放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、「令和ロマン」「エバース」「ヨネダ2000」をはじめ、多くの教え子を輩出した桝本壮志のコラム。

「33歳の営業職です。4月から、苦手な上司と、扱いにくい新人と働いていかなくてはなりません。彼らとうまくやっていく思考のコツがあれば教えてください」という相談をいただきました。
細かい上司、威圧的な先輩、無気力な新人、使えない部下……。
クラスに一人はピアノを弾ける生徒がいたように、職場にも一人や二人は、「苦手」や「扱いにくい」と感じる同僚がいるものですよね。
最近は「上司ガチャ」「部下ガチャ」なんて言ったりしますが、このガチャは働いていくかぎり続きます。
運ゲーに労働意欲を左右されていくより、たとえ「ハズレ」でも、うまく対応していくスキルを磨いていったほうが健やかでいられます。
そこで今回は、かつては強圧的な上司も多かったエンタメ界、負けん気の強い新人がいる芸人学校で生きてきた僕なりの、「上司・部下とうまくやっていく思考戦略」をシェアしていきたいと思います。
誰が「後身」かよりも、自分をどう「更新」するか
本題に入る前に、まずは上司と部下、どちらにも共通するマインドを整えていきましょう。
上司や部下の「ガチャ」とは、前任者からポジションを引き継ぐ「後身」がやって来るということ。
これは、前述のように「働いていくかぎり続く運ゲー」なので、事あるごとに心をかき乱されていくと、仕事のモチベも乱調になります。
自動車のエンジンが不調になったら、交換して正常に戻せますが、私たちは心が不調になっても、自動車のようにパーツ交換はできません。
大切なのは、新しい上司や部下が「誰であるか」よりも、誰であっても「私がどう見るか」という視点。
つまり、どんな人がやって来ても、性格や人柄を拡大するのではなく、自分のなかにある「上司とは?」「部下とは?」を、ゆるやかに再定義していく。
この"後身ではなく更新に目を向けていく"という思考戦略が、社会人を30年以上やってきた僕の戦利品です。
では早速、再定義をはじめていきましょう。
「上司の定義」の更新
まず、上司はあなたの期待を満たすために働いていません。指摘や小言を差し向けてきますが敵でもありません。
この「敵のような味方たち」は、あなたの仕事を観察し評価していきます。
けれど、この周りの「客観」を、あなたが操縦することはできません。
上司の客観に気をとられ、「お眼鏡にかなう働き」をしようとすると"株を上げるために「得意なこと・分かっていること・好きなこと」をやって見せよう"というマインドになっていきます。
けれど、1万人以上の新人を育成してきた僕の知見だと、"伸びる人は、「苦手なこと・分からないこと・嫌いなこと」をこなしていける人"でもあります。
上司たちの「客観」は動かせませんが、あなたの「主観」は自在に動かせます。
まずは、相手に「自分をいかようにでも評価してください」という自由を与える。
そして、「苦手なことや知らないこと、いろいろやってミスしていきますんで、そこはよろしく!」という自由を自分にも与えていく。
こういった思考を育てていくことが大切なのですね。

1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。「令和ロマン」をはじめ、教え子は1万人以上。新著『時間と自信を奪う人とは距離を置く』が絶賛発売中! 桝本壮志へのお悩み相談はコチラまで。
「部下の定義」の更新
私たちリーダーは、チームに加わった部下を「新人扱い」しますが、大切なのは「人間扱い」することです。
年齢や学歴は横に置いて、まずは「お互い人間である」を前提にして敬意を払う。
「敬意は、払った人に返ってくるもの」なので損はしません。
また、私たちは「ここで通用しないなら、他に行っても通用しないぞ」と、よく「未知の領域」を出して部下をコントロールしてしまいます。
しかし、私たちも「他の業界」は知らないはずですよね?
上司にとって必要な振る舞いは、「私は、この仕事については、あなたよりも多くのことを知っている」というポイントのみを誇ること。
そして、指導者よりも「供給者」のような感覚で接し、必要なものをシェアしていく思考を育てていきましょう。
部下の人生を変えるような上司になる必要はありません。吉本NSCでも、今春1000人を超える新人が巣立っていきましたが、1年も経てば、ほとんどの教え子が僕の名前すら口にしなくなります。
が、それで大成功なのです。私たちリーダーの目的は、生涯にわたって名前を覚えてもらうことではなく、「生涯にわたってやれる仕事を覚えてもらうこと」ですからね。
では、また来週、別のテーマでお逢いしましょう。

