AND MORE

2023.01.29

殺してしまえホトトギスは嘘⁉︎ 信長は実は冷静沈着な武将だった?【5分でわかる歴史朗読】

日本の歴史において、誰もが知る織田信長。歴史に名を残す戦国武将のなかでも、信長は極めて特異な人物だった。交渉力、絶体絶命のピンチを乗り越えるアイデア力、咄嗟の判断力……。信長の奇想天外で機転の効いた行動は、日々無理難題を強いられるビジネスパーソンのヒントになるだろう。今回は、織田信長が本国寺へ急ぎ出陣する際、馬借たちが取り乱していた場面でみせた冷静沈着さにまつわるエピソードを紹介。 作家・石川拓治さんによるゲーテの人気コラム「信長見聞録」を朗読という形で再発信する。

nobunaga_10

緊迫した場面で信長が見せた冷静さ

信長の人生を俯瞰すると、後半生はある意味で前半生の繰り返しだった。違いはその規模の大小だけとも言える。

後半生の最初が義昭の将軍任官で、状況は信秀の家督を継いだ時とよく似ている。織田家当主とは名ばかりで、周囲を敵に囲まれながら尾張全域の支配を目指し戦い続けたように、後半生も全国の敵を相手に戦い続けなければならなかった。

義昭の擁立も前半生の政治の踏襲だった。尾張時代は、国守斯波氏を少なくとも形式的には尊重している。清洲城を奪取した時も、斯波義銀にその清洲城を譲り、自らは北櫓に退いたくらいだ。権威を政治的に利用するためだが、敵対関係になるまで態度を変えていない。義昭の時もそうだった。

入洛の翌年、永禄12年正月4日、将軍となった義昭が仮御所とした下京(しもぎょう)の本国寺を、三好三人衆と斎藤龍興の軍勢が包囲する。上洛戦で信長軍に畿内から掃討されていた三好三人衆に、信長に美濃を追われ斎藤家再興を期していた斎藤龍興の残党が加わり反旗を翻した。その1万の軍勢に対し、本国寺に立て籠もる兵力は2000程度。門前の家々は焼かれ、御所への突入と撃退が繰り返された。

急使が6日岐阜に着く。未曽有の大雪だったが、信長は即座に出陣を決める。常のごとく家臣を待たず、一騎で駆け出したが勝手が違った。馬借たちが言い争っていたのだ。この時の信長の行動が意外なものだった。馬を下り、馬の荷をひとつひとつ点検し始めたのだ。

「同じおもさなり、急ぎ候へ」※

信長は焦っていたはずだ。馬借を叱り、先を急いでも良さそうなものだが、そうはしなかった。大雪の中の困難な行軍を前に殺気立つ馬借の気持ちを理解したからだろう。不平を抱かせたまま出発するより、理で諭す方が得策と判断したのだ。

【続きはこちら】

音声で聞く! 5分で学べる歴史朗読

■第一回・偉大な父・織田信秀とは
■第二回・斎藤道三を唸らせた、信長の一言とは
■第三回・江戸の裁判でみせた、信長の男気とは
■第四回・若き織田信長が、家臣たちの信頼を得られなかった理由とは
■第五回・武田信玄が語る信長の機転の効いた行動とは
■第六回・織田信長が桶狭間の戦いで起こした大事件とは
■第七回・桶狭間の戦いは奇襲戦ではなかった!? 誰よりも慎重な武将・織田信長
■第八回・日本で唯一、はじめから天下統一を画策していた武将・織田信長の思慮深さとは
■第九回・織田信長が足利幕府を再興させた本当の狙いとは

Takuji Ishikawa
文筆家。1961年茨城県生まれ。著書に『奇跡のリンゴ』(幻冬舎文庫)、『あいあい傘』(SDP)など著書多数。

TEXT=石川拓治

PICK UP

STORY 連載

MAGAZINE 最新号

2024年12月号

昂る、ソウル

東方神起

最新号を見る

定期購読はこちら

バックナンバー一覧

MAGAZINE 最新号

2024年12月号

昂る、ソウル

仕事に遊びに一切妥協できない男たちが、人生を謳歌するためのライフスタイル誌『ゲーテ12月号』が2024年10月24日に発売となる。今回の特集は“昂る、ソウル”。最高にエンタテインメント性に富んだ国、韓国をさまざまな方向から紹介。表紙は東方神起が登場。日本デビュー20周年を目前に控えた今の心境を教えてくれた。

最新号を購入する

電子版も発売中!

バックナンバー一覧

SALON MEMBER ゲーテサロン

会員登録をすると、エクスクルーシブなイベントの数々や、スペシャルなプレゼント情報へアクセスが可能に。会員の皆様に、非日常な体験ができる機会をご提供します。

SALON MEMBERになる