HEALTH

2024.11.01

心筋梗塞に腕の切断…糖尿病患者が語る“合併症”の本当の怖さ【堀江貴文】

カラダは究極の資本であり、投資先である。そう断言する堀江貴文氏が、最先端の医療と美容情報を惜しげもなく伝授する本連載。第36回は「糖尿病」。2024年9月に開催された「YOBO万博」のトークセッション「サイレントキラー 糖尿病ヤバイ」を誌上公開。堀江氏と糖尿病専門医の渥美義大氏、糖尿病と闘うふたりの患者が熱く語った。

堀江貴文連載36回

指先の小傷から腕の切断にまでいたってしまう、糖尿病の合併症の怖さを多くの人が知らない

堀江貴文(以下堀江) 元プロ野球選手で糖尿病の合併症で片腕を切断した佐野慈紀さん、糖尿病性腎症で透析を続けているお笑いタレントのグレート義太夫さんに、実体験を語っていただきます。義太夫さんは先日、心筋梗塞で緊急入院。現在はリハビリ中なので、病院からオンラインで参加してくださいます。

渥美義大(以下渥美) 心筋梗塞の手術は開胸手術ですか?

グレート義太夫(以下義太夫) そうです。2ヵ所切開して、脚の血管でバイパスを作って、心臓が動いている状態です。

渥美 義太夫さんが糖尿病と診断されたのは1995年ですね。

義太夫 37歳でした。診断前はトイレが異常に近くなっていたのを覚えています。

渥美 体内の糖が尿中に排出されて濃くなるので、濃度を薄めるために水分が使われます。だから尿量が増え、トイレが近くなるんです。

義太夫 当時は、令和ではあり得ないような仕事も多くて。甘いものは好きではないんですがジョッキ1杯の蜂蜜を飲まされ、飲み切っても、またジョッキでガムシロップが来たりとか。

渥美 リスキーですね。糖尿病の検査のヘモグロビンA1c(HbA1c)の数値は6.5以上で糖尿病と診断されますが、尿量が増えるなどの症状が出るのは8とか9ですよ。

義太夫 最初に倒れた時の血糖値は630。そのまま2週間、教育入院になりました。

堀江 糖尿病はサイレントキラーだから、痛みがなくて自覚できませんよね。

義太夫 症状を感じないって怖い。医者の言うことを聞けなかったり、ちょっと調子がいいと大丈夫だと思って薬を飲まなかったり。それでどんどん病気が進行するという状況でした。

渥美 そうでしたか。佐野さんの発症も30代後半ですね。

佐野慈紀(以下佐野) たまたま体調が悪くて病院を受診したら、軽い肺炎を起こしていて。ついでに他の検査もしたら、血糖値が350くらいあってビビりました。慌てて、自分なりに考えて節制したら血糖値が180くらいまで下がったので、このまま節制していけば正常値(110以下)に戻ると思ったんですが、180からなかなか下がらない。それを医師に相談したらインスリン注射をするのがいいと言われ、やむなく自己注射を始めました。

渥美 当時の飲み薬だと、低血糖の副作用などのリスクがありましたからね。

義太夫 僕、医者に聞いて驚いたのが、糖尿病の一番の原因は遺伝ということでした。

渥美 環境要因、それこそ食生活の影響も大きいですが、遺伝的な素因はある程度ありますね。堀江さんはどうですか?

堀江 父方の祖父が糖尿病で。たぶん父も。遺伝リスクとしては私もあると思います。

渥美 佐野さんは、引退後の生活は変わりました?

佐野 いっさいトレーニングはしていませんでした。試合後の夜遅い食べ歩きのようなことも全然。野球選手って引退後に太る人が多いんですが、僕の場合は逆で、どんどん痩せていったんです。身体も動いていたので、安心していました。

渥美 高血糖が続いていたために、インスリンが分泌されなくなっていたのでしょう。注射も効きにくくなっていたはず。

堀江 改めて糖尿病のメカニズムをお伝えすると、血糖値が上がると膵臓のβ細胞がインスリンをドバドバ製造して血中に流します。すると、血中の糖質を身体の細胞がせっせと取りこむので血糖値が下がるわけです。糖質が過剰だと、ある程度は身体の活動エネルギーとして使われますが、余った糖質は脂肪に変換されて貯蔵されます。それで太る。けれど、糖尿病になると高血糖が続くため膵臓が疲弊してβ細胞も数が減り、インスリンを作る能力が低下します。だから糖質を細胞が取りこめず、尿中に排出されるために身体は痩せていくんです。

義太夫 確かに、普通に食べて運動もしていないのに、気づいたら20㎏くらい痩せてました。

佐野 僕も体重が減っていくのはいいことだと思っていました。

渥美 インスリンは脂肪を貯蔵=太るために出す膵臓のホルモン。だから、高血糖でかつ痩せてくるのは、糖尿病のとても危険なサインです。大事なのは定期的な通院。些細な変化を見逃さないことです。

佐野 怖いのが、抵抗力がどんどん低下するので、合併症の進行が速いこと。僕の腕が切断にいたったのも、指先の小さな傷が始まり。以前より治りが悪いと心配になってから2週間経たないうちに、傷の感染が広がってしまった。だから今でも小さな傷ができると不安になります。糖尿病になると、傷は治りにくいです。指先の傷は半年以上経ってもカサブタのままでした。

渥美 糖尿病は血流が悪くなるので、新しい細胞を作る材料も栄養も、傷を治す白血球もたどりつかないんです。そのため治りにくくなるし、感染にも弱い。血栓もできやすく、脳梗塞や心筋梗塞、目の網膜出血や腎症の合併症が起きやすい。とはいえ、おふたりが糖尿病を発症したのは20〜30年前。今は低血糖になりにくい薬もありますし、適切な血糖管理で日常生活を続けることが可能です。佐野さんがつけている血糖値計測のデバイスも便利ですよね。

佐野 はい。針を刺す自己採血も不要ですし、アプリがあって、毎分スマホに数値データが勝手に送られてくるんですよ。

堀江 今の血糖値は?

佐野 高い時で140くらい。あとは、ほぼ100前後で安定しています。

堀江 おふたりは糖尿病の怖さを身をもって体験し、話してくれました。皆さんも他の方に伝えて、より多くの方の予防に活かしてもらいたいです。

渥美義大氏
渥美義大
糖尿病専門医。糖尿病、医学教育などに関心を持ち、通院継続しやすい医療の実現を目指す。映画『糖尿病の不都合な真実』プロデューサー。
グレート義太夫氏
グレート義太夫
透析治療を行うお笑いタレント。糖尿病性腎症により透析治療を行う。著書『糖尿だよ、おっ母さん!』では糖尿病の発症から透析にいたるまでを綴っている。
佐野慈紀氏
佐野慈紀
糖尿病で右腕を切断した元プロ野球選手。1990年からプロ野球選手として活躍。引退後は、野球解説者・評論家として活動。2024年に糖尿病の合併症により右腕切断を経験。

堀江貴文/Takafumi Horie
1972年福岡県生まれ。実業家。ロケットエンジン開発や、会員制オンラインサロン運営など、さまざまな分野で活動する。予防医療普及協会理事。著書も多数。本連載をまとめた書籍『金を使うならカラダに使え。』が好評発売中。

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