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2023.08.20

精神科医 和田秀樹「薬でコレステロール値を下げる」は命取り。その年齢とは?

30万部を記録した『80歳の壁』はじめ、多くのベストセラーを手がける高齢者専門の精神科医・和田秀樹氏が“心の若がえり”を指南。世間一般には、コレステロール値が高いことはデメリットとされるが、ある年齢になると「足りない害によって健康寿命が縮みやすくなる」と和田氏は語る。『65歳から始める 和田式 心の若がえり』の一部を再編集してお届けする。【和田秀樹氏の記事】

※写真はイメージ

65歳以上は数値を下げると健康に害を及ぼす

欧米では、健康診断を医療政策として採用していません。
健診とそれによる早期発見・治療の有効性には、エビデンスがないからです。反対に、「健診に有効性はない」というエビデンスは存在します。

フィンランドで実施された、有名な比較試験があります。

高血圧、高コレステロール、高血糖、肥満、喫煙などのリスクが1つ以上あり、生活習慣病と診断された1200人を対象に、15年間の追跡調査が行われました。

この調査では、対象者を2つのグループに分け、一つは健診も医師の指示もない「放置群」、もう一つは定期的に健診を行い、医師が指示を出す「医療介入群」としました。

その結果、15年後に放置群で亡くなった人は46人、これに対して医療介入群は67人でした。毎年、健診を真面目に受け、医師の指示に従って生活していた人のほうが、死亡数が多かったのです。

和田秀樹
和田秀樹/Hideki Wada
1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、ルネクリニック東京院院長。高齢者専門の精神科医として、35年近くにわたって高齢者医療の現場に携わっている。『80歳の壁』『ぼけの壁』(ともに幻冬舎新書)、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)など著書多数。新刊に『65歳から始める 和田式 心の若がえり』(幻冬舎)。

健診によって異常値を示した項目があると、糖尿病、高血圧症、脂質異常症、肥満症などの病名がつきます。

病名がつけば、本人に自覚症状がなく健康的に暮らしていても、治療の対象になります。「数値が高いですね。正常値まで下げましょう」と薬が処方され、適正体重まで減量を求められたり、塩辛いものやお酒、タバコも控えるよう指導されたりします。

このように、医療が介入して、余剰分を取り除いていくことを「引き算医療」と私は呼んでいます。引き算医療は、一見、健康維持に必要なことのように思えます。ところが、65歳を過ぎたら、引き算医療は害になることが多いのです。

とくに薬の使用には注意が必要です。若い頃と比べて、肝臓や腎臓の機能が落ちているぶん、薬が体内で作用する時間が長くなります。薬を毎日飲み続けることで、頭がボーッとしたり、だるくなったりするなどの不調が起こりやすくなるのです。

がん予防にもコレステロールは欠かせない

たとえば、一般的な医療では、コレステロールは動脈硬化を引き起こすため、薬でコレステロール値を下げる引き算医療が行われます。コレステロール値が高いという「余る害」が問題視されるからです。

しかし、コレステロールは細胞膜やホルモンをつくる重要な材料です。不足すれば、細胞分裂の際にミスコピーが起こりやすくなり、免疫機能の低下やがん細胞の発生リスクが高まります。つまり、「足りない害」によって、健康寿命が縮みやすいのです。

体の老化が進行する高年者の場合、「余る害」と「足りない害」では、「足りない害」のほうがはるかに大きくなります。

なのになぜ、一般的な医師は薬を使ってコレステロール値を下げようとするのでしょうか。それは、10年後、20年後の心筋梗塞や脳卒中(のうそっちゅう)の発症を避けるためです。

しかし、どんなに注意していても、動脈硬化は加齢とともに少なからず起こります。私が浴風会病院にて年間約100例の病理解剖を見てきたなかで、80歳を過ぎて動脈硬化が進んでいない人は、ただの一人もいませんでした。

それなのに、10年後、20年後の未来のために、コレステロール値を下げる引き算医療によって体調が悪化し、日常生活に制限が生じてしまうとしたら、その医療になんの意味があるのでしょうか。

そもそも、日本人の場合、2020年に急性心筋梗塞で亡くなった人は、年間およそ3万人でした。一方、がんで亡くなった人は、およそ37万8000人。日本人はがんで死ぬ人が、心筋梗塞で亡くなる人よりも10倍以上も多いのです。

心筋梗塞は心臓ドックで予防できますが、がん検診でがんは防げません。がん予防にはコレステロールが必要です。

65歳を過ぎた人は、心臓ドックを受けておけば、コレステロール値を薬で下げる必要性はない、というのが私の考えです。

※続く

TEXT=和田秀樹

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