HEALTH

2025.01.30

「研究結果が出るまで20年も待てない」堀江貴文×医師が考える予防医療の未来とは

カラダは究極の資本であり、投資先である。そう断言する堀江貴文氏が、最先端の医療と美容情報を惜しげもなく伝授する本連載。2025年の1発目は「予防医療の可能性」。2024年9月に開催された「YOBO万博」のトークセッションで堀江氏と医療法人社団有洸会理事長の西野輝泰氏、東京予防クリニック院長の村上友太氏、同大阪院院長の長野広通氏が、予防医療を広めるべく注目する分野や啓発に向けた新たなチャレンジについて熱く語り合った。

堀江貴文連載第39回

皆保険制度で医療を安く受けられる日本で、いかに予防医療を広げていくかが問われている。

堀江貴文(以下堀江) 東京予防クリニックの開院はいつでしたっけ?

村上友太(以下村上) 2022年3月です。2024年には長野先生が院長を務める大阪院が大阪・心斎橋にできました。

堀江 予防医療としてわかりやすいのはワクチンの予防接種だと思いますが、世の中や患者さんの意識は、新型コロナウイルスのパンデミックを経て変化したと感じますか?

村上 コロナ禍の2〜3年くらいの間はオンラインでさまざまな情報が飛び交っていましたよね。その内容のよし悪しは別として、医療に興味を持つ人が増えたと感じます。最近はワクチン各種への問い合わせや、健康増進のために何に力を入れたらいいのか、という相談を患者さんからよく受けます。

堀江 コロナではないですが、僕はワクチンが足りなくて接種できなかった経験があって、その結果、新型のインフルエンザに罹ったことがあります。なので、ワクチン接種ができるのは幸せなことだと捉えています。長野先生が大阪のクリニックで取り組みたいことは何ですか。

長野広通(以下長野) 日本は病気やケガの治療を安く受けられる国民皆保険制度があるため、予防医療にはなかなか目を向けてもらえません。そこを啓発したいと思っています。近年、美容治療の受診者が増えているので、美容目的の患者さんに健康管理を併せて提案してはどうかと考えています。内科的に全身が整っていけば肌もきれいになるでしょうし、若返っていくだろうし。そんな体制を整えられたらいいなと。

堀江 入口を広げるのはいいですね。健康長寿を願う人は多いと思いますし、薬やサプリメントもいろいろ出てきていますよね。アンチエイジングへの効果についてはマウスとかで実験していますが、マウスは寿命が2〜3年と短いのですぐに得られる効果がわかる。けれど、人間で治験をしようとすると、結果がわかるまでに10年とか20年といった長い時間がかかってしまいます。

西野輝泰(以下西野) 海外ではマウスよりも長命なチンパンジーに、近年人気のNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)を服用させる研究をしていて、その期間は10年くらいだそうです。野生でない、飼育環境のチンパンジーの寿命は50年くらいなので、どの程度の効果があるのか、今後の研究を見ていく必要があります。

とはいえ、NMNのサプリメントが世に出てから10年以上。この間の研究でリスク等の問題報告はされておらず、健康寿命を延ばすことは明らかだろうと、世界中の研究者は考えています。

堀江 注目されている最先端の物質があっても、本当にそれが効くのかどうかというのは、人間において明確な比較研究をしていないので、エビデンスが出せないこともありますよね。例えば20年継続してある物質を摂っていた人と摂らなかった人とでは何がどう違うのか。何千人単位で治験をしてエビデンスを取るには、30年くらいかかることもある。でも、僕たちはその間にも年をとっていくわけです。だから僕は、自分で判断して、試すしかないなと考えています。

今、効果の可能性があるものに対して、51歳の僕が、研究結果が出るまで20年も待てるか? いや、待てないですよね。20年経ったら71歳ですから。その間も今の健康を維持したいわけだし。そのへんは、情報を集めたうえでの個々の判断になりますよね。

西野 薬のデータを取る前に、“食品”として長期服用しても問題ないという安全性の研究を先行して進めることはできるんです。例えば慶應大学の医学部では、NMNの健康被害が起こる可能性を調査した研究があって、経口摂取の安全性は確認されています。“薬”としての効果があるかどうかが確認されたわけではないけれど、よさそうだから自己判断で飲んでみてもいいだろう、という。僕は10年ほど前から飲んでいます。堀江さんもですよね。

堀江 はい。手に入るデータを見て判断して。もう10年くらい“人体実験”を続けています。あとは、近年の予防医療の新しい傾向として、医科と歯科の連携があります。糖尿病と歯周病は進行すると脳・心疾患などの重篤な症状も引き起こす病気で罹患者も多いけど、どちらも痛みがないのでなかなか受診しないんです。だから早期の医療介入が難しい。でも、虫歯は痛くなるので病院に行きますよね。

村上 そうですね。確かに。

堀江 虫歯になっちゃう大人って甘い物が好きな人が多いから、糖尿病か、その予備軍だったりするんです。だから、受診した歯科で血糖値を測ってもらうんです。それで数値が高かったら糖尿病の医師を紹介する、という動きが最近ようやくできてきています。

長野 歯周病自体が糖尿病を悪くするとも言われていますね。口腔内の菌の組成が変わるし、口から腸までつながっているので腸内細菌も変化してきます。腸内細菌は全身の病気にも関わっているので糖尿病になりやすくなる、という直接的な関連も指摘されています。医科と歯科の連携で、さまざまな予防や早期の治療が可能になりそうです。

堀江 先生たちや僕も実はいろんなものを試していて、これいいんじゃないか、あれもよさそうだとディスカッションをして、最先端の予防医療、アンチエイジングに関しての知見をためています。ものすごいスピードで研究が進んでいる分野なので、英語の学術論文が出たら即時に翻訳できるアプリも使って、世界初のエビデンスなんかも我々はチェックしているんです。

予防医療普及協会でも予防クリニックでも、最新の予防医療の情報を皆さんに共有できる環境にあると思っているので、うまく活用していただければと願っています。

村上友太医師
村上友太
医師/東京予防クリニック院長。脳神経疾患や生活習慣病、予防医療などに注力。「あのクリニックへ行けば安心」と思ってもらえるクリニックを目指す。
長野広通医師
長野広通
医師/東京予防クリニック大阪院院長。東京大学農学部を卒業後、2018年に大阪大学医学部を卒業。2024年秋に開院した「東京予防クリニック大阪院」の院長を務める。
西野輝泰医師
西野輝泰
医師/医療法人社団有洸会理事長。アンチキャンサーテクノロジズ代表取締役。国内企業の取締役、医療法人、社会福祉法人、社団法人など複数の組織に参画している。

堀江貴文/Takafumi Horie
1972年福岡県生まれ。実業家。ロケットエンジン開発や、会員制オンラインサロン運営など、さまざまな分野で活動する。予防医療普及協会理事。著書も多数。本連載をまとめた書籍『金を使うならカラダに使え。』が好評発売中。

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