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2023.08.15

【岸博幸】白髪染めせずに短髪にした本当の理由。そして、治療内容とは

慶応義塾大学大学院教授の傍ら、コメンテーターや企業顧問など多方面で活躍する岸博幸氏が、多発性骨髄腫であることを公表。男性の罹患率は10万人あたり5.8人という難病の具体的な治療について話を聞いた。連載第2回。→【#1

大量の抗がん剤投与の後、造血幹細胞移植を実施 

多発性骨髄腫が発覚してから約40日が過ぎた2023年2月28日。岸博幸氏は本格的な治療を受けるため、慶應義塾大学病院に入院した。その時行ったのは、血液内に大量に溜まった骨髄腫細胞を取り除くという、本格的治療の前段階となる導入療法。

強い薬の影響で内臓にダメージが起きる可能性があったため入院を余儀なくされたが、幸い体への支障はほとんどなく、約3週間で退院。その後は通院で治療を継続しながら、仕事に復帰した。そこで岸氏はある計画を実行に移す。それは、7月下旬に予定されている抗がん剤を用いた治療に向け、黒く染めていた髪を“素に戻す”ことだ。

「抗がん剤治療をすれば、髪が抜けます。黒い髪からいきなり坊主頭では落差が大き過ぎるから、美容師さんと相談し、少しずつ変えていこうとなりまして。まずは髪を染めるのをやめてグラデーションヘアにし、次は短髪にし、それから丸坊主になるという計画です。ウィッグ? 使いません。この長い顔がハゲになったらどうなるのか、社会実験しようと思っているので(笑)」

もっとも4月の時点では病気を公表していないため、髪を染めるのをやめた理由を「年相応にナチュラルに」としていた。

「これが意外と好評だったんですよ。お世辞かもしれないけれど、ダンディーだと褒めてくれる人もいたりしてね」

抗がん剤後を想定し、ヘアスタイルをチェンジ

そんな風に少しずつ準備をし、2023年7月20日、再び慶應義塾大学病院に入院。7月24日、Twitter(現X)で病気を発表し、8月末までの休養を宣言した。今回行うのは、多発性骨髄腫治療のカギとなる造血幹細胞移植。血液をつくる造血幹細胞を採取して凍結保存した後、大量の抗がん剤を使い、がん化した形質細胞を攻撃。極限まで減らしてから、凍結しておいた造血幹細胞を解凍して体内に戻し、造血機能を回復させるという治療法だ。

一度目のオンライン取材を行ったのは7月25日午後だったが、造血幹細胞を摂取したのはその日の午前中のこと。取材スタッフの目にはいつもと変わらぬ様子に見えたが、治療が相当ハードだったのだろう、翌日岸氏から「頭がボーッとしていて考えていることの半分も伝えられなかった気がする。申し訳ないが、もう一度取材の時間をとってもらえないか」というメールが届いた。そして、7月27日、二度目のオンライン取材を実施。その時、画面に映った岸氏のヘアスタイルは、今までに見たことがないくらいの超短髪に!

「免疫力が落ちるから、無菌室フロアの病室に入っていますが、抗がん剤治療が始まるまでは院内を歩き回ることができるんです。だから今日の午前中、院内にある理髪店で3㎜の長さにしてもらいました。こんなに短い髪は人生で初めてだと思います。髪が短いと自分の顔ってこんな風になるんだ、おもしろいなって、新しい発見がありましたね」

深刻な病によって外見が変わってしまう。そのことを気に病む人が大半だと思うが、岸氏の表情に憂いはない。

「病気になったことで落ち込み、元気がなくなる人が多いのは、ある意味で仕方がないこと。外見にしても、自分が今までつくってきたイメージが壊れてしまうわけだから、ショックを受けるのも理解できます。とくに日本人はまじめだから、深刻になってしまうんでしょうね。

ただ僕は、病気になって嬉しいわけじゃないけれど、必要以上に暗くなる必要もないと思っているんですよ。見た目が変わることだって、自分が気にするほど、周りの人は気にしていないでしょうしね。実際、白髪にしても、短髪にしても、周りからすんなり受け入れてもらいましたし。抗がん剤で髪がなくなったり、眉毛が抜けたりしたら、また別の反応をされるかもしれないけれど、それはそれで楽しみですね」

前向きに闘病を続ける岸氏だが、家族をはじめ周囲はどう受け取っているのか。

次回(8月16日10時公開予定)は、家族に病名を告げた時のエピソードなど、周囲との関わり方についての話に。

TEXT=村上早苗

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