放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出した・桝本壮志のコラム。

「私はよく『レスが遅い』と言われます。移動中などに返信をするとミスしそうですし、丁寧に対応しようとすると遅くなり、夜や翌日になってしまうんです。『レスは早いほうがいい』とよく聞きますが、本当なのでしょうか?」という相談をいただきました。
デジタル社会を言い換えると「返信社会」。社内メールの返信、取引先への応対、知人のSNS投稿へのレスづけ……。もはやストレスの「レス」は、レス(返信)のことじゃないかと思ってしまうほど、誰もがレスに追われていますよね?
そこで今回は、日ごろ僕が、職場の若手や生徒たちに伝えている、「レスが遅い」と言われている人たちに知ってほしい、「一流ビジネスパーソンのレスにある3つの共通点」をシェアしていきたいと思います。
仕事は、相手の希望の「少し上をいく」ゲーム
僕はこれまで、数多くの「一流」と呼ばれているクリエーターや企業のリーダーたちと仕事をしてきましたが、彼らには3つの共通点と、たしかな理由がありました。
その3つとは、①「一流はみんな仕事のレスが早い」、②「短文で要点のみ」、③「プライベートでのレスは遅め」です。
まず、一流は仕事のレスがとても早いです。例えば昨日、ある企業のトップと半日で15回ほどLINEをしましたが、どれも1時間以内にレスがあり、しかもその間に6つの会議に出ていたそうです。
その人は以前、レスの早さについて、「だって、社長のレスが早いと面白いでしょ?」と言って笑っていました。
すべての仕事には「相手への希望」が隠れています。できれば早く返答してほしい、早めに仕上げてほしい、目標を達成してほしいなど“可能であればとても助かる”という本音があるもの。
視点をかえると、この“相手の希望の少し上をいくことができる”と、信頼やチャンスを得やすくなると言えます。
この本質に気づいている仕事がデキる人は、金曜日シメの資料を木曜日に送ったり、今週中に返答がほしいというオーダーを即日回答したりして、相手の希望の少し上をいくことをゲーム化して楽しみ、信頼されていくカラクリがあるんですね。
レスは「トイレのノック」だと思えばいい
では、なぜ一流はそんなに早くレスができるのか? そのコツが2つ目の「短文で要点のみ」です。
僕の周りには、売れっ子作家や出版業界の人たちも多いのですが、彼らのレスはみんな短文でおおざっぱ。ホントに文芸家なの? と思っちゃうほど稚拙な文章なのですが、レスは早く、シンプルに要点のみを伝えてきます。
このスピード感について、ある先輩作家は、「早く返したほうが文章力のハードルは下がるからね」と言っていました。
返信は「返金」と同じで、遅くなればなるほど利子がつき、丁寧さや語彙力が求められます。
しかし、メールが届いた瞬間にレスをすれば、そんなもの不要ですし、要点だけを伝える最小文字数でやり過ごせます。
僕自身も“レスはトイレのノックのようなもの”だと考えており、ノックする人がいたら機械的にノックし返すようにしています。
スルーを決め込むと、どんどんノックしてくるし、用を済ませたあとに出にくい(返信しづらい)状況を自ら作り出してしまうので、やはり即レスのほうが賢いと感じています。
レスが遅い人=仕事ができない人ではない
最後に、「私はレスが遅いからダメな人間だ」と思っている人はいませんか? 安心してください。ここまで伝えてきたのは、あくまで「仕事上のレスの話」だからです。
よく仕事と私生活の返信スピードを混在させている人がいますが、私たちは出社した瞬間に、リーダー、メンター、後輩などの「職場上の配役」を演じるアクターになります。
「早くレスを返す」は、その役を上手く演じるための一つの自己演出。言わば“職場限定のレスが早い人”になればいいのです。
周りの一流、そして僕も、私生活ではレスが遅く、よく家族や友人に「遅いよ!」と叱られている人が多いので、うまく力を抜いて、入れるべき要所で入れていけばいいんですね。
ではまた来週、別のテーマでお逢いしましょう。

1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出。