日本の歴史において、誰もが知る織田信長。歴史に名を残す戦国武将のなかでも、信長は極めて特異な人物だった。交渉力、絶体絶命のピンチを乗り越えるアイデア力、咄嗟の判断力……。信長の奇想天外で機転の効いた行動は、日々無理難題を強いられるビジネスパーソンのヒントになるだろう。今回は、偉大な父・信秀と信長の意外な関係を紹介! 作家・石川拓治さんによるゲーテの人気コラム「信長見聞録」を朗読という形で再発信する。
偉大すぎる父・織田信秀。猛烈なプレッシャーのなか、信長が取った行動とは
青年期の信長が世間から「大たわけ」呼ばわりされたのは有名な話だ。放埒な身なりと酷い行儀ゆえとされているが、もっと大きな背景がある。
父の織田信秀が四十二歳の若さで歿っした時、信長は十九歳だった。この時代の基準では立派な大人だ。まして信長は吉法師と呼ばれた幼少時代から城と専属の家臣団を与えられ、次世代の主として育てられた。文句のつけようのない新当主だ。船出は順風満帆のはずだった。
しかし、現実は真逆だった。
音声で聞く! 5分で学べる歴史朗読
Takuji Ishikawa
文筆家。1961年茨城県生まれ。著書に『奇跡のリンゴ』(幻冬舎文庫)、『あいあい傘』(SDP)など著書多数。