放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出した桝本壮志のコラム。

「新刊を読んで桝本さんのことを知った26歳の会社員です。私は、落ち着いた大人の女性や、職場の先輩に憧れているのですが、なかなか精神的に大人になれません。コツはあるのでしょうか?」という相談をいただきました。
まずは、拙著 『時間と自信を奪う人とは距離を置く』を読んでくださってありがとうございます。
幅広い層の方から反響をいただいており、励みになっております。
さて、「なかなか精神的に大人になれない」ということですが、そう思っている人はたくさんいます。後で詳しくお伝えしますが、僕もそうです。
そして、ご所望のコツがあるとしたら“「なかなか精神的には大人になれない」という摂理を受け入れていく”ことだとも考えています。
一体どういうことなのか? 今回は、人生の半ばに差しかかった50歳の僕が知っている、「大人の正体」をシェアしていきたいと思います。
「思うてたんと違う」は、大人の国際ライセンス
まず、「50歳」と聞いて、どんな大人をイメージしますか? 49歳で天寿を全うした織田信長や夏目漱石よりも年上ですし、さぞ精神的に大人だと思いますよね?
しかし、僕はまったく違います。
10代のころと同じように心が傷つきます。いまだに耐性はついていません。
怒りも沸きますし、嫉妬もします。噓もつきますし、サボりたくもなるし、エロいことも考えてしまいます。
けれど、歳を重ねるごとに、そういった感情を隠すのがうまくなる。けして強くなったわけじゃないのに、内側に引っこめる上級者になっていく。
そう、若いときに想像していた大人ではない、「思うてたんと違う」未来なのです。
20代・30代のころは相談者さんのように、「なかなか精神的に大人になれない自分」にモヤモヤしていました。
が、40代あたりから、似たような同世代がたくさんいること、職場では落ち着きや品格のある人も、弱音や怒りをうまくコントロールしているだけで、ひと皮むけば思春期が顔を出すことを知ったのです。
そうした日々から分かってきたのは、「思うてたんと違う」は、誰しもが持っている大人の国際ライセンスのようなもの。
そして、「精神的に大人になりたい」という感情は、生涯学習のようなもので、一生をかけて獲得していくものだという学びでした。
私たちは、「なかなか精神的には、大人になれない」という摂理を受け入れ、それを前提にしながら、前向きに獲得していく。
そういった精神が、「精神的な大人」の入口ではないかと、僕は思っています。
大人は「思うてたんと違う」が武器になる
大人は「人格者」ではなく、ただの「年長者」なのですが、ガッカリしないでください。
僕は、10代・20代の吉本NSC生に、こんなふうにも伝えています。
「50歳になっても、大した人格や品格は手に入らないし、精神的にも変われないよ。だけど、『変われない』ということは、センスや想像力や欲望なんかも、簡単には『衰えない』ということなんだよ」と。
「なかなか精神的に大人になれない」と言うと、ネガティブに聞こえますが、“「簡単には変われない」ということは、青年期のストロングポイントが、そっくり継続される”ということでもあるのです。
僕の経験でも、企画力や発想力は若手時代と変わらないし、テクニックやスキルが身についたぶん、成果を得やすくなっています。
「大して変われない」は、「大事なことも変わらない」ということでもあるので、そこにも目を向けていきましょう。
また一説によると、私たちの脳が、情報を分析する・理解する力をもっとも発揮するのは40代、判断力や実行力のピークは50代だとも言われています。
そう、「思うてたんと違う」は、予想外の「頼もしい武器を授かる」ことでもあるので楽しみにしておきましょう。
こうした、「実は変わらないもの」「贈与されるもの」の存在を知り、しなやかに現在と向き合い、ワクワクしながら生きてみる。これも「精神的に大人になる」の一歩ではないでしょうか。
ではまた来週、別のテーマでお逢いしましょう。

1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出。
新著『時間と自信を奪う人とは距離を置く』が絶賛発売中!
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