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2023.03.07

織田信長が豊臣秀吉の妻・寧々に送った手紙の驚きの内容とは【5分でわかる歴史朗読】

日本の歴史において、誰もが知る織田信長。歴史に名を残す戦国武将のなかでも、信長は極めて特異な人物だった。交渉力、絶体絶命のピンチを乗り越えるアイデア力、咄嗟の判断力……。信長の奇想天外で機転の効いた行動は、日々無理難題を強いられるビジネスパーソンのヒントになるだろう。今回は、信長が豊臣秀吉とその妻・寧々の関係を案じ、送った手紙について紹介! 作家・石川拓治さんによるゲーテの人気コラム「信長見聞録」を朗読という形で再発信する。

秀吉の身を案じた信長が、その妻に送ったメッセージ

「おほせのことく、こんとハこのちへはしめてこし、けさんニいり、しうちやくに候」

という書きだしで始まる、信長の手紙が残っている。仮名書きなのは、女性に宛てて書いた手紙だからだ。冒頭に「仰せのごとく」とあるから、返信なのだろう。その次は「今度はこの地へ初めて越し、見参に入り祝着に候」。仰るとおり、あなたが初めてこの地に来て、会えたことを祝着だと喜んでいる。

この地とは安土だ。琵琶湖畔の安土に築城が開始されたのは天正四年一月。巨石で安土山全体を覆うがごとき大土木工事を経て、天守閣が完成するのは三年先だが、気の早い信長は翌月には岐阜から移っていた。

つまり、これはその安土に信長を訪ねた女性が書いた礼状への、信長の返信なのだ。祝着に候のあとはこう続く(原文は仮名書きだが、以下適宜漢字をあてはめ、表現を一部改める)。

「ことに土産色々美しさ、中々目にもあまり、筆にも尽くし難く候、祝儀は仮にこの方よりも何やらんと思い候へば、その方より見事なる物もたせ候間、別に志しなくのまま、まずまずこのたびは止め参らせ候、重ねて参りのときそれに従うべく候」

女性からの土産を絶賛し、お返しに何かを贈ろうと思ったのだが、その見事さに見合うものが思いつかない。今回はやめにして、次にあなたが訪ねてきた時に贈る、と言うわけだ。

足利義昭を追放し、名実ともに天下人となった信長の下には世の金銀財宝が蝟集していた。返礼品に困るはずはないが、信長は時々こういうことを言った。贈り物の見事さに見合うものを思いつかなかったというのは、おそらく信長の本心だ。

信長の価値観は独特で、いつもその価値観に基づく自分の美意識に忠実だった。彼は人から無数に物を贈られたが、自分の気に入った物しか受け取らなかった。それは自分が人に物を贈る時も同じだった。武田信玄が信長からの贈り物に感心した話が残っている。物を贈るという行為でさえも、信長にとっては命がけの真剣勝負のようなところがあった。

女性が何を信長に贈ったのかは明らかでないが、それは単純に美しいだけでなく、信長の性質を知り抜いたうえでの機知に富んだ贈り物だったのだろう。

その機知に見合う物を思いつかないと、信長は言ったのだ。

この才智ある女性は寧々、つまり秀吉の妻だ。この時期、秀吉は信長によって近江長浜の城主に取り立てられている。その妻の寧々が、信長を訪問した。どんな会話があったのかは、手紙の続きから推測できる。

【続きはこちら】

音声で聞く! 5分で学べる歴史朗読

■第一回・偉大な父・織田信秀とは
■第二回・斎藤道三を唸らせた、信長の一言とは
■第三回・江戸の裁判でみせた、信長の男気とは
■第四回・若き織田信長が、家臣たちの信頼を得られなかった理由とは
■第五回・武田信玄が語る信長の機転の効いた行動とは
■第六回・織田信長が桶狭間の戦いで起こした大事件とは
■第七回・桶狭間の戦いは奇襲戦ではなかった!? 誰よりも慎重な武将・織田信長
■第八回・日本で唯一、はじめから天下統一を画策していた武将・織田信長の思慮深さとは
■第九回・織田信長が足利幕府を再興させた本当の狙いとは
■第十回・殺してしまえホトトギスは嘘⁉︎ 信長は実は冷静沈着な武将だった?
■第十一回・織田信長は世界初のダイバーシティ推進者だった!?
■第十二回・織田信長が味方の裏切りを頑なに信じなかった驚きの理由とは
■第十三回・織田信長が見据え、目指していた戦国時代後の未来

Takuji Ishikawa
文筆家。1961年茨城県生まれ。著書に『奇跡のリンゴ』(幻冬舎文庫)、『あいあい傘』(SDP)など著書多数。

TEXT=石川拓治

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