2025年、製薬企業との利益相反の医師が多い日本高血圧学会が血圧の治療目標値を“年齢に関係なく”「130/80mmHg未満」に下げると発表した。これにより高血圧との診断を受け、薬を飲む人の激増が予想される。本当にそれでいいのか。“医学常識のウソ”に鋭く切りこんだすべての国民必読の対談記事をまとめてお届け! ※2026年2月掲載記事を再編。

1.「血圧は無理に下げ過ぎない、はデータが証明している事実」

和田 大櫛先生の本『高血圧の9割は正常です』を読ませていただいて感銘を受けました。
大櫛 ありがとうございます。
和田 僕自身いわゆる高血圧で160〜170ぐらいをキープしています。ところが先日、前立腺肥大の手術をすることになり、血圧を下げないと手術ができないと言われたんです。
大櫛 なるほど。
和田 だから仕方なく医者の言うことを聞いて、薬でコントロールしたんです。入院中はさらに強めの薬を飲み130くらいまで下げました。
大櫛 ずいぶん下げましたね。
和田 はい。だけど、そこまで下げると一日中眠いんですよ。
大櫛 血流が低下しますから。
和田 こんなに眠いと仕事にならない。だから仮に寿命を少し縮めることになったとしても、術後、元の血圧に戻そうかと。それに大櫛先生の本にも、「血圧の下げ幅が大きいと死亡率が高くなる」と書いてあったので(笑)。
大櫛 おっしゃるとおりです。血圧は無理に下げる必要はない。というより、大きく下げるのはよくない。それはさまざまなデータで証明されています。
和田 はい。私は多くの高齢者を診てきていますが、血圧が高めの人のほうが元気です。脳をはじめ全身に血液を送るには、加齢とともに血圧は高くなるのが自然です。だから高齢者の血圧を130に薬で落とすようなことをしたら、いろんな弊害が出てくると思いますよ。
2.BCGワクチン効果なし。血圧基準値を下げると死者が増える。医療費は5兆円削れる

和田 対談の1回目で、2004年に日本高血圧学会が高血圧の基準値を下げたら死者数が増えた、という話が出ました。
大櫛 はい。この基準値は5年ごとに見直されます。次の2009年の段階では、見直しの原案が出た後、私は意見書を出したんです。パブコメを10日間受け付けてくれるというので。
和田 パブコメとは国民から広く意見を募る制度ですね。
大櫛 そうです。でも受付期間が10日間しかない。だから薬の副作用に詳しい医薬ビジランス研究所所長の浜六郎先生と分担して、重要な引用文献に目を通し、徹底的に調べて、片っ端から意見を書きました。誤字脱字も指摘しました。
和田 原案を精査した。
大櫛 はい。意見書には、「製薬企業の治験で収縮期血圧を20mmHg以上下げた群で、脳梗塞死亡が発生し、総死亡率が約1.5倍」、「私達の住民追跡研究で、高血圧群での薬物治療群で総死亡率が5倍」、「降圧剤による下げすぎの危険性を示す7本の論文」というエビデンスを突きつけました。「前回2004年改訂の翌年に下がり続けていた脳梗塞患者数の低下が止まって、死亡者数は増えた」という指摘もしました。
和田 踏み込みましたね。で、変わったんですか。
大櫛 私たちが指摘した誤字脱字の部分だけを訂正して、根本的な部分は変わりませんでした。しかし、その次の2014年版では基準値が上方修正されました。彼らも少しビビったのかもしれませんね。
3.血圧を降圧剤で20mmHg以上下げると、死亡率が1.5~5倍

和田 血圧に話を戻します。そもそも「血圧は高いと悪い」と言われたのは、脳卒中で亡くなる人が多かったからです。血圧が高くなることで血管が破れる。脳の血管は細いので出血しやすかったわけです。ところが戦後、日本人の栄養状態がよくなると、血管は破れにくくなり、出血型の脳卒中は少なくなりました。代わりに増えたのが脳梗塞です。
大櫛 はい。私は「なんで降圧剤で死亡率が上がるのか?」という疑問を持ちデータを解析しました。島根大学で医学部長をされていた小林祥泰先生と一緒に。
和田 有名な先生ですね。
大櫛 はい。小林先生が集めた脳卒中患者15,500人のデータを、当時私の持っていた住民22,000人の追跡データからコンピュータを使い、一人一人の年齢と性別を合わせてランダムにマッチングしたんです。
和田 なるほど。医学で言う症例対照研究ってやつですね。
大櫛 はい。年齢・性別は同じなのに、脳卒中を起こす人と起こさない人がいる。何が違うのかとデータを精査するんです。
和田 さまざまな影響が見えてくるでしょうね。
大櫛 はい。マッチングにより年齢や性別の影響を除いて、高血圧と降圧治療の効果/副作用を、脳卒中の3病態(脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血)、さらに脳梗塞を発生血管部位により心原性、アテローム、ラクナと分けて解析をしました。
和田 どんな結果になりましたか?
大櫛 統計学的に最も明確な答えが出たのは、降圧剤治療群で心原性脳梗塞リスクが大きく高まる、ということでした。
4.総死亡率が一番少ないのは血圧160の人、認知症が一番少ないのはなんと血圧185の人だった

