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2024.04.18

「血液数値が異常なレベル」即入院を1ヵ月延そうと主治医とバトルした理由とは【岸博幸】

2023年1月、多発性骨髄腫という血液のがんに罹患していることを知った岸博幸氏。余命10年を告げられた岸氏が、闘病の記録や今後の生き方、日本の未来への提案をつづった著書『余命10年。多発性骨髄腫になって、やめたこと・始めたこと。』の一部を再編集してお届けする。第1回。#2#3#4#5#6 ※順次公開予定

点滴
Unsplash/Marcelo Leal ※写真はイメージ

今日からすぐ入院して治療しないとまずいことに…

体調の悪さが病気のせいだとわかったこと、その病気に対する治療法が確立されているということ、治療すればあと10年から15年は生きられるということ。

主治医の説明は丁寧でわかりやすかった。ただ、主治医から「血液数値が異常なレベルなので、今日から入院してもらい、治療を開始したい」と言われた時は困った。

すでに翌月(2月)は、休みがないくらいに仕事のスケジュールが埋まっていた。特にテレビや講演などは、かなり前から予定が組まれるので、直前キャンセルとなれば、多方面に迷惑がかかる。それは、仕事人間の僕としては本意ではない。

ただし、1ヵ月後の3月以降のスケジュールであれば、調整可能かもしれない。

そこで、「入院は1ヵ月待ってほしい」と訴えたのだが、主治医も、「不整脈を起こしたら死んでしまうかもしれないのだから、一刻も早く治療を始めるべき」と言って譲らない。

ちなみに、多発性骨髄腫の状態は、血液中の免疫グロブリンの値で判断するようだが、そのうち免疫グロブリンGを例にとると、その基準値は上限が1747で下限が861であるのに対して、僕は10145というかなり異常な数値だったので、主治医がこう言うのも無理はなかった。

一番大変で、ストレスフルだったのは入院までの1ヵ月

それから、「今日にでも入院を」「1ヵ月後じゃないとムリ」と、押し問答が始まったが、「オレはバカじゃないか」と内心思っていた。

だって、その道の第一人者から「今すぐ治療を始めないと命を落とす危険がある」と言われているのに、治療を後回しにし、仕事を優先しようとしているのだから。

仕事を引き受けたからには責任があるとか、自分の仕事に対するプライドだとか、もっともらしい理由はいくらでも言える。

でも、そんな“屁理屈”を並べて、仕事を優先した結果、命を落としてしまったら、単なる大バカ者だ。でもまぁ、この時に感じた「自分はとことんバカだ」という反省が、その後の自分なりの悟りにつながるのだが……。

最終的に、「2月中は、通院で容体を監視しながら治療を始める」「水分と栄養と睡眠時間をたっぷり摂る」ことを条件に、主治医には3月入院を認めてもらった。

今思い返しても、一番大変で、ストレスフルだったのは入院までの1ヵ月だった。

週に1回は注射と体調チェックのために病院に行き、毎日多量の薬を服用し、生活習慣も改めた。

それまでの僕は不摂生の典型で、食事は1日1回かせいぜい2回で、水分もあまり摂らなかったけれど、朝昼晩と食べるようにし、水分も頻繁に摂るようにした。睡眠時間も1日4〜5時間だったのが、最低でも6〜7時間は眠るように心がけた。

そうした生活を送りつつ、いつ、どこで不整脈を起こしてもおかしくないのだと内心常に恐れながら、日帰りの地方出張を繰り返す。そんな精神的に余裕がない状況が、約1ヵ月続いた。

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岸博幸『余命10年』
余命10年
多発性骨髄腫になって、やめたこと・始めたこと。

¥1,760/幻冬舎

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TEXT=岸博幸

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