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2026.02.11

血圧を降圧剤で20mmHg以上下げると、死亡率が1.5~5倍【医学常識のウソ③】

2025年、製薬企業との利益相反の医師が多い日本高血圧学会が血圧の治療目標値を“年齢に関係なく”「130/80mmHg未満」に下げると発表した。これにより高血圧との診断を受け、薬を飲む人の激増が予想される。本当にそれでいいのか。“医学常識のウソ”に鋭く切りこんだすべての国民必読の対談、3回目。【他の記事はコチラ】

血圧を降圧剤で20mmHg以上下げると、死亡率が1.5~5倍【医学常識のウソ③】

脳卒中を起こす人と起こさない人の違い

和田 血圧に話を戻します。そもそも「血圧は高いと悪い」と言われたのは、脳卒中で亡くなる人が多かったからです。血圧が高くなることで血管が破れる。脳の血管は細いので出血しやすかったわけです。ところが戦後、日本人の栄養状態がよくなると、血管は破れにくくなり、出血型の脳卒中は少なくなりました。代わりに増えたのが脳梗塞です。

大櫛 はい。私は「なんで降圧剤で死亡率が上がるのか?」という疑問を持ちデータを解析しました。島根大学で医学部長をされていた小林祥泰先生と一緒に。

和田 有名な先生ですね。

大櫛 はい。小林先生が集めた脳卒中患者15,500人のデータを、当時私の持っていた住民22,000人の追跡データからコンピュータを使い、一人一人の年齢と性別を合わせてランダムにマッチングしたんです。

和田 なるほど。医学で言う症例対照研究ってやつですね。

大櫛 はい。年齢・性別は同じなのに、脳卒中を起こす人と起こさない人がいる。何が違うのかとデータを精査するんです。

和田 さまざまな影響が見えてくるでしょうね。

大櫛 はい。マッチングにより年齢や性別の影響を除いて、高血圧と降圧治療の効果/副作用を、脳卒中の3病態(脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血)、さらに脳梗塞を発生血管部位により心原性、アテローム、ラクナと分けて解析をしました。

和田 どんな結果になりましたか?

大櫛 統計学的に最も明確な答えが出たのは、降圧剤治療群で心原性脳梗塞リスクが大きく高まる、ということでした。

心原性脳梗塞が怖い

和田 心臓でできた血の塊が脳に飛んで血管を詰まらせるタイプの脳梗塞ですね。

大櫛 はい。血液は流れが乱れたり止まったりすると凝固して出血を防ぐ体制になります。発生した血栓は、心臓の周りでは血管が太いので通過しても、脳の血管は細いので、そこで詰まってしまい、血流が止まる。

和田 心源性脳梗塞は突然死や麻痺の確率が大きいとされています。心臓でできた大きな血栓が脳の入り口付近で詰まるので、脳全体がダメージを受けるんです。よく言われるのは、動脈硬化が進み血管壁が厚くなって詰まるのは多発性脳梗塞です。でも、多発性は直接の死の原因にはなりにくい。そうそう死なないですね。

大櫛 はい。死ぬということで原因を調べると、やはり心原性の可能性が高い。とくに高血圧の薬を飲んでいた人の死亡率は高く、飲んでいない人の3倍になっていました。年齢別にも分析してみましたが、若い世代も高齢者もほぼ同じく死亡率は3倍でした。

和田 なるほど。

大櫛 この分析結果は脳卒中学会の学会誌にも掲載していただきました。かなりの衝撃を与えたと思いますけどね。

和田 でしょうね。降圧剤は脳卒中予防のために飲むというのが医学界の常識ですからね。

大櫛 ところが結果は逆だった。脳梗塞を増やしていたんです。これは統計的にも明確に有意差があると言えるものです。

和田 価値あるデータですね。

大櫛 このデータから、血圧を20以上大きく下げると血流が悪くなって死ぬ、ということが明らかになったわけです。心原性の場合は、心臓で乱流が起こり、血栓ができると思われます。

和田 なるほど。

血圧の高い人は自立度も高い

和田 常識的に考えて、血液がイキイキと全身を巡っているほうが健康であることは間違いない。だけど西洋医学はそのことをあまり重視しないんです。逆に東洋や漢方の医学は血流が悪いと病気なると考えます。漢方薬の中には血圧上げるような薬もあるんですよ。僕は高齢者をたくさん診てきたから、実感としてそれがわかる。血圧が高めの人はやっぱり元気だし活動的です。自分で生活できる自立度も高いですしね。

