飛距離が伸びない原因は、右手の力みにあるかもしれない。PGAツアーで注目を集める19歳、ブレイズ・ブラウンは、ヘッドを自然に走らせるためのシンプルなドリルを実践している。その練習法を解説する。吉田洋一郎コーチによる最新ゴルフレッスン番外編。

19歳でPGAツアーを席巻。ブレイズ・ブラウンとはどんな選手か
2026年シーズン、PGAツアーで注目を集めている若手のひとりが19歳のブレイズ・ブラウンだ。
1月のザ・アメリカンエキスプレスでは2日目に「60」をマーク。最終的には18位タイだったものの、世界ランキング1位のスコッティ・シェフラーと最終日最終組で優勝争いを演じたことで一躍話題となった。
その後もプエルトリコ・オープンで3位、ワンフライト・マートルビーチ・クラシックで9位タイに入るなど結果を残している。それにより、スポンサー推薦の回数制限を気にすることなくPGAツアーへ出場できるスペシャル・テンポラリー・メンバーの資格を獲得し、来季のPGAツアーカード獲得へ大きく前進している。
高校卒業前にプロ転向。“ツアーが学校”を選んだ異色の決断
ブラウンは2024年の12月、17歳で高校卒業を待たずにプロへ転向。わずか1年余りで世界最高峰の舞台で頭角を現した。
このキャリアの歩みは、アメリカのトップジュニアとしては異例といえる。アメリカでは有力ジュニアゴルファーの多くが大学ゴルフを経てPGAツアーを目指すため、高校卒業前にプロへ転向するケースは決して多くない。
近年では17歳でプロ入りし、その後PGAツアー3勝を挙げたアクシャイ・バティアが成功例として知られるが、その道のりは決して平坦ではない。限られた出場機会の中で結果を出し続けなければツアーに定着することは難しい。ブラウンはあえて厳しいプロの世界へ飛び込み、その決断が正しかったことを証明し始めている。
ブラウンは2007年5月21日、アメリカ・テネシー州ナッシュビル生まれ。母のロンダは女子プロバスケットボールリーグ(WNBA)創設期にニューヨーク・リバティで活躍した元プロ選手で、リーグ開幕戦ではWNBA史上初となる3ポイントシュートを成功させた名選手として知られる。
姉も大学でバスケットボールをプレーしており、幼い頃からスポーツに囲まれた環境で育った。また、少年時代にはテコンドーで黒帯を取得するなど、高い身体能力も兼ね備えている。
ジュニア時代の実績は圧倒的だ。高校時代にはテネシー州選手権を3連覇。2023年の全米アマチュア選手権では、マッチプレー進出を決める36ホールのストロークプレー予選を首位タイで通過し、16歳で共同メダリストを獲得。これは約103年間破られなかったボビー・ジョーンズの最年少記録を更新する快挙だった。
さらに2024年には全米ジュニア選手権でもストロークプレー予選を首位で通過してメダリストとなり、タイガー・ウッズ以来となる全米アマチュアと全米ジュニアの両大会でメダリストに輝いた。AJGAランキングでも全米1位に立ち、年間最優秀ジュニア選手にも選出されるなど、プロ入り前からアメリカゴルフ界を代表する逸材として注目を集めていた。
それだけの実績を残しながら、名門大学への進学を選ばず、17歳でプロ転向を決断。「PGAツアーでプレーすることが夢。ツアーそのものが自分の学校になる」と語り、自ら厳しい世界へ飛び込んだ。「ツアーそのものが学校」という決断は、わずか1年半足らずで結果として表れ始めている。
飛ばしだけじゃない。バーディーを量産する攻撃的ゴルフ
ブラウンの武器は飛距離だけではない。310ヤード超の飛距離に加え、高いショット精度と勝負強いパッティングを兼ね備えた総合力こそ最大の強みだ。
平均飛距離は310.6ヤードと十分な飛距離を備えながら、フェアウェイキープ率は66.6%、パーオン率は73.5%とショットの安定感も高い。さらに平均パット数は28.47、1パット率は41.7%、3パットは540ホールでわずか5回と、チャンスを逃さない高い決定力が数字にも表れている。
さらに、攻撃力の高さはバーディー数にも表れている。2026年シーズン途中では、1ラウンド平均4.53バーディーを記録し、バーディー・イーグル率は26.1%。約4ホールに1回はバーディー以上を奪っている計算になる。特にパー5では54.7%という高い確率でバーディー以上を奪っており、スコアを大きく伸ばす攻撃力はツアーでもトップクラスといえる。
一方で、グリーン周りのテクニックには、まだ成長の余地がある。ショートゲームにはまだ伸びしろを残しているものの、そこに磨きがかかれば初優勝だけでなく、将来的にメジャー優勝争いの常連となる可能性は十分にある。
※記載のスタッツは2026年7月20日時点のPGAツアー公式データに基づく。
飛距離アップのコツは右手を使いすぎないこと。ヘッドが走る「指離しドリル」
ブラウンのスイングは、体と腕が同調し、手先でクラブを操作しないのが大きな特徴だ。その感覚を磨くために取り入れているのが、右手の親指をグリップから外して打つドリルである。
ただし、トッププロとアマチュアでは、このドリルで得られる効果が少し違う。ブラウンのようなトッププロは、すでにクラブの遠心力を生かしたリリースが身についているため、右手の過度な介入を抑え、体とクラブの動きをより同調させてスイングの再現性を高めることが狙いになる。
一方、アマチュアは切り返しやインパクトで右手に力が入りやすく、手先でクラブを操作してしまうことで、アウトサイドイン軌道やリリース不足を招きやすい。このドリルは、その力みを取り除き、体の回転でクラブを振る感覚を身につけるのに効果的だ。
このような悩みを持つアマチュアゴルファーにおすすめなのが、右手の親指と人差し指をグリップから軽く浮かせてスイングする練習だ。右手でクラブを操作しにくくなるため、切り返しで力みを抑えやすくなり、インパクトではクラブの遠心力を生かした自然なリリースも覚えられるようになる。
まずは素振りでクラブヘッドの重さや自然に走る感覚を味わってみよう。右手だけで行う方法に加え、両手で右手の親指と人差し指をグリップから外して行っても効果的だ。慣れてきたら短い距離のショット、さらに通常のショットへと段階的に取り入れるとよい。クラブを右手で「操作する」のではなく、体の動きでクラブを動かし、ヘッドの力を最大限に生かす感覚を身につけることで、より効率的なスイングに近づけるはずだ。
動画で解説|右手の力みが消える「指離しドリル」のやり方
◼️吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。