和田 僕は健康診断に問題があると思っていて。
大櫛 やっぱり。私もです。欧米では健康診断なんてない。国民に対して一律の検査をして異常を見つけることは、一部の効果もあるけども、病気の罹患率と死亡率の低下にはならず、医療費高騰や薬害など副作用の方が大きい、という結果になりました。
和田 いらない治療、危険な治療に誘導することになるし、国民に健康不安も与えます。
大櫛 英国、フランス、ドイツ、カナダ、オーストラリアなど10ヶ国以上で健診の効果を検討した結果、効果より副作用のほうが大きいと、健診をやめた国が多いんです。
和田 血圧だって健診で計れば高めに出ますからね。
大櫛 はい。健診や医療機関で血圧を測ると、普段より高くなる人が多いんです。この現象は「白衣高血圧」と言われています。緊張して一時的に血圧が上がるだけなのですが、健診ではそれを「高血圧」と判定する。これは問題でしょう。
和田 2025年の日本高血圧学会の診断基準は診察室血圧で「130/80未満」でしたよね。
大櫛 そうです。
和田 僕は患者さんに「病院で測ると血圧は普段より10くらい上がる」と言っています。血圧が高いと患者さんは心配するからそう言って安心させます。
大櫛 いい先生ですね。ところが今回の基準は診察室血圧で「130/80未満」です。
和田 普段「120/70」くらいの人も高血圧に判定される可能性が出てきてしまう。
大櫛 日本高血圧学会は「診察室血圧」と「家庭血圧」の基準値を分けて示した。家庭血圧は「125/75未満」としました。だけどね、家庭での血圧測定って難しいんですよ。不正確な場合が多い。市販の血圧計の約80%は精度が不確かなまま販売されているという調査報告があるほどです。
和田 だから医療機関で測る。するとそんなに高くない人まで高血圧にされてしまう。
大櫛 なにがなんでも高血圧の患者を増やすんだという狙いが透けて見えるようです。
和田 めちゃくちゃですよね。
5.人間の主なエネルギー源は脂肪。糖分は必要ない

和田 ここからは糖尿の話に移ります。日本人は血圧の話と同じように糖尿にも関心が高い。近頃は糖質オフという言葉もよく耳にするようになりました。
大櫛 実は血圧と糖尿は深く関係していましてね。例えば肥満対策として糖質制限食が勧められていますが、これは血圧対策としても有効なことがアメリカで報告されています。
和田 血糖値が高いと、体は血管内の水分量を増やして血糖値を下げようとする。自然に血圧は上がってくる。
大櫛 そうです。私たちのグループでは糖質制限医療というのをやっていましてね。ケトン体生成食という糖質を控えた食事を勧めています。
和田 ケトン体という言葉は、一般の方には馴染みが薄いので簡単に説明してもらえますか。
大櫛 ケトン体は体内の脂肪を分解するときに出てくるものです。人間はこのケトン体を主たるエネルギー源にしているんですよ。
和田 一般の認識ではエネルギーは糖質で摂るものだと思っていますよね。
大櫛 そうですね。糖・グルコースもエネルギー源です。ですが実際は、糖は血液中に20kcalしかない。肝臓でも蓄えているんですが、ここにも600kcalしかない。だからすぐに消費されてしまう。100mくらい走るとなくなってしまうんです。
和田 スポーツ選手はエネルギー源として、試合の前にご飯や麺を食べる人が多いのですが、あれは無意味なんですか。
6.食事のコレステロールは減らさなくていい、中性脂肪も減らさなくていい

和田 糖尿病は今、2型がほとんどですよね。
大櫛 はい。95%くらいが2型で、1型糖尿病はごくわずか。
和田 なのに1型と2型で同じ治療をしている。僕はこれ、おかしいと思うんです。1型はインスリンが出なくなる病気ですから、インスリンを足さないといけない。
大櫛 そうです。基礎インスリンは絶対いりますからね。
和田 だけど2型はインスリンのレセプターが壊れていて、基礎インスリンはあるけど追加分泌がされないとか、分泌されてもあまり効果がない状態です。この2型に対して、1型と同じようにインスリンを足していくと、どんどんインスリンが増えてしまう。なのに足し続ける。これおかしいでしょ。
大櫛 おっしゃる通りです。それなら追加分泌がいらない生活をすればいい。ということで糖質制限食がお勧めなんです。
和田 論理的ですよね。
大櫛 ケトン体生成食はアメリカが発祥なんですが、彼らは突き詰めて考えますからね。糖質を1回ゼロにしてみようとやってみた。そしたらケトンが出てきて燃えてるとわかった。ケイヒル教授の理論が実証されたんです。そこで、ケトジェニックダイエットという形で定着するようになった。
和田 なるほど。僕はそのケトジェニックを意識したつもりはないんだけど、実際の食事では主食は少なくて、おかずがすごい多いんです。
大櫛 いいですね。
和田 カロリー的には、脂肪は1グラム当たり9カロリーだから、僕の食事はカロリーが結構多いことになる。糖質は少量しか食べないからカロリー的には少ない。とはいえ、摂取カロリーは欧米人並みに多いと思うんですよ。3000kcalくらいかな。そんなに多くて本当に大丈夫なんですか。
大櫛 大丈夫です。

