放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出した桝本壮志のコラム。

「38歳の中間管理職です。部会などで会議をまわすことが増えたのですが、あまり発言やアイデアも出ず、盛り上がらないまま散会になることが多いんです。会議を活性化するコツがあれば教えてください」という相談をいただきました。
アジェンダ(進行資料)やレジュメ(議題の要約)などの下準備はバッチリなのに、あまり会議が盛り上がらない。
若手や女性社員にも発言してほしいのに、なかなか積極的になってくれない。
先日、東証プライム上場企業からのオファーで管理職研修を行ってきましたが、やはり「どうすれば会議が活性化するのか?」は関心度が高く、多くのリーダーの悩みであることが分かりました。
そこで今回は、さまざまな企画会議、トーク番組に参加してきた僕の知見をもとに「芸人さんに学ぶ会議を活性化するツボ」を押さえていきたいと思います。
すぐれたトーク空間は「三角形」を意識
まず、あなたの会議室の座り位置はどうなっていますか? アジェンダやレジュメなどの下準備に気を取られ、「本番は参加者におまかせ」の状態になっていませんか?
議題が盛り上がらない、若手が積極的に発言しない会議の多くは、企業風土とも言える「上座・下座の伝統意識」にあります。
例えば図Aのように、上役はボードの前(上座)に座り、真ん中に中堅社員、端っこ(下座)に若手社員が配置されるといった年功序列の席順です。

こういった会議では、上役自身がファシリテーター(進行役)になっていることが多く、自分に近しい側近や年長者など上座の面々に意見を求めていくので、おのずと発言者は限定され、若手は蚊帳の外。

図Bのように、とても小さい「会話の三角形」が形成されていきます。
そもそも小さな会話の三角形しか生まれない空間なのに、「どうして発言しない?」「アイツらは意見がないのか?」と、矛先を向けられる若手社員はとてもツラいんですね。
ちなみにトーク番組では、図Cのように、もっとも発言したり、会話を活性化してくれたりする芸人さんを、あえて大外(会議室の端っこ)に配置します。

皆さんもテレビやネット番組で、新規ゲスト(アイドルや俳優)が上座、芸人さんが下座に座っているシーンを見たことがあるのではないでしょうか?
番組によっては、東野幸治さん、伊集院光さんのようなベテラン芸人や、カズレーザーさんのような知恵者が大外に座っていたりもします。
場の空気をコントロールしてくれる芸人さんが大外にいることで、図Dのように、ファシリテーターの司会者と大きな会話の三角形が生まれます。

こうすることによって、進行役と発言力のある人たちに挟まれた新規ゲストも、どんどん会話に引き込まれていき、口も滑らかになっていくといった利点があるのですね。
僕が行っている企画会議などでは、このトーク番組の「三角形」を応用して、一定の効果を得ています。

まず、図Eのように、下座の若手にファシリテーターをお願いして、会議を進行してもらうようにしました。
最初は、大丈夫だろうか?と不安もよぎりましたが、まったく問題ありませんでした。
若手が進行役になると、おのずと同世代の口も滑らかになり、発言回数が増えていくという好循環も生まれたのです。
さらに、若手ほど早めに会議室に入ってくるので、どんどん上座に座るようにうながし、座り位置をランダムにしてみました。
これによって、大きな会話の三角形が形成され、会議が活性化。良質なアイデアが創出される集団へとつながっていったのです。

よかったらあなたの会社や組織でも試してみてください。
ではまた来週、別のテーマでお逢いしましょう。

1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出。