英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者のお話、第315回。

夏が去っていく様子を表した詩的な英語表現
We spent the last breath of summer at the beach.
先日イギリス人と、オンラインで夏休みのできごとについて話していたら、そう言われました。
直訳すると「私たちは夏の最後の一息をビーチで過ごしました」となります。
なんだか、意味がわかるようでわかりません。
そのイギリス人は日本語ペラペラで、それまで日本語で話していたにも関わらず、私が「日本は相変わらずの猛暑日だが、イギリスはそろそろ涼しくなるのではないか」と言ったら、突然にそう英語で言ってきたのです。
「ビーチに行ったのはわかったけど、the last breath of summerってなに?」と聞いてみたら、こう教えてくれました
the last breath of summer=夏の終わりのひととき
直訳すれば「夏の最後の吐息」となり、吐息がスーッと消えていくように夏が去っていく様子を表したかなり詩的な表現なんだとか。ニュースや日常会話にはあまり使われませんが、エッセイなどの書き物には時々出てくるということ。
「夏が終わるのが寂しくて、叙情的な言い方をしたかったんだ。日本語ではあまり素敵に言えないから、英語をつかったの」とそのイギリス人は流暢な日本語で言っていました。
フジファブリック『若者のすべて』が心に刺さった20代
「叙情的」って日本語で言える時点で恐ろしい語学力で、そう褒めたら嬉しそうにまた英語でこうでいいました。
We're planning to enjoy every last drop of summer.
直訳すれば「僕らは夏の最後の一滴まで楽しむための計画をしています」となります。
「夏を最後まで楽しみつくす」ということみたいですが、every last drop of summerという言い方に「最後の一滴まで余す所なく楽しむよ」という貪欲さが出ています。
「the last breath of summerは夏の終わりの儚げな表現だけれど、こっちのevery last drop of summerの方はもっとポジティブな感じでしょ?」と彼はその表現力に自信を持っているようでした。
私だって20代の頃は、8月最終週、夏休み最後の花火を見ると「夏も終わりか」と切ない気分になっていました。「真夏のピークが去った」から始まり「最後の花火に今年もなったね」と歌い上げるフジファブリックの『若者のすべて』という曲が当時の私にはめちゃくちゃ刺さっていた次第です。
しかし最近東京では9月も猛暑日が多く、10月末くらいまではダラダラ暑いので、あまり夏を惜しむ切ない気分にもなれません。というかフリーランスになってから「8月に休みをとってもどこも混んでるし高いし」と逆に仕事を入れてしまうので、夏の終わりが切なくないのかもしれません。
夏を惜しんでビーチで過ごしたそのイギリス人のように、私も平日の仕事終わりにビアガーデンにでも行ってみようかなと計画中です。ただまぁ、結局飲み食いするだけで「夏の最後の吐息」を感じるような叙情的な表現よりは、この言い方がいいのかもしれません。
I am planning to enjoy every last drop of summer with a feast at an outdoor pub.
(ビアガーデンのご馳走で夏の終わりを楽しみつくすつもりです)
ちなみに「ビアガーデン」という言い方はイギリスではないので「屋外のパブ」という言い方でないと通じません。なんにせよ、夜風に吹かれてビールと夏野菜、楽しみです。