安田成美さんと木梨憲武氏の夫婦仲の良さは広く知られるところだが、子供たちが仕事をサポートしてくれるなど、親子関係も良好。その秘訣は、お互いをリスペクトし、踏み込み過ぎない姿勢にあった。

子育てで大切にしたのは「好きなものを見つけてほしい」
安田成美さんは、1994年にタレントの木梨憲武氏と結婚し、翌年には長男、’99年に次男、2003年に長女を出産。子供たちが幼い頃は家庭に軸を置き、仕事をセーブした時期もあった。
「仕事と家庭の両立について聞かれることも多いですが、家庭が最優先というのは決めていたので、葛藤はとくになかったですね。子供はいつか親の元を離れていく。だから、一緒に過ごせる時間を大切にしたいと思っていたんです。ただ実際は、目の前のことをこなすのに精一杯で、葛藤する暇がなかったというのが正直なところ。今考えると、けっこうめちゃくちゃな子育てだったかも。ご飯を食べさせている時も、『はい、かむかむごっくん! 食べて、食べて!』みたいにせっついたりして。私、けっこうせっかちなので」
そんな意外なエピソードを明かしてくれたが、子育てのポリシーについても「たいそうなものはありませんでした」と振り返る。
「ただ、『好きなことを見つけてほしい』ということだけは、ずっと思っていました。人生に正解はないので、何が子供にとってベストなのかは親でもわかりません。世の中はめまぐるしく変わっていて、どこの大学を出たからすごいとかどんな職に就いたから安心というのもないだろうし。ただ、好きなものだけは、時代がどうであれ揺るがないなと思っていたんですよね。だから3人の子供たちには、『職業になるかどうかはともかく、好きなものだけは見つけたいね』と伝え続けていました」
現在は3人ともアーティストとして活動。長男のかん太氏は安田さんが2025年発表した『ちょっとだじゃれかるた』でイラストを担い、画家の次男、銀士氏は9月9日、10日に東京で開催される朗読劇『星の王子さま』の美術を手掛け、長女のなつ子さんは、11月にCOTTON CLUBで披露する新曲『わたしはわたし』の作曲を担当するなど、安田さんにとっての仕事仲間にもなっている。安田さんの想いが実を結んだわけだが、この教育方針は木梨氏と相談してのものだったのだろうか。
「いえいえ、まったく! 子供の教育方針について、憲武さんと話し合うなんてことはなかった気がします。憲武さんは、私が子供たちに何か言うたびに『そうだそうだ、ママの言う通りだ!』と、絶対に反対しないんですよ。でも、『私が今なんで言ったのか知ってる?』って聞くと、『知らない』って(笑)。本当、あきれちゃうんですけど、なんだかおかしくなって最終的には笑っちゃう。娘には『ママ、笑うの我慢して! ママが笑うからパパが調子に乗るんだよ』って怒られるんですけどね。わかっているのに乗せられてしまう。それが、憲武さんのすごいところです」
指摘はタイミングを見計らい、冷静に伝える

子育てエピソードからもうかがえる通り、夫婦仲の良さは抜群。とはいえ、お互いのすべてを盲目的に受け入れているわけではない。ほど良い距離感を保ち、大事なことはしっかり言葉にして相手に伝えるなど、30余年を共に過ごす中で、自分たちならではの夫婦像を築き上げてきた。
「基本はお互いを尊重し、踏み込み過ぎないようにしています。それは、結婚当初からですね。もちろん、憲武さんに対して『ん⁉』と思うことだってありますよ。でも、人前に出る仕事をしている人ですから、個性や持ち味をつぶしてしまってはダメだと思うんです。だから、否定せずに受け入れようとしますし、どうしても受け入れられなければ見ないようにすればいいかなって。
『これは違うな』『直した方がいいんじゃないかな』と思うことも、その場ですぐには言わず、タイミングを探ります。私自身もですが、人それぞれバイオリズムがあって、何を言われても受け入れられない状況の時もあるでしょう? 『今は聞く耳を持っているな』という時に、冷静に伝える。それが、一番効果があるんじゃないかな。声を荒立てても何もいいことはないし、自分だって後味がよくありませんから」
木梨氏もまた、安田さんとは違ったアプローチ法で夫婦円満を支えている。
「たとえば、家族で食事中になんとなく雰囲気が悪くなった時。憲武さんは、『うまいねぇ、これ!』『やっぱりママのご飯が一番だよ!』って、言葉というか、明るい音でパン!と空気を変えてしまうんですよ。何か嫌なことが起きた時も、『来たね~』『おもしろくなってきたよ~』って、ポジティブに変換しちゃう。天性のものだと思うんですけど、それで救われることは多いですね。……まあまあ深刻な状況の時は、『そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!』とイラッとすることもありますけど(笑)」
いつの日か家族全員で「木梨展」を開催したい

1966年東京都生まれ。1981年にCMデビュー、1982年にドラマに初出演。アニメーション映画『風の谷のナウシカ』のイメージソングで歌手デビュー。『同・級・生』『ヴァンサンカン・結婚』『素顔のままで』『ドク』をはじめ、ドラマに多数出演し、日本アカデミー賞優秀主演女優賞、同優秀助演賞など数々の賞も受賞。近年は、ドラマ『みをつくし料理帖』、映画『Fukushima 50』『すばらしき世界』などに出演する傍ら、執筆や朗読劇、音楽活動など幅広く活動。著書に『日々を編んでいく』『星の王子さま 私をつくっている大切なものたち』など。プライベートでは、1994年に木梨憲武さんと結婚し、二男一女の母に。
インタビュー中、木梨氏をはじめ3人の子供たちについての話題が出ると、時に笑い声をあげながら、楽しそうに話す安田さん。家族それぞれが自分のテリトリーを楽しみながら家族全員の時間も大切にしているようで、申し合わせずとも誕生日は全員そろって祝うなど、仲睦まじい。
「私の仕事に協力してくれたり、ファッションやメイクのアドバイスをしてくれたりと、子供たちとはどんどん対等な関係になってきて、すごく楽しい! 親子から仲間に変わってきたという感じかな。自分とは違う発想や考えが出てくることもあるけれど、それも新鮮だし、たくさんの気づきをもらっています。
良好な関係を築く秘訣ですか? うーん、どうだろう。強いて言うなら、『親だから』とか『こちらの方が、経験を積んでいるから』みたいな意識は持たず、対人間として、子供の言葉やアドバイスに耳を傾けるようには意識しています。おもしろいなと思って、けっこう取り入れますしね。娘は、今でも時々私の膝の上にちょこんと座ることがあるんですよ。こちらがオープンでいると、子供も飛び込んできやすいのかもしれませんね」
年齢を重ね、ますますチャーミングに、そして、パワフルに進化している安田さん。今後の目標やチャレンジしたいことを問うと、「ないです、ないです」と笑う。
「今と同じように、『好きだな』とか『やってみたいな』と心を動かされるものを、ひとつひとつていねいに取り組んでいけたらいいかな。ただ、家族5人ともものづくりに携わっているので、いつの日か家族全員で『木梨展』をやりたいねという話は出ています。まだまだ夢の段階ですが、いつか実現すると嬉しいですね」

