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2025.09.16

89歳医師、PCR陽性でもいつも無症状だった理由とは【精神科医対談②】

89歳の今も現役で活躍するホリスティック医学の第一人者、帯津良一氏と幸齢者の強い味方・和田秀樹医師。『80歳の壁』著者・和田秀樹が“長生きの真意”に迫る連載。2回目。

89歳医師、PCR陽性でもいつも無症状だった理由とは

医師と患者さんは同じ病に向き合う仲間

和田 先ほどクリニックに美人の女性が2人訪ねてきました。

帯津 患者さんです。もう1人は彼女のお友だちかな。

和田 笑顔で手を振り合って。医師と患者さんというよりは親しい友人みたいに見えました。

帯津 私はね、患者さんと心を通わせることが一番大事だと思っていましてね。だから白衣も着ません。診察の妨げになると思ってるんですよ。医者の権威をまとうより、普段着にサンダル履きのほうが親しみやすい。

和田 素晴らしいですね。

帯津 医者と患者は同じ病に向き合う仲間という意識でね。そのほうが自然治癒力も上がると私は思っているんですよ。

和田 私も精神科医なので、それはよくわかります。

帯津 そう言えば、和田先生、選挙に出たそうですね。

和田 いえ、選挙に出たわけではないんですけど。「幸齢党」という政党をつくりましてね。選挙に出るつもりだったんですけど、立候補者の人数が足りなかったので、今回は東京で一人、応援させていただくのに留まりました。まあでも、1回目は惨敗でした。高齢者の幸せを目指すので「幸齢党」と名付けました。

帯津 そうでしたか。高齢者の幸せを目指すってのはいいですね。医者の私が言うのも変ですが、病院へ行ったからといって病気が治るわけではないですからね。病気を治すのはやはり、もともと人間が持っている自然治癒力です。そして自然治癒力を高める最大の原動力はときめきです。ときめいている患者さんは、ほぼ例外なく症状がよくなっていきますからね。

和田 全く同感です。それなのに現実は免許の返納を促したり、働く意欲と能力のあるお年寄りを悪い労働環境で雇ったりする。高齢者の割合が増えているんだから本当は現役世代との「共生社会」を目指すべきなのに、逆をいっているんです。マスコミも高齢者に対してはネガティブな扱いをすることが多いと、僕は感じています。

帯津 お年寄りはこれまでの人生を、人のため、家族のため、社会のために生きてきたんだから、今後は自分のために時間を使う。もっと楽しんで、自分を慈しんでほしいですね。

帯津良一
帯津良一/Ryoichi Obitsu
医学博士。1936年埼玉県生まれ。1961年東京大学医学部卒業。2004年に東京・池袋に統合医学の拠点、帯津三敬塾クリニックを開設。がん治療を専門とし、西洋医学に中国医学や代替療法を採り入れたホリスティック医学を提唱する。著書に『89歳、現役医師が実践! ときめいて大往生』など。

排除するのではなく認める

和田 僕はある時期まで精神分析を勉強してたんですけど、その後、森田療法を勉強して。

帯津 ああー、森田療法。

和田 森田療法のよいところは、不安をなくそうとするのではなく、不安をあるものとして受け入れるんです。例えば「顔がすぐに赤くなる」と悩んでいる赤面恐怖の患者さんに対してはこんな言い方をします。「僕はあなたの顔が赤いのは治せません。だけど顔が赤くても人に好かれる方法を一緒に考えることはできますよ」と。

帯津 排除するのではなく、認めるんですね?

和田 はい。日本人は不都合なものを排除しようとするんです。最近ではコロナのときに、それを怖いくらい感じました。

帯津 そうでしたね。

和田 僕は「感染したら仕方ない。そのときはそのときだ」と旅行に行ったりしてたんですけどね。

帯津 和田先生はコロナにはならなかったの?

和田 いや、なりました。というか「PCR陽性」が3回出たんですけど、3回とも無症状です。

和田秀樹
和田秀樹/Hideki Wada
精神科医・幸齢党党首。1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒業後、同大附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、浴風会病院精神科医師を経て、和田秀樹こころと体のクリニック院長に。35年以上にわたって高齢者医療の現場に携わる。『80歳の壁』『女80歳の壁』など著書多数。

免疫力が高いと症状が出ない

帯津 そうですか。私もね、PCR検査をしたら陽性が出た。そしたら「4日間入院してくれ」と言われて。どこも悪いところがないんだけど仕方なく入院したんですよ。自分の病院にね。そしたら事務長がビール瓶とウイスキーを持ってきてくれて。

和田 素晴らしい。

帯津 だからその4日間ね、病室で飲んでました(笑)。

和田 (笑)。やっぱり免疫力の高いことが大事なんですね。

帯津 そう思いますね。私は2回陽性になったけど、2回とも発病はしませんでした。

和田 免疫力が高いんでしょうね。でも、事務長さんも優秀ですよね。帯津先生はお酒を飲んだほうが免疫力が上がると知っているわけだから(笑)。

帯津 ありがたいよね(笑)。

和田 免疫学者の奥村康先生も指摘しています。「部屋に閉じこもって怖い怖いと言ってると免疫力が下がり、かえってコロナが重症化するんだ」と。

帯津 本当にそう思いますね。この病院もがんの患者さんが多いんですよ。抗がん剤治療をしてる人も多いんだけど、ご家族が患者さんに「もっと野菜を食べなきゃね」とか「玄米がいいのよ」なんて言ってる。だけど抗がん剤ってね、体も心もつらいんですよ。だからせめて食事くらい、好きなものを食べさせてあげたいと思うんですよね。

和田 その通りだと思います。

帯津 ホッとしたほうが免疫上がりますよ、って言うとね、患者さんは喜びますよ。

和田 そりゃそうです。

帯津 家族は「余計なこと言うな」という感じで苦笑いしてますけど(笑)。でもね、そういうポジティブな話をすると、外来の診察室が明るくなって、私も嬉しいんですよ。

好きなことをして生きた方がいい

和田 僕の知人が82歳で肺がんが見つかり医師から「もう手遅れだ」と言われたそうです。その人、すごいヘビースモーカーなんですよ。余命宣告で相当ショックなのに、愉しみのタバコまで取り上げられて、すっかり意気消沈しちゃいましてね。

帯津 そうですよね。

和田 だけどある日、開き直って吸い出したんです。「俺はタバコのせいでがんになったのかもしれないけど、タバコのせいで進行するとは限らない」って。

帯津 いいですね。

和田 そしたら元気になって。

帯津 そうでしょ(笑)。

和田 結局、タバコを吸い続け92歳で亡くなったんですけど。

帯津 ほおー、大往生ですね。

和田 がんじゃなく、くも膜下出血でなくなったんです。でも死因はなんであれ、人間はいつか必ず死にますからね。好きなタバコを吸って長生きしたんだから、満足だと思いますよ。

帯津 ベッドの上で天井を見つめながら人生の幕を閉じるのではなく、元気なまま、ある日突然、コロリと逝ったんですからね。いいじゃないですか。

和田 同感です。やっぱり、おいしいものを食べたり、楽しいことをしながら生きたいと、僕は思いますけどね。

※3回目に続く

TEXT=山城稔

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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