PERSON

2025.09.01

燃え尽き症候群にならないためには? 成果を出し続ける人の「遠近両用思考」

放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出した・桝本壮志のコラム。

NSC人気講師の桝本壮志

「力を入れて5年間やってきたプロジェクトが完結し、燃え尽き症候群のようになってしまいました。うまくモチベーションを上げる方法があれば教えてください」という相談をいただきました。

突然の人事異動、チームの解体、取引中止など、誰にでも仕事が急に暗転してモチベーションを保てなくなることがありますよね。

僕も、最も力を入れていた番組が終焉したり、突然のクビ宣告をされたりと労働意欲や士気がダダ下がりになった経験があります。

今回は、そんな日々の中で獲得してきたモチベをうまく維持していくワークハック「人生を豊かにする『遠近両用レンズ』思考」をシェアしていきたいと思います。

頭のなかには「顕微鏡」と「望遠鏡」を置いておく

つい昨日のNSCの授業で、動きやギャグを多用する漫才コンビから「売れるためには、やはり正統派のしゃべくり漫才を目指すべきでしょうか?」という相談を受けました。

僕は「今後のエンタメ界は、内野席と外野席で観る人に分かれていくから、どちらか一つに絞らなくていいよ」と答えました。

内野席とは「劇場」のことで外野席とは「SNS」のこと。これまで通りお笑いファンは劇場に来てくださいますが、今後はTikTokサイズに切り取られたショート動画が、より多くのライトなファンの目にふれていく時代になります。

チョコレートプラネットが、本ネタではない「TT兄弟」で爆発的な人気を得たように、SNSでは正統派漫才よりも「動き」や「ギャグフレーズ」が切り取られやすくバズりやすいので、1つのスタイルに特化しないほうが多くの人にリーチしやすい時代になっていくからです。

この、近くの観客にしっかり向き合いつつ、遠くにいる観客を意識していく考えかた。いわば「遠近両用の思考法」はビジネスシーンでも有用です。

目の前の仕事を全力でやり遂げることは大切ですが、完結したときに燃え尽きたような虚無感が訪れます。

いっぽう、眼前の仕事に手を抜かず、並行して半年後や1年後に「やってみたい仕事」を想像して、準備をはじめたり、リサーチしてみたりすると、一つの仕事が終わったあともモチベーションは持続するしスムーズに次のタスクに移れます。

僕はそれを「頭のなかに顕微鏡と望遠鏡を置いておく」と言っています。

目の前の放送作家としてこなす台本や企画作成には「顕微鏡」を用いて、細部に目を凝らしながら丁寧に進める。

並行して「望遠鏡」を用いて、本を出したいな、海外向けコンテンツを作りたいなと近未来を想像していく。

そういった2つのレンズの使い分けがあるので、このコラム執筆をしていたり、英会話を習ったりしているのです。

みなさんはすでに顕微鏡を持っていらっしゃるので、望遠鏡も覗いてみてください。

人生にも応用できる「遠近両用の思考法」    

僕がお伝えしている「近」と「遠」で考えていく手法は、ライフハックとしても有用であり、実はすでに私たちは経験者です。

例えば、誰もが通ってきた思春期の「若者言葉」と「敬語」で考えてみましょう。

学生時代は「若者言葉」を使えると同世代と早く打ち解けることができますが、「敬語を使え」と言われても意味が分からないし覚えたくもありません。

しかし、敬語を習得しておくと社会に出たときに役立ちますし、リーダーポジションになったときにプレゼンや人材育成などのシーンで知的な武器として使える。つまり、若者言葉は「近々のアイテム」で、敬語は「遠くのアイテム」になるわけです。

そのときは大した得には見えないけど、未来の自分を助ける大きな武器にもなるので、いま目の前にあるもの、流れている情報を「これは近いうちに役立つものだ」「これはいつか武器になるものだ」と遠近思考で捉えていく力を育てていく。これが人生を豊かにしていくコツなんですね。

ちなみに僕は、いま毎日仕事に汗を流していますが、暇があれば古書店に通って「読む予定のない本」を買っています。

はたから見れば無意味で非効率なことに思われるでしょうが、遠い未来、思うように身体が動かなくなったとき、未来の自分が楽しく過ごせるように「本屋さんをプレゼントしよう」と考えて動いているのです。

これも遠近両用レンズ思考の一つなんですね。

ではまた来週、別のテーマでお逢いしましょう。

桝本 壮志/Soushi Masumoto
1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出。

COMPOSITION=古澤誠一郎

TEXT=桝本壮志

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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