日本代表の菅原由勢選手が子どもたちに英語でサッカーを指導するイベントに登場。初めてのワールドカップ、そして、英語力アップがもたらした変化について話を聞いた。【前編】

言葉が通じなければボールが回ってこない
2026年7月下旬、東京都内のとあるフットサル場で英語コーチング「TORAIZ(トライズ)」が主催する英語でのサッカー体験会が開催された。参加した小学生約30名を指導するのは、ワールドカップで全4試合に出場した菅原由勢選手だ。
パスやシュート練習、菅原選手を相手にしての1対1などをこなした後は、ゲームを実施。練習でもゲームでも、菅原選手は「Enjoy together!」「Nice Challenge!」など、子どもたちに英語で積極的に声をかけていた。流暢な発音から、日頃難なく英語を使いこなしていることがうかがえる。

もっとも、19歳でJ1名古屋グランパスからオランダ1部のAZアルクマールに移籍した頃は、「全然しゃべれなかった」と苦笑する。初めて年代別日本代表に選ばれた15歳の時に海外遠征を数多く経験。ヨーロッパのU15チームのレベルの高さに驚愕し、早い時期から海外に挑戦することを決め、英会話教室に通っていたにもかかわらず、だ。
「当時は、英語を勉強するよりサッカーをやっている方が楽しくて、あまり身が入っていなかったんですよ。『言葉が通じなくてもボールひとつあればなんとかなる』なんて思っていましたしね。
でも、向こうに行ったら全然違いました。まず、チームメイトからボールが回ってこない。ふだんまったく会話しない相手に、誰もパスなんて出したくないですよね。僕が、ピッチ上でどんなプレーをしたいかを伝えられなかったのも原因だったと思います」
話せるようになったことで“チームメイト”が“友達”に
これまでサッカーで成長できていたのは、日本語という共通の言語があったからだ。それを痛感した菅原選手は、一念発起してTORAIZに入会。専属コンサルタントと立てた学習計画をもとに1年間、毎日3時間ほど英語の勉強を続けた。結果、グローバルビジネスに必要な英語を話す力=VERSANTのスコアは、初心者レベルの30から海外赴任可能なレベルの49まで劇的にアップ。試合後のインタビューを英語でこなせるまでに成長した。
「毎日3時間必ずできたかというとそうではないし、コンサルタントから出された宿題が終わらなくてヒーヒー言っていたこともありました。でも、10分でも暇があれば単語を覚えようとするなど、我ながら頑張ったと思います。
英語が話せるようになってサッカーにプラスの影響がたくさんありましたが、一番嬉しかったのは、チームメイトがただのチームメイトではなく、友達になったりしたところですね。一緒にご飯を食べたりカフェに行ったり、ロッカールームでもふざけ合うことができたりして、日常生活がすごく楽しくなりました」
語学力が身に着いたことで、プレーはもちろん生活の充実も手に入れた菅原選手。語学力は世界の扉を開く武器になると力説する。
「サッカーに限らず、今後ますますグローバル化は進んでいくでしょう。そうなれば、英語が話せるかどうかで、キャリアも世界観も変わってくると思います。話せなければ翻訳アプリを使えばいいという意見もあるかもしれませんが、ツールに頼るより、下手でも頑張って自分で話す方が、相手は好感を持ってくれ、一生懸命聞き取ろうとしてくれる。これは、僕自身の実感です。
英語を学ぶ方法も、AIを利用するよりも生身の人間相手の方が僕は好きですね。その方が実践的なコミュニケーションができますし、その人ならではの言葉使いや表現方法といった人間味のある会話ができると思うので」
TORAIZでの学習は修了したが、海外の映画は英語音声で鑑賞するなどブラッシュアップに余念がない。「サッカーも英語も積み重ねが大事ですから」と、常に先を見据え、挑戦し続ける菅原選手に、後編はサッカー少年少女たちからの質問に答えてもらう。
※後編に続く

2000年愛知県生まれ。2018年名古屋グランパスでJ1デビューを果たし、2019年、オランダ1部リーグのAZアルクマールに移籍。2024年には当時プレミアリーグ所属のサウサンプトンに完全移籍をし、2025シーズンはブンデスリーガのブレーメンでプレー。A代表デビューは、2020年のカメルーン代表戦。2026年ワールドカップ北中米大会では全4戦に出場。

