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2023.02.14

織田信長が味方の裏切りを頑なに信じなかった驚きの理由とは【5分でわかる歴史朗読】

日本の歴史において、誰もが知る織田信長。歴史に名を残す戦国武将のなかでも、信長は極めて特異な人物だった。交渉力、絶体絶命のピンチを乗り越えるアイデア力、咄嗟の判断力……。信長の奇想天外で機転の効いた行動は、日々無理難題を強いられるビジネスパーソンのヒントになるだろう。今回は、何度味方から反逆を受けても、頑なに裏切りを信じなかった信長の秘めた想いを紹介。 作家・石川拓治さんによるゲーテの人気コラム「信長見聞録」を朗読という形で再発信する。

他人の情緒を理解するのが不得意だった信長

信長と足利義昭の蜜月関係は長く続かなかった。義昭を奉じて上洛した翌年には、早くも仲違いが始まっている。

永禄12年秋のことだ。御所の義昭を訪問した信長が、突如岐阜に帰国してしまう。心配した正親町天皇が、帰国の理由をたずねるために勅使を派遣するという騒ぎにまでなった。信長の返答は不明だが、奈良興福寺の多聞院日記にも「信長十二日ニ上洛、十六日上意トセリアイテ下了ト」という記述がある。12日に上洛した信長が、16日に上意つまり将軍と意見が対立して岐阜に下ったというのだ。

興福寺は義昭が幼少期から将軍になる直前まで過ごした縁の深い寺だ。その興福寺の多聞院英俊が義昭の動向に敏感なのは当然としても、関心の焦点が信長と義昭の関係にあったことがうかがえて興味深い。

義昭の将軍任官でもたらされた都の平和の後ろ盾が、信長の軍事力であることは世間の誰もが知っている。ふたりの関係が良好なら、この平和は長く続くかもしれない。けれど、それがもし壊れたらどうなるか。信長が手足のように動かす数万の軍勢は、そのまま大規模な戦乱の火種になりかねなかった。英俊に限らず、この時期の畿内の人々が、薄氷を踏む思いでふたりの関係を見守っていたことは疑いない。その危惧が現実化し始めたのがこの時だった。

翌年4月、信長は3万の軍勢を率いて越前へ向かう。手筒山城、金ヶ崎城と朝倉氏の支城を落とし、越前国に乱入しようとした矢先、北近江の浅井長政が寝返ったとの注進が届く。

「虚説たるべし」

そう言って、信長は最初報告を信じようとしなかった。

信長の理屈はこうだ。長政には妹のお市を嫁がせてある。長政は義弟であり歴然たる縁者だ。しかも、北近江全体の支配を任せている。彼には何の不足もないはずだ。だから自分を裏切るはずがない……。

【続きはこちら】

音声で聞く! 5分で学べる歴史朗読

■第一回・偉大な父・織田信秀とは
■第二回・斎藤道三を唸らせた、信長の一言とは
■第三回・江戸の裁判でみせた、信長の男気とは
■第四回・若き織田信長が、家臣たちの信頼を得られなかった理由とは
■第五回・武田信玄が語る信長の機転の効いた行動とは
■第六回・織田信長が桶狭間の戦いで起こした大事件とは
■第七回・桶狭間の戦いは奇襲戦ではなかった!? 誰よりも慎重な武将・織田信長
■第八回・日本で唯一、はじめから天下統一を画策していた武将・織田信長の思慮深さとは
■第九回・織田信長が足利幕府を再興させた本当の狙いとは
■第十回・殺してしまえホトトギスは嘘⁉︎ 信長は実は冷静沈着な武将だった?
■第十一回・織田信長は世界初のダイバーシティ推進者だった!?

Takuji Ishikawa
文筆家。1961年茨城県生まれ。著書に『奇跡のリンゴ』(幻冬舎文庫)、『あいあい傘』(SDP)など著書多数。

TEXT=石川拓治

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