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2024.04.05

岸博幸「消費税は15%に引き上げるしかない」

2023年1月、多発性骨髄腫という血液のがんに罹患していることを知った岸博幸氏。余命10年を告げられた岸氏が、闘病の記録や今後の生き方、日本の未来への提案をつづった著書『余命10年。多発性骨髄腫になって、やめたこと・始めたこと。』を上梓。残りの人生は、日本を良くするための活動に力を注ぐ。そう決意した岸氏は、本書の中で、日本が今後とるべき道についても提言している。今回は、本書には掲載されていない“消費税”について、自説を語ってもらう。

日本の借金は7年連続で過去最大を更新

この30年で経済力が著しく低下した日本。それと並んで大きな問題になっているのが、財源不足だ。2023年の財務省発表によると、国債や借入金などを合わせた政府の債務、いわゆる国の借金は1270兆円余りと、7年連続で過去最大を更新。うち1136兆3830億円を国債が占めている。ちなみにこの額は、日本のGDPの約258%。財政破綻が懸念された2009年当時のギリシャでも、GDP比約127%だったことを考えると、とてつもなく危険な状況にあるのは明白だ。

「『日本は海外債券や有形固定資産などの財産があるから、差し引きすれば借金はそこまで多くない』とか、『日銀が国債を購入するのだから問題がない』といった論を唱え、日本の国家が破綻することはないと言い張る専門家もいるが、僕は賛同しかねます。

机上の論としては成立するけれど、財産があるといっても、それを現金化するのは簡単ではないし、インフレで金利が上昇すれば、日銀が国債を買い続けることも難しくなる。利払い費が上昇して財政がさらに苦しくなる上に、ハイパーインフレにつながりかねません。

数年前、『自国通貨を発行している国は、債務返済のための通貨を自由に発行できるため、財政破綻はしない』というMMT理論(現代貨幣理論)が注目され、日本はその典型例という声もあがりましたが、今では否定的な声の方が圧倒的に多いくらい。だから、なんとしてでも国は収入を増やし、財政を健全化しなくてはならないのですが、政府はその手立てに迷走しています」

所得税も法人税もこれ以上高くするのは危険

国の収入=歳入は、税金と国債(借金でもある)、国有財産の売却益などだが、圧倒的に割合が大きいのは、所得税・法人税・消費税などから成る税金。

「岸田首相は“増税メガネ”と言われるのを嫌って、消費税を増税せずになんとか他から工面しようとしているようですが、消費税はどこかで上げざるを得ないというのが僕の考え。もっともこれは、消去法での結論。所得税は、今以上には上げられませんから」

所得税率は年収(所得金額)に応じて5%から45%の7段階に設定されているが、所得税を納めている人の59%は、税率5%、つまり、所得金額194万9000円までに該当している。その上の段階となる税率10%、年収329万9000円までの該当者が約20%。

「納税者の実に8割近くが経済的に豊かとはいえない状況下で、所得税率を上げるなんてことはできるわけがありません。ならば、所得が多い人の税率を上げればいいかというと、それも難しい。現在でも、所得金額900万円から1799万9000円で33%、1800万円から3999万9000円で40%、4000万円以上の場合は45%もの所得税率を課せられているのです。これ以上高くしたら、高額所得者ほど、税金が安い海外に移住してしまうでしょう」

法人税率も同様で、日本の実行法人税率は30%弱だが、あまり高くし過ぎると日本から優良企業がどんどん海外に流出してしまう懸念がある。シンガポールは、法人税率17%で、優遇措置や控除の適用で実効税率はそれ以下。「その結果、企業誘致が成功し、繁栄していることを考えると、むしろ法人税率は下げた方が得策かもしれないくらい」と、岸氏。

「そう考えると、国民が等しく負担する消費税率を上げるのが、最も公平な手段ということになります。今すぐにではないにしろ、いずれは15%程度まではアップする必要があるでしょう。もちろん国民からの反発は大きいと思いますが、国の財政がさらに厳しくなり、社会保障制度が崩壊したり、将来手にする年金額が減ったり、じゅうぶんな医療や介護を受けられなくなったりするよりは、マシではないでしょうか」

※続く

TEXT=村上早苗

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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