2026年初め、王貞治が指導者・会長として築いてきた福岡ソフトバンクホークスの野球の歴史と精神を次世代へ継承していく「FUKUOKA OH SADAHARU LEGACY PROJECT(フクオカ・オウ・サダハル・レガシー・プロジェクト)」(略称:王レガシープロジェクト)」が発表された。その発起人である城島健司にプロジェクトへの想い、そしてレジェンド・王貞治について話を聞いた。

王会長が築いてきたものを次の世代に繋いでいく
2026年5月24日、みずほPayPayドームで行われたソフトバンクと日本ハムの試合。この日は福岡ソフトバンクホークスにとって特別なものとなった。1995年から2008年まで監督としてチームを指揮し、現在は球団の会長である王貞治の歩みと精神を、ファン、地域とともに共有する象徴的な一日として、「OH SADAHARU LEGACY DAY(オウ・サダハル・レガシー・デー)」が開催されたのだ。
ホークスの選手、監督、コーチは全員が王会長の監督時代の背番号である「89」の特別ユニフォームを着用。球場には秋山幸二、井口資仁、内川聖一、工藤公康、小久保裕紀(現・監督)、城島健司(現・CBO)、攝津正、デニス・サファテ、藤本博史、和田毅(現・球団統括本部付アドバイザー)という球団のレジェンドと言えるOBが来場。現役選手では柳田悠岐もここに名を連ねた。
このイベントは今年初めに発表された「王レガシープロジェクト」の一つ。企画、立案したのはレジェンドの一人でもある城島健司CBO(チーフ・ベースボール・オフィサー)だ。城島はプロジェクトを思い立った経緯、その狙いについてこう話す。
「プロ野球の世界は毎年のように選手だけでなく監督、コーチ、スタッフ、フロントの人間も入れ替わります。ただそのなかでホークスにおける王会長は監督に就任した1995年から30年以上球団の中心であり続けてきました。
一人の人物がここまで長きにわたって球団を牽引してきたというのは、日本はもちろんアメリカにもないことだと思います。その王会長が築いてきたものを次に世代に繋いでいくためにも、このようなイベントは何としても行いたいと思い、やっと実現することができました」
この日の試合は初回に日本ハムに4点を先制される苦しい展開となったが、2回に周東佑京の満塁の走者を一掃する3点タイムリースリーベースで同点に追いつき、3回にはレジェンドとしても登場した柳田のツーランで勝ち越し。その後、一時は追いつかれたものの8回に柳田が決勝の犠牲フライを放ち、7対6という劇的な打撃戦を制した。会場に詰めかけたホークスファンにとっても忘れられない試合となったことは間違いないだろう。
王会長は自分のことは二の次。野球界全体のことを考えている
城島が発起人となった「王レガシープロジェクト」は、単純に王会長の功績を称えるためのものではなく、ホークスに関わる福岡のすべての人に向けて行われたものだという。
「今回のプロジェクトを行うにあたって、王会長にスポットライトを当てるだけでは絶対に断られると思いました。会長は常に自分のことは二の次、もっと言えば球団だけの利益ではなく野球界全体や福岡という街のことを考えている方です。
そんな王会長の承諾を得るためにどうしようかと考えた時に、重要なのはいかにこれまでの歩みを次の世代に繋げていけるかということだと思いました。多くのレジェンドに来場してもらったのもその一つです。球場に来ている子どもたちにとって現役時代を知らない選手たちですが、お父さんやお母さんからあの人はこういう凄い選手だったという話をしますよね。当然王会長が監督だった時の話もすると思います。また現役選手では柳田だけレジェンドとして登場してもらいましたが、選手から見れば自分もあの場所に並びたいというモチベーションにもなります。そういう狙いもあってこのような形にしました」
プロジェクトの発足を記念して、11月23日(月・祝)にみずほPayPayドームでOB戦を開催することも決定。また、加えて「福岡王貞治レガシー賞」の創設も発表されている。これは王会長が監督に就任した1995年以降にホークスおよび福岡に多大な功績を残した選手、指導者、スタッフなどを顕彰するもので、功績とレガシーを次世代へ継承していくことを目的としている。
第1回受賞者は2027年に発表予定だが、賞の創設にあたって特別顕彰として、福岡でホークスの監督を務めた杉浦忠氏(故人)、田淵幸一氏、根本陸夫氏(故人)の3人が表彰されることになった。
「王さんのためなら」とホークスOBが集結
今回のプロジェクトを進めるにあたって、城島CBOが改めて感じた王会長の凄さがあるという。
「『OH SADAHARU LEGACY DAY』では、レジェンドに選ばせていただいた方など多くの方に協力をお願いしましたが、皆さんが『王さんのためなら』と二つ返事でOKをいただきました。それだけ王会長という存在がホークスはもちろん、福岡という街にとっていかに大きな存在かということを感じましたね。今年は11月23日にOB戦を実施しますが、毎年おじさんの野球ばかり見せていても仕方ないので(笑)、来年以降もあらゆる形でこのプロジェクトを続けていくつもりです」
ホークスや福岡の人たちにとっての王会長への想いはもちろんだが、城島CBOにとっても王会長が特別な存在だからこそ、今回のプロジェクトが実現したことは間違いない。次回からはそんな城島CBOが語る王貞治という人物について掘り下げて紹介する。
城島健司/Kenji Johjima
1976年長崎県生まれ。1994年ドラフト1位で福岡ダイエーホークス(現・ソフトバンク)に入団。1997年から正捕手となり、1999年に球団初のリーグ優勝、日本一に貢献。2005年にFA権を行使し、シアトル・マリナーズに移籍。2009年までプレーし、2010年に阪神で日本球界復帰。2012年に現役を引退し、趣味である釣り番組などに出演していたが、2020年よりソフトバンクの会長付特別アドバイザーに就任。2025年より現職。





