HEALTH

2026.07.17

痛みが劇的改善。日本初の高純度エクソソームがもたらす、最先端の膝治療とは【堀江貴文】

カラダは究極の資本であり、投資先である。そう断言する堀江貴文氏が、最先端の医療と美容情報を惜しげもなく伝授する本連載の第56回は「エクソソームの今」。湘南鎌倉総合病院では院内における高純度エクソソームの製造体制を構築し、変形性膝関節症における日本初の臨床試験を実施。さらに2026年4月にはエクソソーム治療の提供を開始した。小林修三院長にエクソソームの可能性と課題、再生医療の未来について話を聞いた。

堀江貴文連載第56回

民間の病院が、安全なエクソソーム製造体制を構築、日本初の臨床応用へ

堀江貴文(以下堀江) 今回は湘南鎌倉総合病院の小林修三院長をお迎えし、「エクソソームによる変形性膝関節症の治療」について話をうかがいます。まず、読者の皆さんに向けて、エクソソームとは何かを教えてください。

小林修三(以下小林) エクソソームは、ほぼすべての細胞が分泌するナノサイズの粒子で、細胞由来の“情報”を周囲の細胞へ伝える働きを持っています。炎症を抑えたり、組織の修復を促したり、老化した細胞の働きをサポートするといわれていて、細胞同士や臓器との連携を図るのに非常に大切な役割を担っています。そして今、再生医療分野でも非常に注目されています。

堀江 エクソソームという言葉は近年よく耳にしますが、実際には品質にかなりのバラつきがあるそうですね。

小林 はい。特に重要なのは“純度”です。「エクソソーム」と検索するとたくさんの情報が出てきますが、その一方で死亡事例も報告されています。その多くは、製剤に不純物等が含まれていることが原因といわれています。タンパク質や細胞由来の不要なものが混ざると血管内に詰まり、いろいろな問題を起こす可能性があるのです。

堀江 その純度の差は、どこで生まれるのでしょうか?

小林 エクソソーム自体は細胞から分泌されるものですが、その“元になる細胞”が非常に重要です。私たちは、当院で帝王切開で出産された方の組織を用いています。臍帯には再生能力の高い間葉系間質細胞があり、そこからエクソソームを生成しています。

堀江 純度の高いエクソソームを抽出する技術って大変なんですよね。

小林 そうですね。そんななか当院は、厳格な衛生管理と品質管理の基準をクリアした院内のGMP準拠の専用施設で、臍帯組織から間葉系間質細胞を分離し、不純物の除去率が99.7%という高純度かつ安全なエクソソームを製造することに成功しました。

堀江 すべて院内で完結しているのはすごいですね。

小林 この開発はエクソソーム研究の第一人者であり、ノーベル賞候補ともいわれる落谷孝広先生との出会いから始まりました。これまでの当院での再生医療の実績をもとに、本邦初のエクソソーム医薬品の開発に共同で取り組んだのです。

堀江 今回、その“本当のエクソソーム”を、日本では初めてヒト治療に用いたわけですね。具体的な治療法は?

小林 当院で製造された「SK-EVs」というエクソソームを変形性膝関節症の患部、つまり関節腔内へ注射します。

堀江 変形性膝関節症の患者さんは本当に多いですよね。

小林 関節軟骨の変性や炎症を特徴とする慢性疾患で、高齢化社会における主要な運動器疾患のひとつです。日本では約2500万人が罹患しているといわれています。治療方法として、炎症を抑える鎮痛剤や膝の可動域を高める運動療法、重度の場合は人工関節を取りつける手術を行いますが、標準的な治療法はまだ確立していないのです。

堀江 この変形性膝関節症の治療から始めた理由は?

小林 患者数が多いうえ、比較的安全性が担保されやすいからです。当院では、2026年2月から5名の患者さんにご協力いただき、臨床試験を試みました。その結果、痛みを測るビジュアルアナログスケールスコアでは、46%の減少。また、関節の膝の屈曲・伸展の両方の可動域が向上しているという数値も出ています。なかには、「1万歩歩いても膝が痛くならなかった」との声もいただいています。

堀江 注射は1回だけですか? それとも複数回?

小林 今回は1回です。安全性についても5例とも問題ありません。2026年4月から自由診療としての治療もスタートしています。

“検証型自由診療”の拡大を目指す

堀江 今後は変形性膝関節症以外にも、応用されるのですか?

小林 そうですね。今考えているのは、腎臓病です。日本における透析患者は33万人いて、慢性腎臓病患者全体では1000万人ともいわれています。基礎研究をやりながら、一定の状況下で特定臨床研究に持っていけるよう進めています。その他、坐骨神経痛、眼虚血症候群、炎症性疾患、筋萎縮性側索硬化症、肝不全、心筋梗塞などへの応用も考えています。

堀江 例えば慢性腎臓病の場合、投与のタイミングは?

小林 大きくふたつあります。ひとつは急性腎不全で、救急車で飛びこんできて人工腎臓にしなければいけないという方に対して投与するという方法。もうひとつは、10年、20年かけて徐々に腎機能が低下していく方に、なるべく早い段階でエクソソーム治療を加えるという方法。そうすることで既存の薬物療法では達しえない効果が期待できると考えています。

堀江 なるほど。それで、どのくらい改善するのですか。

小林 動物実験のレベルでは、いわゆる急性腎不全のラットにSK-EVsを打つ群と、そうでない群を比較すると、悪化の度合いが半減します。

堀江 半減ですか!?

小林 例えば、重症度が10までいくところが5になる。5まで悪くなるところが2.5ですむ、というような結果が出ています。

堀江 半減はすごいなぁ。

小林 実際は、平均すると30〜40%減に落ち着くのではないかと見ています。今後は症例を重ねながら検証する“検証型自由診療”がカギになると思います。ただ単に、利益目的で自由診療をやるのではなく、その時にきちんとデータを蓄積して、安全性を担保したうえで効く・効かないの領域を分けながら前に進めていくというやり方です。

堀江 自由診療では十分なデータを取っていないんですか?

小林 そうです。データを取るには、コーディネーターの介入など一定の手間暇がかかるので。ですが、そのままではいけない。当院のエクソソームを使いたいという申し出があれば、「データ蓄積の協力をお願いします」と言って渡したいです。

堀江 これは、大きな流れにしたいですね。

小林修三氏

小林修三/Shuzo Kobayash
湘南鎌倉総合病院 院長。1955年大阪府生まれ。湘南鎌倉総合病院院長。徳洲会専務執行役員。医学博士。テキサス大学での病理学客員講師などを経て、 1999年に湘南鎌倉総合病院副院長、2022年に院長に就任。日本腎臓財団理事。横浜市立大学医学部客員教授。著書に『医師として』、『間違いだらけの病院選び』などがある。

堀江貴文/Takafumi Horie
1972年福岡県生まれ。実業家。ロケットエンジン開発や、会員制オンラインサロン運営など、さまざまな分野で活動する。予防医療普及協会理事。本連載をまとめた書籍『金を使うならカラダに使え。』のほか、『日本医療再生計画』など著書多数。

COMPOSITION=長谷川真弓

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