PERSON

2026.09.24

森保監督の考えは、アジアカップ優勝? 次のW杯への布石?

サッカー日本代表の新たな幕が上がる。アジアカップまで続投が決定した森保一監督の思考に迫る。

森保監督のメンバー選考の意図は、アジアカップ優勝? 次のW杯への布石?

過去2回の世代交代で得た知見とは

森保一監督は思わず「今の招集はめちゃくちゃ難しいです」と漏らした。

9月17日、森保監督は9月から10月にかけて行われる4試合に臨む日本代表メンバー31人を発表した。その会見で大岩剛次期日本代表監督との会話について問われた際、そう答えたのだ。

森保監督の任期は2027年初頭のサウジアラビア・アジアカップまで。同大会の「優勝」を絶対的な命題として課されているが、たとえ達成できたとしても契約継続はないとされる。

そこから引き継いで次回ワールドカップを狙うのが大岩監督であることを考えると、どこまで大会仕様のチームを作るのか、次期監督の意向をどこまで汲むのか、頭を整理しなければならない。

「アジアカップ優勝」のためなら、2026年北中米ワールドカップのメンバーにケガから復帰した選手を加えたほうが完成度は高くなる。しかし選手たちの年齢層を考慮すると、できる限り早いうちから若い選手に経験を積ませる必要がある。

森保監督はすぐに「毎回選ぶということは難しいので、今回も同じことかな」と思い直したように続けたが、いつも以上に頭を悩ませたのは間違いないだろう。

自身にとって2018年ロシアワールドカップ後、2022年カタールワールドカップ後に続く、3回目のチーム刷新では、過去2回で浮き彫りになった課題を克服することが求められた。

2018年大会後の9月は、本田圭佑・香川真司・岡崎慎司という2010年代の日本代表を牽引した軸を外し、ワールドカップ未出場組や若手で「新三銃士」と呼ばれた中島翔哉・南野拓実・堂安律を中心に新チームを発足させた。そして10月の活動から吉田麻也・長友佑都・大迫勇也・原口元気・柴崎岳といった経験者を段階的に合流させ、ピッチ内外で若手へ経験を「継承」させる手法を採った。

2022年大会後の2023年3月の試合では、主将の吉田麻也をはじめ、長友佑都、酒井宏樹、川島永嗣、柴崎岳など、長年チームの精神的支柱だったベテランを一気に選外とした。そして6月から再びベテランを呼び戻し、若手選手たちへチーム戦術の浸透を図っていった。

2018年はこの手法がうまく機能した。新三銃士ははつらつとしたプレーを披露し、新時代の幕開けを宣言。新チームは発足以来11試合負けなしと、明るい未来を描いて見せた。

だが2023年は違った。変化が急激すぎて、3月の試合ではすべてがチグハグになってしまったのだ。森保監督は極端すぎた選考の反省を踏まえ、6月からは融合を前面に押し出した。

次にバトンタッチするための活動ではない!?

今回、森保監督は2026年北中米ワールドカップのメンバーから6人を外し、4試合連続開催になったことを踏まえてワールドカップよりも5人多く招集した。その中には日本代表出場回数10回以下の選手が15人含まれている。ベテランを数多く残しつつ、経験の浅い選手を加える方法に変えたのだ。

「今回は基本的にはワールドカップのメンバーをベースにしながら、ワールドカップで選びたくても選べなかった選手や、今存在感を放って成長の期待を感じさせてくれる選手でメンバーを構成させていただきました」

ただし、これまで同様、競争の中で選手を起用すると明言した。

「次にバトンタッチするためにある活動ではないと思っています。そうすると選手たちの競争のテーブルもおかしくなってしまうし、見方もおかしくなってしまうと思います。過去と今と未来を掛け合わせてチーム作りをしているので、常に次につながることも含まれています」

日本代表として経験の浅い選手であっても求められる基準は一つだ。

「アジアカップで勝たせてくれる、ワールドカップで勝つ可能性を上げてくれると思える若手は、どんどん発掘して起用していきたいと思います」

森保監督は代表に選んで育てるという考えではない。「選手が選ばせている」という、実力を見せた者だけがその場に立てるというシビアな思考だ。なぜなら、たとえ任期の終わりが見えていても、自身に向けられる厳しい視線を知っているからだ。

「バトンタッチということで、もし試合に負けたら皆さんは許してくださいますか?」

森保監督が会見で集まった記者に逆質問した。その瞬間、会場はしんと静まりかえった。そこで森保監督は静かに口を開いた。

「……ということも踏めて、目の前の勝利のために戦っていくという軸を持ちながら、その中で戦術的なチャレンジと選手の起用のチャレンジをしていきたいと思っています」

どんな年齢であっても、日本の勝利を呼び込むことができなければピッチには立たせない。森保監督はそんな厳しい表情を見せた。

一見、チームの約3分の2を北中米ワールドカップの選手が占めているため、「これまでと同じメンバー」に見えるかもしれない。森保監督に与えられた目標だけをクリアするために選んだとも思えるだろう。

だが森保監督は、目の前の目標だけでなく日本の未来もしっかりと見つめている。今回のメンバーは、北中米ワールドカップ初戦オランダ戦の平均年齢が25.7歳、本大会メンバー全選手平均年齢(27.1歳)から、確実に若返りを果たしている。

二兎を追いながら両方を得る。これまでも若手を成長させつつ、強いチームを作り上げてきた。この手腕こそが、森保監督が長期政権を築けた大きな要因なのだ。

TEXT=森雅史

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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