 こんなにお元気な94歳、めったにいませんからね。
大村 自分で考えた運動があってね。それを教えるんです。
和田 どんな運動ですか。
大村 5本指の運動です。新聞紙の上に手を置いて、5本の指を開いたりすぼめたりしながら、新聞紙をクシャクシャっと丸めていくんです。
和田 お年寄りは皮脂が少ないから、指がすべってなかなかクシャクシャっといかないかもしれませんね。
大村 そう。意外と難しいんです。インクで指も汚れるしね。丸めたらギュッギュッと握って小さく固めます。これやったあとはものすごい気持ちがいいんですよ。脳がスッキリする。
6.99歳の女性に恋する、94歳大村崑「僕の終点は103歳かな」

大村 対談の1回目で森繫の親父さんは怒らなかったという話をしましたよね。絶対に人の前で怒らない。家で怒ってるかどうかはわからんけど(笑)。
和田 (笑)。
大村 親父さんは、ぼやくんですよ。例えば、宝塚劇場の向かいに行きつけのレストランがあって、そこに「朝、集合」と言われてみんなが集まってくる。親父さんはいつも同じイスに座って同じ野菜カレー食べるんです。うまいんですよ、これが。僕らも同じメニューをね。だけどある日、ちょっとおいしくなかったの。親父さんもひと口食べて「おかしいな。ちょっとこれ作った人呼べ」って。
和田 たいへんだ。
大村 呼ばれてコックさんが来た。「これ、おぬし作ったの」「はい」、「味見した?」「はい」。「これ味見したの?これプロの味かな?みんなおいしゅうないと言うてる。いつもここでみんな食べてるのに、おかしいな」ってぼやいてね。「おまはんの喉ちんこ、俺が手術してやろか」って。
和田 (笑)。
大村 そしたら支配人が飛んできて「すいません、今日のお代はいただきません」と言うんです。親父さんは「違う。そうじゃない。お金は払うよ。俺は作った本人に、いつもおいしいものがなんでおいしくないのかと考えてほしいねん。な、考えてみて」と。それでお店を出てから「なあ、1週間後にあの店に行こう。いいな、みんな集まれよ」って言うんです。

