2018年の就任以来、森保一監督を8年間追い続けてきたフットボールジャーナリストが迫る。【特集 2026FIFAワールドカップ】

1点をリードされても動かなかった、森保采配の理由
森保一監督から笑みが消えている。すっかり勝負師の顔になった。試合前日の記者会見でもふつふつと沸き起こる闘志を滲ませた。
「オランダ戦に向けて我々のチームコンセプトもこれまで積み上げてきましたし、オランダ戦の対策もしっかりしてきました。理想は持ちながらも、ただ、理想通りにいかなかったときに自分たちから崩れないように、ということを選手たちが考えてくれています」
「粘り強さは、日本人が世界に誇れる良さだと思っています。粘るにしてもいろんなやり方があると思いますが、日本人は、定められた1つの目標に対して、勤勉にやり続ける力を持っています」
そしてワールドカップ初戦から強気の采配を見せる。1点をリードされても動かない。
「前半の終わりごろからカウンター攻撃やボールを握りながらの攻撃の形がよりできてきたと思っています。なので、後半も特に戦術的にいじることはなく、戦っていれば自然とチャンスは前半よりも作れて、得点の確率は上がっていくと思っていました」
その落ち着きに応えるように中村敬斗が同点にするものの、追加点を奪われる。そこでおもむろに3人の選手を投入し、勝負に出た。そしてFIFAランクで10ランク上、長身揃いの相手に対してヘディングで2点目を決める。
「やはりオランダは強かったという印象です。なかなか追いつくことは難しい相手だったと思います。けれど、選手たちがチーム一丸となってタフに粘り強く最後まで戦い抜くということを、気持ちを切らさずに2度追いついてくれました」
そう振り返りつつも、森保監督の闘志の火は収まっていない。
「自分たちがしっかりとパフォーマンスを維持すれば、勝ち点を取れる、勝利が近づいてくるという自信を持てる戦いになったと思っています。勝ち点1では全く満足できないですし、これから2試合、勝ち点3を掴み取れるように、また明日からチームで準備していきたいと思います」
「オランダ相手にこのワールドカップの舞台で勝ち点1を取れるチームがどれだけあるかというと、2回もリードされた状態で勝ち点1を取れるのはそう簡単じゃないと思いますので、選手たちを称えたいと思いますし、価値ある勝ち点1だったと思っています」
確かに2回のビハインドから追いついたのだから「負けなくてよかった」と言えるかもしれない。だが、先発に板倉滉、冨安健洋を使わなかった、同点ゴールを祝福に出てきた久保建英が足を引きずっていたなど、主力と言える選手が万全でないということをライバルたちは見逃さないはずだ。森保監督には、ますます厳しい戦いが待ち受けているのは間違いない。
会見終了後、「喋ってもいいですか」と森保監督は過去に自分が指導を受けたハンス・オフト監督、ビム・ヤンセン監督(故人)の名前を挙げつつ、日本サッカーへのオランダ人指導者の貢献について謝辞を述べた。
その話をしながらも森保監督の表情が硬いままだったのは、とても緊張を解くことができる状態ではないということを示していたのではないだろうか。

