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2026.06.02

森保一監督、最大の弱点。誤解された「戦術三笘」の本当の意味③

森保一は日本代表を公式戦100試合以上率いた初めての監督となった。しかも70%を超える勝率を誇り、歴代最強の呼び声も高い。そんな監督の弱点とは何か。8年間森保監督を追い続けてきたフットボールジャーナリストが迫る「森保一の人物像」。(3回目/4回【特集 2026FIFAワールドカップ】

森保一監督、最大の弱点。誤解された「戦術三笘」の本当の意味③

就任から8年経っても変わらぬ愛すべき弱点

日本代表監督として抜群の成績を残している森保一監督の弱点とは何か。

それは間違いなく「会見で口下手」なところだ。決して思考が追いついていないわけではない。ただときとして「丁寧」すぎて、「あらゆる場面が目に浮かぶ」頭の回転の速さを持っているゆえの「口下手」だ。

会見の壇上で、森保監督は「えー」「あのー」という「フィラー(意味を持たないつなぎ言葉)」が非常に多い。森保監督の名誉のために付け加えておくと、日常的な会話をしているときは決してそんなことはない。

だが、相手の質問にどこまでも「丁寧」に答えようとして、しかもその答えている間にいろんなシチュエーションが頭に浮かび、そこで誤解が生じないように言葉を継ぎ足していくので、結果としてフィラーが増えているのだ。

もっとも、ここまで「口下手」という側面を強調したが、そのこと自体は悪いことではない。どんな質問に対しても誠心誠意答えようとしている姿は、むしろ敬意を払われるべきものだ。

ところがこれが記者会見となると、思わぬハレーションを起こす。森保監督のフィラーに慣れていないと、次の言葉を予測しながら聞いているほうがノッキングを起こしてしまう。また最終的な結論に至るまでに、複数のケースや前提が語られるため、監督の考えがまとまっていないように思えてしまうのだ(なお、就任から8年経って、多くの人が森保監督のフィラーに慣れてきて、昔のようにストレスを抱えないようになっているようだ)。

さらにこの丁寧さ故の悲劇も起きる。詳しく説明するのでどうしてもコメントが長くなる。ところがメディアが報道するときは全文載せられるほどのスペースがないことが多い。あったとしても長すぎて途中で読者に届かなくなる。それを避けるために要約するか一部を切り取るしかない。

すると誤解が生じる。一部の言葉の切り抜きだけが一人歩きする。

誤解された「戦術三笘」の本当の意味

もっとも大きな誤解を受けたのは「戦術三笘」という言葉ではないだろうか。森保監督が「選手任せ」「個人の能力に丸投げ」しているように思われてしまった。

だが真意は違う。森保監督は確かに「彼(三笘)自体が戦術である」と表現した。だがそれは選手の個性を生かして戦術を変えようとしたのであって、そこまで組織で崩そうとしていた局面を変えたということだ。

「彼自体が戦術であるので、投入したときには、個で打開する能力のある選手であるからこそ、そこを託してる部分があります」

個人での突破を狙いとする以上、周囲のサポートが少ないのは当然だ。三笘の突破力を警戒して相手が複数人でマークに来れば他の選手がフリーになる。それなのに、わざわざサポートに行って自ら数的有利な構造を捨てる必要はないのだ。

ところが「三笘に丸投げ」して孤立させているというネガティブな受け止め方が広まった。森保監督自身はメディアの報道をほとんど目にしないと言うし、周囲の人も「気にしていない」と証言する。何を言われようとも強い信念ではじき返していたのだが、さすがにこの誤解は耳に入ったようで、より詳しい説明があった。

他にも、森保監督が基本戦術を決めながらも局面での判断を選手に任せているのは、列強との戦いでは外からの指示が追いつかないくらいスピードが速いためだが、「戦術三笘」と相まって、すべて選手任せに思われてしまった。

2022年カタールワールドカップ・アジア最終予選の序盤、3試合で2敗を喫した当時のバッシングは、SNSの普及も手伝って過去に例を見ないほど苛烈なものだった。ときに誹謗中傷の域に達するような言葉さえ飛び交っていた。

森保監督は平常心を保っているように見せていたが、胸中には忸怩たる思いもあったに違いない。取材の過程で、事実を曲解されたことに対して失望を滲ませる姿を目にしたことがある。

もっともそうした逆風のすべてを、森保監督は実績で黙らせてきた。2022年ワールドカップを経て、今では根拠のない批判に対してどこか余裕すら感じさせる。逆境を何度も跳ね返してきたその強さは本物だ。たとえ「会見で口下手」という弱点は残っているにしても。

4回目に続く

TEXT=森雅史

PHOTOGRAPH=ロイター/アフロ

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