俳優をはじめ、さまざまな分野で活躍する安田成美さんが、この秋、ライフワークの朗読劇とバースデーライブに挑戦する。60歳という節目を前に、「好き」を原動力に積極的に行動へ移すようになった理由とは?

名プロデューサー・安田成美の原点!?
9月9日、10日の2日間、東京・自由学園明日館講堂で朗読劇『星の王子さま』を、11月27日、28日にはバースデーライブ『YASUDA NARUMI 60th』を東京・丸の内COTTON CLUBで開催するなど、近年、俳優業以外にも精力的に活動している安田成美さん。
朗読劇は2024年、2025年に次いで4回目。プロデュースや構成を自身が手掛け、作曲と演奏は音楽家の阿部海太郎氏が、美術は安田さんの次男でアーティストの木梨銀士氏が担当する。
「この朗読劇は、海太郎さんのおかげで始まったもの。2015年に舞台『夜想曲集』でご一緒して以来、海太郎さんの音楽が大好きで。プライベートでもよく聴いているのですが、久しぶりにお会いした時に『海太郎さんとまたお仕事がしたいです』とお伝えしたら、『いいですね、やりましょう!』とご快諾いただいて。それから半年くらい経った頃、海太郎さんのライブにおじゃました時に、『海太郎さんの音楽で朗読劇をやりたい!』と、突然ひらめいちゃったんです」
題材に選んだのは、中学生の頃から好きだったというサン=テグジュペリの名作『星の王子さま』。今なお世界中で愛され続ける小説の純粋な世界観にスポットを当て、安田さん自身が台本を執筆、構成した。夫である木梨憲武氏が、「成美さんは名プロデューサー」とかねてから称していたように、新たな才能を発揮している。
「名プロデューサー? うーん、どうでしょう(笑)。ただ、小さい頃からものをつくったり、アイデアを考えたりするのは好きでした。そういえば、小学生の頃、学芸会で音楽の演出のようなものを任されたことがあるんです。この場面でこの曲を流すとか、全部自分で決めて。それが本番でぴたりとハマった時はすごく気持ちが良かったし、先生に褒められたのも嬉しかった。音楽の力ってすごいと思った記憶も残っていますね。
「好き」を伝えることで活動が広がった
『YASUDA NARUMI 60th』は、タイトル通り11月に60歳を迎える安田さんのバースデーを記念したライブ。1984年発表のデビュー曲『風の谷のナウシカ』(作詞・松本隆、作曲・細野晴臣)をはじめ、大貫妙子さんがプロデュースしたアルバム『ジィンジャー』の収録曲、娘の木梨なつ子さんが作曲、安田さんが作詞した新曲『わたしはわたし』などを披露する予定だ。
「同じ『風の谷のナウシカ』にしても、18歳の頃の私と、いろいろな経験をした今の私では、歌の印象が変わると思います。お客様に、そんな時の流れも楽しんでいただければ嬉しいです」
その一方、「60という年齢はあまり意識していない」という。
「ゆで卵は8分茹でるのが好きなんですけど、8分カウントするのと同じで、年齢も、去年は59、今年は60と、単なる数字というか、バロメーターのようなものだと思っているんです。今回のコンサートも、自分から60歳記念で何かやろうと思ったわけではなく、成り行き任せというか」
音楽活動再開のきっかけになったのは、3人の子供たち。数年前、それぞれが細野晴臣氏の音楽にハマったことで、安田さん自身も改めて細野作品に触れ、その素晴らしさを再認識。「好き」という気持ちを細野氏に伝えたいと手紙を書いたことが『風の谷のナウシカ(2024 ver.)』のリリースにつながり、それを聴いた音楽関係者から去年、2025年のワンマンライブのオファーがあったという。
「当時はそろそろ子育て卒業で、自分だけの時間が増えた時期でした。そのタイミングで『私は何をやりたいのか』と考えても、何も思いつかなかったんですよ。じゃあ、私は何が好きなのか? と自分自身に問いかけて浮かんだのが、阿部海太郎さんや細野晴臣さんの音楽でした。それで、細野さんにお手紙を書いたんです。
ただ、コンサートのお話は最初、お断りするつもりでした。しばらくやっていなかったですし、持ち歌が多いわけでもありませんから。でも、娘から『自分のためにやりなよ』と言われ、『そっか、自分のためにやればいいんだ』って。ね、成り行きでしょ(笑)」
「やりたいことは今のうちにやろう」というマインドに

1966年東京都生まれ。1981年にCMデビュー、1982年にドラマに初出演。アニメーション映画『風の谷のナウシカ』のイメージソングで歌手デビュー。『同・級・生』『ヴァンサンカン・結婚』『素顔のままで』『ドク』をはじめ、ドラマに多数出演し、日本アカデミー賞優秀主演女優賞、同優秀助演賞など数々の賞も受賞。近年は、ドラマ『みをつくし料理帖』、映画『Fukushima 50』『すばらしき世界』などに出演する傍ら、執筆や朗読劇、音楽活動など幅広く活動。著書に『日々を編んでいく』『星の王子さま 私をつくっている大切なものたち』など。プライベートでは、1994年に木梨憲武さんと結婚し、二男一女の母に。
とはいえ、朗読劇は阿部海太郎氏に、『風の谷のナウシカ(2024ver.)』は細野晴臣氏に、自身がアプローチしたことで実現したものだ。おっとりしたイメージが強かったデビュー当時を思うと意外な気もするが、「ここ数年、やりたいことは今のうちにやらなくちゃというマインドになって」と、安田さん。
「この業界に入ったのは叔母に勧められてですし、若い時は受け身で、自分から行動を起こすことはあまりなかったんです。でも、年齢を重ね、震災やコロナ禍を経て、いろいろなことを経験していくうちに、『明日何が起こるかわからない。後悔しないためにも、動けるうちに、ちょっとでも気になることは積極的にトライしよう』と考えるようになりました。
今、朗読劇やコンサートに向けてボイストレーニングの真っ最中なんですが、すごく楽しい! 喉をこう使うとこんな音が出るんだなんて、知らなかったことを教えてもらえるのが新鮮で。昔は与えられた楽曲をなんとか歌いこなすのに必死だったけれど、今は、どうやったらもっとうまく伝わるだろう、お客様に喜んでいただけるだろうって、欲が出てきたみたいです。……子供たちに『ママ、カッコよかったよ!』と褒められたいという気持ちも、ちょっとあるかも」
安田さんはそう言って、ふわりと花が咲いたような優しく、穏やかな微笑みを浮かべる。充実した日々を送っているのは、背中を押してくれる3人の子供たち、そして、夫である木梨憲武さんの存在が大きい。後編では、子育て、そして夫婦円満の秘訣について話を聞く。
※後編に続く

