PERSON

2026.06.01

日本代表・森保一監督は「いい人」だけではない。二度の大きなピンチで見せた判断力②

人柄のよさで知られる森保一監督は、人格のみで選手からの信頼を勝ち取っているのではない。追い詰められたときの的確な判断こそ指揮官の本当の持ち味だ。8年間監督を追い続けてきたフットボールジャーナリストが迫る「森保一の人物像」。(2回目/4回【特集 2026FIFAワールドカップ】

日本代表・森保一監督は「いい人」だけではない。二度の大きなピンチで見せた判断力②

「いい人」だけでは終わらない冷静な采配

森保一監督は「いい人」だが、それだけで日本代表を率いることはできない。毎回3分の1のメンバーが入れ代わるチームに対し、わずか数日の練習で基本戦術と、対戦相手への対策を覚えさせなければいけないのが代表監督だ。

さらに、ときとして腹をくくって大きなチャレンジに打って出る必要もある。しかもその決断を迫られるのは、かつてないほどのピンチに陥ったときだ。森保監督のこれまでの任期にも大きなピンチが2回あった。

1回目は2021年10月12日。2022年カタールワールドカップ・アジア最終予選の序盤3戦で2敗し、後が無い状態でグループ最大のライバルと目されるオーストラリアをホームに迎えた。

試合前の会見で森保監督は強気の姿勢を崩さなかった。

「ワールドカップ最終予選が厳しい試合の連続であるということは、最終予選に臨む前から覚悟していたことです。まだまだ我々次第で巻き返せるチャンスはあると思っています」

「(ここまで)結果が出せなかったところもありますが、(日本代表の)みんなに力はあるという考えは、私自身は全く変わりはないですし、選手たちへの信頼も全く変わっていません」

これほどの言葉を発するのだから、当然これまでの実績のある選手だけを並べ、システムも【4-2-3-1】で臨むのだろう。

だが、最終予選でずっと先発を務めていた柴崎岳の姿がなかった。代わりに起用されたのは守田英正と田中碧であり、システムは【4-3-3】。そして、この最終予選で初先発となった田中が、開始8分に先制点を叩き出す。

同点に追いつかれたものの、78分に途中投入した浅野拓磨がその8分後、強烈なシュートを放つ。一度はGKに防がれたもののポストに跳ね返って相手選手に当たってゴールイン。これが決勝点になった。

ドラマはそれだけで終わらない。森保監督は85分に守田に代わって柴崎を投入した。

「終盤の(このまま)勝たなければいけない状況の中で、岳(柴崎)が持っている攻守をつなぐ能力、そして守備から攻撃にいい関わりをしてくれるだろうと送り出しました」

柴崎の能力を信じるとともに、前節のミスで批判を浴びていた彼の心境にも配慮した交代策だった。

かつてないほどズタズタにされた状態から逆転

2回目は2022年カタールワールドカップの初戦、ドイツ戦のピッチで訪れた。

ドイツ代表は日本の分析班の読みどおりの先発メンバー。ところが相手選手の想像以上の質の高さに日本は翻弄されっぱなしで、ついには耐えきれずにPKを与え、先制を許してしまう。

そのハーフタイムに森保監督は思いきった手を打った。前半の4バックを捨てて3バックに切り替えたのだ。マークする相手がハッキリする3バックでは、より選手個人の能力同士がぶつかり合う。前半、相手との力量の差に苦しんだ日本が無謀にも思える賭けに出た。

「後半マンツーマンにしたのは、日本の個の力が(世界のトップに対して)どれくらいのレベルにあるのかというのを、ここでちゃんと見極めておかないといけないという意図がありました」

「勝つことを目的にやっていますが、同時に、いつも自分たちの力を測るという目的も持っているので、逃げずにそこはやっていこうと思いました」

「仮に負けたとしても、『デュエルの勝率がどれくらいか』『日本がどこまでできて、何ができないのか』を明確にした上で、次にレベルアップすることができます。そう思って常にやっているつもりです」

もちろん、単に自分たちのレベルを知りたいということだけではなく、選手たちがこれで勝てると信じたからこそ採択できた戦術だった。負けている状態の大一番で、そんな腹をくくれるのが森保監督の本質なのだ。

だがそんな森保監督にも弱点はある。そしてそこが火の粉となって監督に降り注いだ。

3回目に続く

TEXT=森雅史

PHOTOGRAPH=アフロ

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