PERSON

2026.06.22

ベスト32でブラジルとの対戦を避けることを考えているのか。森保監督の回答は

2018年の就任以来、森保一監督を8年間追い続けてきたフットボールジャーナリストが迫る。チュニジア戦を終えて。【特集 2026FIFAワールドカップ】

「ベスト32でブラジルとの対戦を避けることを考えているか」に対しての森保監督の回答は

日本代表はみんなで日本の「歴史」を壊している

森保一監督は、日本の歴史を受け継いで戦っているという話をするが、それはウソだ。

日本代表がワールドカップの第2戦で勝ったことがあったのは2002年日韓ワールドカップのロシア戦のみだった。それ以外は3分3敗と苦労していた。3点以上奪ったこともなかった。1試合で1人の選手が2ゴール以上奪ったこともなかった。そんなこれまでの歴史を森保監督は塗り替えた。

チュニジア戦は戦いぶりも日本らしくなかった。初戦で大敗し、監督を交代させてテコ入れを図ったものの、なお不安を抱えていたはずのチュニジアが調子に乗る前に先制点で出鼻を挫いた。これはかつて日本が散々やられてきたパターンではないだろうか。そんな勝負の駆け引きの巧さを日本代表が見せた。

また、過去の日本はどうしてもワールドカップ初戦にピーキングを合わせざるを得ない状況が続いた。FIFAランクで考えたとき、日本よりもランクが下の相手と戦ったのは2006年ドイツ大会。しかもその相手のオーストラリアには1-3と敗れている。

だが今大会の初戦、森保監督が選んだ守備陣は、右から渡辺剛、谷口彰悟、伊藤洋輝の3人。これまでのむしろバックアップだったメンバーを、いきなりオランダにぶつけた。過去レギュラーとして活躍した冨安健洋、板倉滉のコンディションが上がっていないのを見ての構成だった。

少し前までだったら、無理をしてでもレギュラー組を起用しただろう。それは日本代表の層がまだまだ薄かったからだ。今は確かに層が厚くなっているものの、それでもこの組で最強の相手に対して経験の浅い選手を起用して挑んだのは、森保監督の度胸を物語っていると言えるだろう。

そしてこのグループリーグの中で一番弱っているチュニジア戦に、冨安、板倉を先発させた。冨安は守備に関して日本代表でもトップと言える能力を発揮したが、パス精度においては本来の力を見せていなかった。

ということは、ワールドカップで使いながらコンディションを上げさせようという、勝利だけとはまた違った狙いもあったはずだ。練習試合で調整させるのではない。勝負のかかった本番で、そんなトライをしていたのが目に見えた。

これはまるでワールドカップを狙う強豪国の戦いぶりではないか。大会の最初に焦点を合わせるのではなく、大会を通じて整えていって決勝を目ざす方法だ。日本代表も「優勝を狙う」と言っていたのでそんな戦い方を取り入れていてもおかしくないのだが、その真剣度が伝わってくる。

ついでに言えば、大会前に調子がよく、派手なプロモーションが打たれていたときほど、結果は苦しいものだった。逆に、ワールドカップ前に苦戦が続いていると期待できるという矛盾しているような状況が続いたのだ。

2023年以降の日本代表の好調ぶりは、過去の日本代表を知っていれば知っているほど不安になってもおかしくなかった。ところが今は、その好調ぶりの延長戦にワールドカップがある。

そう考えると、チュニジア戦後の記者会見での森保監督の発言には、別の側面があるのが見えてくる。このグループリーグで首位になり、ベスト32でブラジルとの対戦を避けるためには次の試合でも大量得点が必要ではないか、という意図の質問に対して森保監督はこう答えた。

「我々が自然に勝てる、得点も好きなだけ取れるという考えにならないようしっかり締めて、よりいい守備からいい攻撃にという勝ち方にこだわりたい、勝つことにこだわっていきたい」

快勝でチームの雰囲気が緩むのを警戒しつつも、これまで森保監督が語っていた「優勝するためにはどこと対戦しても勝たなければいけない」という意味を含んでいるはずだ。謙虚に見えながら、その実固い決意が込められている。

日本代表チームの顔ぶれは豪華だ。選手だけではなく、コーチ陣にも日本代表選手として活躍を見せた斉藤俊秀、名波浩、前田遼一、長谷部誠、中村俊輔が顔を揃える。この指導陣だけ見ても、日本の叡智を集結させてこの大会に臨んでいるのが分かるだろう。

そしてみんなで日本の「歴史」を壊している。好試合をするたびに「次はダメだろう」と心配させてきた姿は、もうすっかり置き去りしてきた過去になった。

TEXT=森雅史

PHOTOGRAPH=浦正弘

PICK UP

STORY 連載

MAGAZINE 最新号

2026年7月号

軽井沢と熱海の最新リゾート

最新号を見る

定期購読はこちら

バックナンバー一覧

MAGAZINE 最新号

2026年7月号

軽井沢と熱海の最新リゾート

仕事に遊びに一切妥協できない男たちが、人生を謳歌するためのライフスタイル誌『ゲーテ7月号』が2026年5月25日に発売となる。特集「軽井沢と熱海の最新リゾート」では、話題の「軽井沢 T-SITE」から熱海のシェア別荘まで、軽井沢と熱海の最新リゾート情報をお届けする。森保一、吉田修一、吉野北人、染谷将太…。

最新号を購入する

電子版も発売中!

バックナンバー一覧

GOETHE LOUNGE ゲーテラウンジ

忙しい日々の中で、心を満たす特別な体験を。GOETHE LOUNGEは、上質な時間を求めるあなたのための登録無料の会員制サービス。限定イベント、優待特典、そして選りすぐりの情報を通じて、GOETHEだからこそできる特別なひとときをお届けします。

詳しくみる