大櫛 その通りです。100歳以上の長寿者を調べた慶應義塾大学医学部の「百寿者調査」でも、それは明らかです。これについては後でお話しします。

和田 もう血圧は高いのが悪くて、低いのがいいみたいな考え方を改めればいいのに。その医学常識がそもそも危険だということに日本も気づかないと。

大櫛 同感です。例えばイギリスの公的医療ガイドライン(NICE)では、高血圧について「治療が必要な場合もあるが、全員が一定の基準に向けて薬を出すのは危ない」ということが書かれています。一人一人の状況に応じて治療をすべきということですね。

和田 その通りですね。

大櫛 もちろん高血圧が原因で心臓が肥大する、腎臓が悪くなるということもある。そういう場合は血圧を一時的に下げて、きちんと心臓や腎臓の患部を治療しなければなりません。

和田 治療すれば降圧薬は必要なくなりますからね。薬を減らせるわけですからね。

大櫛 はい。そういうことをまずやるべきだと、イギリスの公的ガイドライン「NICE」には明記されています。日本のように基準を決めた一律の医療はしない。というか「それをしてはいけない」と禁じているんです。

和田 本来そうですね。スウェーデンも原則的に高齢者には積極的に薬を使わないという考え方なんです。日本の医者たちはそれを見て「薬を使ってもらえない気の毒な国民だ」と言ってたわけです。ところが2024年スウェーデンは男性の平均寿命が世界1位になったんです。

大櫛 日本では、2025年に高血圧の基準値が見直されて「130/80mmHg未満」になったでしょ。私は70万人の健診データを解析しているんですが、それと厚労省の人口動態調査を使って、75歳以上の人で、収縮期血圧を130未満という基準で20以上下げることになる人数などを試算すると、もし全員が高血圧学会に従うと仮定すると、年間死亡者は今より9万7000人増えることになる。

和田 恐ろしいですよね。そもそも血圧が高いのは悪いと言われたのは過去に日本人の死因のトップが脳卒中(脳内出血)だったからです。その理論をいまだに引きずり、日本人は血圧が高いと脳卒中になると信じている。「先生、血圧が141なっちゃいました」と心配してくる患者さんは多いです。

大櫛 正しい知識を教える必要がありますよね。脳卒中は大きく分けると脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の3種類に分かれます。現在日本での発生率は、脳梗塞が79%、脳出血は17%、くも膜下出血は4%。約8割は詰まるほうの脳梗塞です。詰まるほうが怖い。逆に、高血圧による脳出血のリスクはかなり低くなっているんです。

和田 脳出血を減らすための血圧の薬が、今は脳梗塞を増やしてしまっている。その事実をまずは知るべきです。

大櫛 日本の過去の疫学調査の報告を見ると、高度成長期に動物性食品の摂取量が増加するとともに脳内出血の発生率は大きく低下しています。つまり肉を食べるようになり、栄養状態がよくなったことで血管が破れにくくなったと言える。救命救急医の常識として、脳梗塞患者の治療で、上の血圧が185までは血栓溶解剤の適応です。つまり、病弱の人でも185までは血管が破れる危険性がないのです。

和田 高血圧は悪、という血圧信仰そのものを見直さないといけませんね。

大櫛 本当にそう思います。

※4回目に続く

大櫛陽一/Yoichi Ogushi(左)
東海大学名誉教授・大櫛医学情報研究所所長。1947年徳島市生まれ。大阪大学大学院工学研究科修了。大阪府立の複数病院で研究をした後、1988年より東海大学医学部教授。2012年より現職。著書に『高血圧の9割は正常です』『長生きしたければ高血圧のウソに気づきなさい』『「血圧147」で薬は飲むな』など著書多数。

和田秀樹/Hideki Wada(右)
精神科医・幸齢党党首。1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒業後、同大附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー等を経て、和田秀樹こころと体のクリニック院長に。当対談連載をまとめた『80歳の壁を超えた人たち』をはじめ、『80歳の壁』『幸齢党宣言』など著書多数。

TEXT=山城稔

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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