放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、「エバース」「ヨネダ2000」をはじめ、多くの教え子を2025年M-1決勝に輩出した桝本壮志のコラム。

「28歳の企画職です。自分には、強みや得意分野があるのですが、思うように評価に結びついていません。芸人さんは、どのように自分の強みを伸ばしているのでしょうか?」という相談をいただきました。
誰にでも、企画を打ち出すときの得意分野はあるもの。女性のトレンドに強い、デジタルに明るい、子育て分野に詳しい、グルメ知識が豊富など、人それぞれに強みが内包されています。
これは、芸人さんの世界も同じ。企画づくり=ネタづくりであり、同じ漫才でも「しゃべくり」「コント系」「Wボケ」「時事ネタ」「ズレ漫才」などなど、各々に強みがあります。
僕はこれまで、約1万人の若手を育成しながら、この「強み」がグンと伸びていく瞬間にたくさん立ち合いました。
その下支えになったのは、常日頃、彼らに伝えてきた、「強みを伸ばしたいなら『よそ見』をしてみよう」という言葉だったように思えます。
一体どういうことなのか? 今回は「自分の強みや得意分野を伸ばす思考のツボ」をシェアしていきましょう。
「強み」は「よそ見」によって、くっきりします
私たちには、一人一人に強みがありますが、その強みに「寄りかかり過ぎてしまう」性質もあります。
例えば、食べ歩きが趣味で「自分の強みはグルメ企画だ」と思うことは真っ当なのですが、いつもグルメ企画ばかりを見せられる採択者は食傷し、見飽きたり物足りないと感じたりするのです。
また、得意分野の企画が評価されない日々が続くと、ダメージも大きく、自己肯定感も下がっていくといった落とし穴も口を開けています。
なので、僕はアウトプットが一辺倒になっている若手たちに、こんなふうに語りかけています。
「そのジャンルの専門家になろうとしていない? ネタづくり(企画作成)はもっと自由なものだから、スペシャリストよりも、ゼネラリスト(なんでも屋)になる感覚で、他のジャンルや手法にも、よそ見をしてみようよ」と。
例えば、キングオブコントで名を馳せたレインボーは、男女の機微を描く恋愛コントが代名詞です。
が、結成前夜のNSC時代には、「ドラマ仕立ての瑞々しいフレーズ」や「女性キャラ」といった強みを見せつつも、別の日の授業では、男臭い下ネタコントや、ゴリゴリのしゃべくり漫才も試していた「よそ見の時代」を僕は知っています。
その同期で、やはり本格派漫才をやっていたダイキリというコンビは、ネタ中の「ボケの顔が面白い」と言われていました。
彼は、その「強み」を胸に留めたまま、あらゆるネタにトライし、顔芸を武器にした「ひょっこりはん」としてブレイクを果たしました。
彼らに共通していたのは、自分の「強み」を認識しながら、あえてよそ見をして異ジャンルにふれることで、より自分の強みを縁どり、くっきりさせていった過程があったことだったんですね。
M-1王者との同棲で知った「よそ見力」のすごさ
「強みを伸ばすには、よそ見をしよう」。この言葉の源泉は、M-1王者・チュートリアル徳井義実くんとの7年間の共同生活がキッカケでした。
彼と暮らしていると、家電好き、ネコ好き、バイク好き、広島カープ好き、キャンプ好き……と、放射状に興味のアンテナが広がっていくのです。
最初は、日本一の漫才師にもなったし、趣味に生きはじめたのかな? くらいに思っていました。
しかし、その「好き」は、どんどん「仕事」になっていき、前述の「〇〇好き」は、すべて「アメトーーク!」(テレビ朝日)のテーマになったのです。
さらに、彼は作家をつけず、ひとりで漫才を書き上げるのですが、日常の趣味で得た知見が、そっくり本業に生かされていったのです。
やがて気づきました。彼は、M-1王者になったから色んなことに興味を持ち始めたのではなく、色んなことに興味を持つ人だったから日本一になれたのだと。
僕はこっそり「徳井よそ見」と呼んで、その一流の「よそ見力」に平伏しながら、夕食を口にしていました。
皆さんも、自分の強みを愛でつつ、多方面にも視点を向けて、強みを伸ばしてみてくださいね。
では、また来週、別のテーマでお逢いしましょう。

1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出。
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