HEALTH

2025.07.31

痩せていても油断禁物! 日本人が陥りがちな「糖尿病の誤解」とは【堀江貴文】

カラダは究極の資本であり、投資先である。そう断言する堀江貴文氏が、最先端の医療と美容情報を惜しげもなく伝授する本連載。第45回は「糖尿病の誤解」。「痩せているから関係ない」「症状がないから大丈夫」──そんな思い込みが、糖尿病を静かに進行させているとしたら? これらの誤解を正し、早期予防につなげるための「行動変容」について、綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長の大坂貴史先生と語り合う。

堀江貴文連載45回目

日本人の“痩せ”は世界的問題

堀江貴文(以下堀江) 糖尿病の話は以前もしましたが、今回はもう少し踏みこんで。最近の糖尿病患者の傾向について教えてください。

大坂貴史(以下大坂) 糖尿病は「慢性の高血糖状態を主徴とする代謝症候群」と定義づけられています。つまり、血糖値が高ければ全部“糖尿病”と言ってしまえるのです。その発症には体質と生活習慣が大きく関係し、肥満(BMI25以上)はリスクを高める傾向にありますが、最近は痩せていても糖尿病になる人が多くいます。糖尿病の括りでも、背景が全然違うんです。

堀江 具体的には?

大坂 少し太っただけで発症する人や、痩せていても脂肪肝がある「痩せの脂肪肝」タイプなどですね。脂肪肝と痩せ、糖尿病には実は密接な関係があるのではないかと考えられています。

堀江 内臓脂肪に加えて、脂肪肝も重要ということですね。

大坂 運動不足や加齢で筋肉が減ると、糖の行き場がなくなり肝臓へ。それが脂肪肝につながります。また、筋肉の細胞の中に脂肪が過剰に溜まり、インスリンの働きを悪くする「脂肪筋」も要注意です。以前は「内臓脂肪を何とかしましょう」という話だったのですが、最近は、本来ならほとんど脂肪がないはずの組織に過剰に脂肪が存在している「異所性脂肪」がより問題視されるようになっています。

筋肉が少ない痩せた女性が糖尿病のハイリスクに

堀江 もうひとつ、日本人女性の糖尿病も増えているとか。

大坂 おっしゃるとおりです。実は日本人に“痩せ”が非常に多いことが、世界的にも問題になっています。順天堂大学病院で行われた研究では、筋肉が少ない痩せた女性のほうが血糖値が上がりやすい、という結果が出たのです。

堀江 糖尿病の怖いところは、感覚神経・自律神経の障害、腎臓病や失明などの合併症につながること。心筋梗塞や脳梗塞も怖いですね。糖尿病の人が心筋梗塞になると、胸の痛みの症状がないこともあると聞きました。

大坂 はい。神経障害があるために、心筋梗塞を起こしても半分の人は胸の異常に“気づかない”のです。合併症である足のも同様で、切断にいたることも。大切なのは「きちんと検査をして治療を行えば、ほとんどの合併症は防げる」ということ。放っておくと悪くなりますよ、ということです。

堀江 行動変容が必要ですね。自分のことに関心がない人があまりにも多い。

大坂 実は、糖尿病を発症した時を0年として、その5年ほど前からインスリン分泌が減り血糖値が上昇することがわかっています。つまりこの段階で気づけば、発症を防ぐこともできる。

堀江 となると、健診が大事になってきますね。

大坂 ベーシックなのは血糖値、HbA1c、尿糖の数値を測る血液検査。これは“今”を測る項目になります。ですが、大事なのはインスリンがどれくらい出ているか、インスリンが効きにくいかなど“将来”を予測すること。それができるのは、75g糖負荷試験(75gOGTT)なんです。血糖値が高い、脂肪肝がある、妊娠糖尿病経験者、糖尿病の家族がいるなどのハイリスクの方は、一度、受けてみることをおすすめします。

堀江 食事の注意点は?

大坂 栄養バランスと、適量を食べること。糖質については「糖質が多い=血糖値が上がる」のは事実ですが、痩せている方が糖質制限をすると、血糖値が上がるような食事をした時に対応しきれず、急激に上昇してしまうため、注意が必要です。

堀江 運動や睡眠については?

大坂 運動については、異所性脂肪を改善できるウォーキングなどの有酸素運動や筋肉を増やす筋トレがおすすめ。睡眠については、睡眠時間6時間未満、もしくは9時間以上で糖尿病リスクが上がるといわれています。

堀江 なるほど。僕は、病院へ行かない人や運動をしない人たちの行動をどうやって変えるかが課題だと思っていて。この予防医療普及協会は「予防医療」という横串で、どのように人々の行動変容を促すか、その仕組みづくりをやっているんです。例えば、運動のアイデアでいうと、犬を飼ったらそのコストをマイナポイントで払うみたいな。

大坂 犬、いいですね(笑)。自然と運動したくなる仕組みなのがいい。

堀江 犬と歩いたり、走ったりするのが適度な運動になる。特に、クルマ移動が多い地方の高齢者にすすめたいんです。飼い主同士の交流もできるし、運動するパートナーとして犬は適任ですよ。猫じゃダメなんです。

大坂 犬の散歩は糖尿病予防に効果があるというエビデンスがあり、認知症予防にも役立つことがわかっています。

堀江 マイナンバーカードと紐づけて、使用目的を限定したマイナポイントって技術的にもつくれると思うんです。本来であればスポーツジムやマラソン大会に出場する時の料金とか、そういうものに対して紐づけていくけれど、犬の散歩もそれに入れちゃう。個人的にはゴルフも入れたいんですよね。

大坂 なるほど。遊びと健康を結びつけるのは面白いですね。あとは「糖尿病を正しく理解すること」ですね。

堀江 うちの協会でも糖尿病の映画をつくったり本も出したりしているけど、実はみんな、基本的なことを知らないですよね。血糖値を上げるホルモンは複数あって、下げるホルモンはインスリンしかないとか、日本人は遺伝的にインスリン抵抗性になりやすいとか。「俺は痩せているから大丈夫」とかも。いやいや、糖尿病の末期の人は痩せているから、という。

大坂 痩せていても糖尿病になる人もいるし、インスリンが出ない人や効きにくい体質の人もいる。“糖尿病”とひと括りにせず、その背景には体質や生活習慣、遺伝など、いろいろなパターンがあることを知ってほしいですね。

堀江 今、『糖尿病の不都合な真実2』をつくっていて、秋のYOBO万博で披露できればいいな、と考えているんです。

大坂 楽しみです。医療者にも広げていきたいですね。

大坂貴史氏

大坂貴史/Takafumi Osaka
1984年大阪府生まれ。綾部市立病院内分泌・糖尿病内科部長。京都府立医科大学卒業後、京都第二赤十字病院に勤務。その後、京都府立医科大学大学院博士課程で医学博士を取得し現職に。糖尿病と筋肉、糖尿病運動療法が専門。綾部市立病院のYouTubeチャンネル、「筋肉博士」としてXでも医療情報を発信する。

堀江貴文/Takafumi Horie
1972年福岡県生まれ。実業家。ロケットエンジン開発や、会員制オンラインサロン運営など、さまざまな分野で活動する。予防医療普及協会理事。著書も多数。本連載をまとめた書籍『金を使うならカラダに使え。』が好評発売中。

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