「バックスイングはゆっくり」が、飛距離アップの正解とは限らない。PGAツアー屈指の飛ばし屋、マイケル・ブレナンは、速く滑らかなバックスイングから大きなクラブスピードを生み出している。その動きには、アマチュアの飛距離アップにもつながるヒントが隠されている。吉田洋一郎コーチによる最新ゴルフレッスン番外編。

PGAツアー最終戦を制した、飛ばし屋ブレナン
PGAツアーのレギュラーシーズン最終戦、ウィンダム選手権が終わり、フェデックスカップ・プレーオフに進出する70人が決まった。大会を制したのはマイケル・ブレナン。最終日に6アンダー64をマークして逆転し、通算22アンダーで優勝した。
2025年のバンク・オブ・ユタ選手権に続くPGAツアー通算2勝目で、大会前105位だったフェデックスカップランキングは一気に47位まで浮上。ランキング70位以内に与えられるプレーオフへの切符をつかんだ。
今回、圏外からトップ70に滑り込んだのはブレナンただ一人。最後の一戦でプレーオフ圏内まで順位を上げることが、いかに厳しいかを改めて感じさせる優勝だった。
70位という「境界線」
ウィンダム選手権の会場には何度か足を運んだことがあるが、会場にはどこかどんよりとした重い空気が漂っていた。練習場にいる選手たちはどこかピリピリとした雰囲気で、会話や笑顔も少ない。それとは対照的に、翌週のプレーオフ初戦、フェデックス・セントジュード選手権では、晴れやかな表情の選手が多かった。
その理由は、ウィンダム選手権が単なるレギュラーシーズン最終戦ではなく、「シーズンが続く選手」と「ここでシーズンを終える選手」を分ける分岐点となるからだ。
レギュラーシーズン終了時点のポイントランキング上位70人が、プレーオフ第1戦のフェデックス・セントジュード選手権に進出する。そこから50人、30人と絞られ、最終的にツアー選手権で年間王者が決まる。つまり70位と71位では、「次の試合があるか、ないか」の分かれ道となる。
大会前、ちょうど70位にいたのが21歳のジャクソン・コイブンだった。プロ転向後わずか3試合目の3Mオープンでツアー初優勝を飾り、通算25アンダーの大会新記録をマーク。優勝で500ポイントを獲得し、一気に70位まで浮上した。
プロ5試合目となるウィンダム選手権では、その順位を守ってプレーオフ進出を目指す戦いに挑んだ。コイブンはウィンダム選手権を29位タイで終え、70位を死守。優勝して一気に順位を上げたブレナンとは対照的に、コイブンは最後の一戦で順位を守り切り、プレーオフへの切符を手にした。
一方、悔しい結果になったのがスティーブン・フィスクとマック・マイズナーだ。
スティーブン・フィスクは2026年シーズン、7月のイスコ選手権でツアー初優勝を飾り、大会前は69位まで浮上してプレーオフ圏内を争う位置につけていたが、ウィンダム選手権では予選落ち。ポイントを加えることができず、最終的に71位まで順位を落とした。
マック・マイズナーも大会前は71位と、プレーオフ進出圏内を狙える位置にいた。2026年シーズンはチャールズ・シュワブ・チャレンジで3位タイに入るなど、安定した成績を残していたが、ウィンダム選手権では最終ホールで3メートルのボギーパットを外してダブルボギー。1打およばず、トータル2アンダーで予選落ちとなった。
2025年は同大会で2位に入っただけに、相性のいい舞台での予選落ちは悔しい結果となった。週末にポイントを加えることができず、最終的に75位となり、プレーオフ進出を逃した。
プレーオフから姿を消したビッグネームたち
プレーオフ18年連続出場を続けていたジェイソン・デイは、大会前75位からプレーオフ圏外へ。ウィンダム選手権では71、73の4オーバーで予選落ちとなり、プレーオフ出場記録が途切れた。
ケガに悩まされたシーズンだったとはいえ、これまで当たり前のようにプレーオフに姿を見せていたデイがいないことは、時代の変化を感じさせる。
プレーオフ15年連続出場を続けていたキーガン・ブラッドリーも、大会前72位から49位タイに終わり、最終的に74位。2011年から続いていた出場記録が、ここで途切れた。2025年はプレーオフで7位タイに入っていただけに、2026年の結果は大きな落差となった。
11年連続でプレーオフに進んでいたトニー・フィナウも、2026年シーズンはその記録が途切れた。大会前89位からウィンダム選手権を61位タイで終え、最終的に98位。今季のトップ10はCJカップ・バイロン・ネルソンの6位タイのみと、不本意なシーズンとなった。
そして、5度のメジャー王者で、2026年LIVゴルフからPGAツアーに復帰したブルックス・ケプカは大会前86位。プレーオフ進出には上位フィニッシュが必要だったが、67位タイと振るわず、最終的に94位でシーズンを終えた。2026年シーズンのトップ10はコグニザント・クラシックの9位タイが最高だった。
70位に入ればシーズンを継続できる一方、71位以下なら、そこでシーズンが終わる。優勝によってプレーオフに滑り込んだ選手がいる一方で、わずかなポイント差でシーズンを終えた選手もいた。
わずか一つの順位の差が、選手たちのシーズンを大きく左右する。その厳しさこそが、ウィンダム選手権を通常のトーナメントとは違う、独特の緊張感を持つ大会にしているのだ。
326ヤード超を生む「高速バックスイング」
今回、最後の一戦を制したマイケル・ブレナンは、飛距離を大きな武器とする選手だ。
2026年のドライビングディスタンスは326.7ヤードで3位、クラブヘッドスピードは126.27mphで2位。PGAツアーでも屈指の飛ばし屋に名を連ねる(※2026年8月10日時点)。
その飛距離を生み出しているのが、速く滑らかなバックスイングだ。
下半身の動きをきっかけに上半身を回転させ、体と腕をシンクロさせながらクラブを素早く上げていく。そして、その勢いをトップまでつなげ、シャフトの反動を利用して切り返すことで、大きなクラブスピードを生み出している。
「バックスイングはゆっくり」が飛距離アップの正解とは限らない
バックスイングはゆっくり上げたほうがいいと考えるアマチュアも多いかもしれない。しかし、速く上げることでクラブに勢いがつき、トップでシャフトがしなり、その反動を切り返しに利用しやすくなる。
ポイントは、手だけで急いでクラブを上げるのではなく、下半身をきっかけに体と腕を連動させること。
体全体を使ってバックスイングを速くすることで、切り返しにも勢いが生まれ、飛距離アップにつながっていくだろう。
動画で解説|PGAツアーの飛ばし屋に学ぶ高速バックスイング
◼️吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。

