PERSON

2025.08.04

迷ってばかりの自分にサヨナラ。決断スピードを上げる“芸人流”メソッドとは

放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出した・桝本壮志のコラム。

「どちらの案がいいのか? 仕事でも私生活でも、なかなか決めることができず、あとになってクヨクヨしてしまいます。決断のスピードを上げるにはどうすればいいんでしょうか?」という相談をいただきました。

  • 仕事を引き受けるか? 断るか?
  • 今日やるか? 明日にするか?
  • こちらから謝るか? 突っぱねるか?

なかなか決断できないことは山ほどありますよね。

先に答えを申し上げると、決断のスピードは“性格ではなく「スキル」”です。

重要事項を即決している「仕事がデキる人」も、案外プライベートでは優柔不断で、妻やパートナーに「早く決めてよ」と言われていたりするからです。

では、どうすればスキルは身につくのか? 一緒に「決断のスピードを上げる思考のツボ」を押さえていきましょう。

人は「選ばなかった道を理想化」する生き物   

芸人さんは、直情的で無軌道なイメージがありますが、本を書いたり、歌を出したり、ビジネスを始めたり、何でも即決してしまうスピードスターでもあります。

なぜ、彼らの決断は早いのでしょうか?

そもそも私たちは“決断よりも比較が得意”なので、なかなか決断のスピードは上がりません。

旅行先のホテル、家電の購入、同僚の恋人など、比べるのが大好きで延々と続けてしまいます。

そして“選ばなかったほうの道を理想化してしまう”ことも研究で分かっています。

あの飲み会に行っておけばよかった、アイツと別れないほうがよかった、進学より起業したほうが得したかも……など、ピックしなかった選択肢Bを“キラキラ磨きあげて心のショーケースに飾ってしまう。これが次の決断の「足かせ」になっていく”んですね。

いっぽう、よく芸人さんが使うワードに「おいしい」という言葉があります。

これは、寄ってたかってイジられたり、落とし穴に堕ちたり、「通常なら悲惨な状況」だけど、そこに配置されると笑いが生まれやすくなる「うまみ」もあるということ。

そう彼らは、過去の決断や理想化した道がどうであれ“流れに身を任せてのってみる”という態度があり、その選択によって生まれた状況が困難であっても“それなりの「うまみ」がある”ということを知っている。だからスピード感があるんですね。

心のショーケースにある選択肢Bは「理想だったかもしれない」けど、現在地だってキラキラした部分はあるし、うまみもあるし、自分で面白くすることもできる。

いまの自分があるのは、過去の選択がベストだったからで、これからもベストな決断になっていく。

ときに私たちは、そういった芸人イズムを持つことも有用だと僕は考えています。

仕事は「決断」より「切断」の意識   

仕事は決断の連続なのでスピードが鈍ることは当然あります。

そんなとき僕は“「決断」より「切断」をイメージ”して仕事をする。つまり、不必要なものをサクサク切っていくんです。

スマホの複数のアプリを開いていると、動作が遅くなることってありますよね?

あれと同じで「今はさほど重要ではないこと」を起動したままだと決断のスピードは遅くなるんです。

例えば、決断したあとの苦労、押し寄せてくる仕事量、周りの批評などのリスクなどがそれ。

もちろん、SNSの閲覧、週末の予定、読みかけの本などは真っ先に切断します。

けっして断絶ではないので、決断を終えると再接続できますし、切断と再接続のメリハリがあるほうが、倍がけで楽しめる。このコツを覚えてくると決断のスピードはさらに増していくんです。

そして、物事を決めるとき、僕が必ず切断するのが「人間関係のよもやま」です。

私たちは、「上司に言われた通りにやったのに失敗した」「あの人のためにやったのに無駄骨だった」など“自分の行動に「誰か」を混入させがち”です。

しかし、上司のアドバイスをやろうとしたのは自分、あの人のために動こうとしたのも自分。

いつ何どきも、決断権は自分自身にしかないので、「人間関係」を決断に入れないように気をつけています。

ではまた来週、別のテーマでお逢いしましょう。

桝本 壮志/Soushi Masumoto
1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出。

COMPOSITION=古澤誠一郎

TEXT=桝本壮志

PHOTOGRAPH=杉田裕一

PICK UP

STORY 連載

MAGAZINE 最新号

2025年9月号

陶酔レストラン ゲーテイスト2025

ゲーテ2025年9月号

最新号を見る

定期購読はこちら

バックナンバー一覧

MAGAZINE 最新号

2025年9月号

陶酔レストラン ゲーテイスト2025

仕事に遊びに一切妥協できない男たちが、人生を謳歌するためのライフスタイル誌『ゲーテ9月号』が2025年7月25日に発売となる。食に人生を懸ける 秋元康小山薫堂中田英寿見城徹の“美食四兄弟”が選ぶ、圧倒的にスペシャルなレストランを一挙紹介。

最新号を購入する

電子版も発売中!

バックナンバー一覧

GOETHE LOUNGE ゲーテラウンジ

忙しい日々の中で、心を満たす特別な体験を。GOETHE LOUNGEは、上質な時間を求めるあなたのための登録無料の会員制サービス。限定イベント、優待特典、そして選りすぐりの情報を通じて、GOETHEだからこそできる特別なひとときをお届けします。

詳しくみる