「カラダは究極の資本であり、投資先」を唱え、予防医療の普及に力を注ぐ堀江貴文氏と、血液のがんにかかったのを機に、身体についてはもちろん生き方までも見直した岸博幸氏。著書『金を使うならカラダに使え。』『余命10年。』を同時期に刊行した2人の健康に関する金言を、3回に渡ってお届けする。1回目。
「人間ドックは24歳から受診しています」堀江
岸 僕は今、血液のがんと言われる多発性骨髄腫の治療中ですが、病気が判明したのは、5年ぶりに受けた人間ドックで、でした。当時60歳でしたが、体力にはすごく自信があったから、人間ドックはおろか、勤務先で毎年行われる健康診断すらずっとスルーしていまして。疲れやすくなったことと周囲から顔色が悪いと指摘されたのがきっかけで、久しぶりに受診したら、病気が見つかったというわけです。ずっと政策に関わってきて、医療費抑制のためには予防医療が重要だと認識していたのに、自分の身体に関してはまったくできていなかったと、今更ながら反省しています。
堀江 学生時代までは学校で年に1回健診を強制的に受けさせられますが、社会人になると状況が変わりますからね。中小企業のなかには、社員の定期健診を行っていないところもありますし。
岸 堀江さんは、人間ドックは毎年受けているんですか?
堀江 ええ、起業した24歳の頃から、定期的に受けていますね。加入している健康保険組合が提携している医療機関を利用したりして。
岸 そんなに若い頃から⁉
堀江 当時の共同経営者が健康に対する意識が高くて、「責任ある立場なのだから、健康チェックは必要だ」と勧められて。僕、意外と人の言うことを素直に聞くんですよ。
岸 全然そんな風には見えないのに(笑)。
堀江 いや、けっこう素直なんです(笑)。大学生の時も、虫歯が悪化して大学構内の病院に行ったら、担当医から「歯がきちんと磨けていない。磨けるようになるまで治療しない」と言われて、2週間くらいブラッシングの指導を受けましたね。歯の健康に関しては、あの時から意識していますよ。
岸 それは、すばらしい。
堀江 おかげで、24歳から51歳の今に至るまでの体に関するデータがすべて蓄積されているんですよ。そのデータを見ると、自分の体質みたいなものがわかります。僕の場合、肝臓系が異常に強くて、過去25年でγ-GTPの数値が基準より高くなったことは一度もない代わりに、腎臓結石はできやすい。腎臓結石には水分不足が大敵なので、日頃すごく水を飲んでいるんですよ。こんな風に、自分の体質がわかっていれば、事前に対策がとれます。
岸 まさに予防医療ですね。僕の病気は原因不明の難病だから、予防できるものではないけれど、もっと早く見つかっていたらまた違ったのかなとは思います。だから今は、会う人ごとに、毎年健診を受けた方がいいって勧めているんですよ。「ちゃんと自分の身体をチェックしないと、オレみたいになっちゃうぞ」って。
「医療費抑制のためにも予防医療に力を入れるべき」岸
堀江 僕は2016年に予防医療普及協会を立ち上げたんですが、きっかけになったのは、胃がんのほとんどの原因がピロリ菌だと聞いたこと。つまり、胃の除菌をすれば胃がんが予防できる可能性が高いのに、その情報自体、知らない人が多いのに驚愕しました。糖尿病にしても、人工透析が必要になる前に食生活を改めるとか、血糖値を下げる薬を服用すればいいのに、こうした予防の重要性を認識している人が少ないんですよね。
岸 確かに、予防のために薬を利用しようという人は、まだまだ少ないですね。サプリメントは摂っても、薬は飲みたくないという人の方が圧倒的に多い気がします。サプリメントは機能性食品だから、薬のような効果が期待できないのに。
堀江 僕なんて、人間ドックで数値がちょっと悪くなったら、それを調整してくれる薬を摂って、基準内に収まるようにしますけどね。
岸 医学の進歩は凄まじいですよね。僕も、造血幹細胞移植などの治療もしましたが、薬で血液内の数値がかなり改善できましたからね。こうした医学の進歩を活用しない手はないですよね。
堀江 その第一歩が健診。せめて血液検査や血圧測定くらいはしてほしいですね。
岸 高齢化によって医療費は増え続けていて、このままでは日本の医療保険制度は近い将来立ち行かなくなります。医療費を抑制するためにも、そろそろ政府は、本気で予防医療に力を入れるべきでしょう。僕自身、去年3ヵ月近く入院して、治療費はけっこうかかりました。お金のことを考えても、病気になる前に予防することは、本当に大切。最近は、自治体の中にも予防医療に積極的に取り組んでいるところもありますが、この動きが、もっと広がってほしいですね。
堀江 確かに、予防医療は医療費を抑えるためにも大切なんですが、僕は、医療機関は今後、必然的に予防医療にシフトしなければならなくなると思っているんですよ。高齢者のボリュームゾーンを占めている団塊世代は今80歳前後。となると、10年後には高齢者の数は大幅に減って、治療のために医療機関を訪れる人が少なくなってくるはず。となれば、必然的に予防医療に力を入れざるを得なくなるだろうと。
岸 それは一理ありますね。ただ問題は、そこまで日本の医療保険制度が持つかどうか。いずれにしても、これからの医療は予防がキーワードですね。
※2回目に続く