PERSON

2025.08.25

M-1芸人に学ぶ4つの初対面攻略法――相手に合わせて信頼関係を築くコツ

放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出した・桝本壮志のコラム。

吉本NSC講師・桝本壮志。

「初対面が苦手です。とくに最近の若い人は、あまり愛想がないので良好な関係が築けません。さまざまな生徒たちと会ってきた桝本さん流のコツがあれば教えてください」という相談をいただきました。

初対面は、誰もがそれなりに緊張するもの。のちのち本人から「第一印象は最悪だった」「絶対に仲良くならないと思っていた」などの後説を聞いたりもするので、ますますファーストコンタクトには慎重になってしまいますよね。

今回は、毎年1000人以上の生徒、約200人のエンタメ人との出会いを繰り返している僕の知見をもとに「初対面の人と良好な関係を築く思考のツボ」を押していきたいと思います。

M-1芸人で分かる「4つの初対面パターン」    

相談者さんのように、若手への苦手意識をもつ人は多いのですが、そういったリーダーは「若手はこうあるべきだ」という思考の落とし穴にハマっている可能性があります。

若手は初対面で「元気にあいさつするべき」「目を合わせて話すべき」「快活に振舞うべき」といった考えの人は、早めに手放していきましょう。

現代の若者の初対面の言動はバラバラであり、それなりの意図やコスパを考えての振る舞いだったりもします。

僕は、そのパターンを4つに分けており、対面ごとに「あ、この子は〇〇パターンだな」と楽しんでいます。

その4つを、日ごろ初見のお客さんの前に立っている漫才師、近年のM-1決勝進出者のネタの導入(会話の入りかた)を例にして共有していきましょう。

①【マイルド導入】
毎回、登場すると元気よくあいさつをするバッテリィズ、お客さんに近づき「いまベルマークをいただきました!」などと言って距離感を縮めるミルクボーイらは、自発的に良い関係を築こうとしているマイルド型。もっとも上司が助かるタイプと言えます。

②【サイレント導入】
オズワルドのように物静かにあいさつをするタイプ。一見、やる気がないように見えますが「漫才(若手)とはこうであるべき」に捉われていない自立型。徐々にペースや士気を上げていく頼もしい人材です。

③【アタック導入】
開口一番 「こんにちは~!」とギャグを見せる錦鯉、ツッコミの容姿を「どんぐり」や「カウントダウンTVのキャラクター」などに例えるツカミから入る真空ジェシカらは、いきなり勝負してくるタイプ。内容次第では眉をひそめるリーダーもいるでしょうが、彼らは逃げずに関係を築こうとしている挑戦者。僕が大好きな人材です。

④【ストレンジ導入】
登場時に舞台袖のスタッフと話すような仕草をしたり、相方をマイクまでエスコートしたりする令和ロマン、土下座をして登場したりするマヂカルラブリーのような、トリッキーな振る舞いを見せるタイプ。とっつきにくい、生意気だと捉える上司もいると思いますが、職場や会社に新風を吹き込むクリエイションの持ち主でもあるので、けして疎外せずに彼らの言葉に耳を傾けていくことが大切です。

このように同じ「漫才」でも入口のデザインがまったく違うように、現代の若者は、各々が「より自分らしくいることのできる振る舞い」を重視し、採用しています。

例えば、本来は明るくて多弁だけど、早いうちに目立つのはコスパが悪いので、しばらくは暗い自分を演出するといった具合。漫才でいうと、毒舌を吐くウエストランドが、あえて最初はマイルド型で入り、観客や審査員に丁寧にあいさつをしたうえで「いい人→ヒール」で笑いをとるといったプランに似ています。

令和のリーダーのコツは「まず〇〇をする」    

では、そういった若者たちを前に、私たちリーダーはどのように対応していけばいいのでしょう?

僕はいつも「してほしい振る舞いを、まず自分が見せる」というマインドで向き合っています。

「部下はこうであるべき」という型にはめず、元気にあいさつをしてほしいのなら「まず自分からする」、目を合わせて話してほしいのなら「自分から合わせる」、快活に話してほしいなら「自分が快活に話しかける」といったように、部下からの正解を待つ上司ではなく、こちらから正解を差し出していく上司であることが令和のリーダー術だと考えています。

ではまた来週、別のテーマでお逢いしましょう。

桝本 壮志/Soushi Masumoto
1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出。

COMPOSITION=古澤誠一郎

TEXT=桝本壮志

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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