本を読み、情報を集め、慎重に考える。一見すると成長につながりそうに思えるが、識学代表・安藤広大氏は「考えすぎることこそ成長を止める原因になる」と指摘する。組織マネジメント理論「識学」は、これまで5,000社以上に導入され、多くの経営者やビジネスパーソンの組織課題と向き合ってきた。優秀で勉強熱心でも、結果が出ない人がいるのはなぜか。なぜ優秀な人ほど動けなくなるのか。成長する人と成長できない人の違いを聞いた。【その他の記事はコチラ】

考えすぎる人ほど成長できない理由
いくら学歴が高くても、仕事で思うように成果につながらない。そんなケースはどんな現場でも往々にしてある。自分を変えるために、ビジネス書を読んだり、カリスマ経営者の成功例を参考にしたり、セミナーに参加したりと努力を重ねている人も多いだろう。
「前提として成長するのは運動量が多い人、いわゆる動ける人です。たくさん動けるから、たくさん失敗もする。そこで、そうやって自分の不足と向き合った回数がモノを言うんです。
それでは成長を邪魔するのは何なのか。禁物なのは、動く前に自らあれこれ考えてしまうこと。『考えすぎ』が成長を止めるんです」
意外にも、安藤氏自身もかつては“考えすぎて動けない側”の人間だったという。
「最初に入社した会社では、頭でっかちだったと思います。まずは動かなければということがわかっていませんでした。とにかく考えすぎると、動くまでに時間がかかりますし、いざ動き始めてもいろんな考えが生まれてブレーキをかけてしまう。成長のスピードは圧倒的に遅くなってしまいます」
では、考えすぎて動けない状態から抜け出すには、どうすればいいのだろうか。
「識学ではよく、本を読んだり、いろんな知識を取り込むことをいったんやめようと伝えています。仕事で行き詰ったり悩みが生まれたとき、参考にしようとビジネス本を読んだりしがちです。経営者なら、経営がうまくいっていないときにいろんな経営者の本を読んだ経験もあるのではないでしょうか。
でも、入ってくる知識はあくまでも断片的なものです。結局、『この本はこう言っているけれど、あの本では違うことを言っている。どっちが正しいのか』と迷い始める。さらには『この人がこう言っているなら、こんな努力をする必要ないのでは?』と、やらなくていい理由まで探し出し始めてしまう(笑)。
もちろん勉強することは大事です。でも今、なかなか動けない状態から脱したいと思うなら、まずは知識の流入をいったん止めることも大事です」
「正解探し」をやめない限り人は変われない
また、相手がどう思うか他人の感情を慮るあまり、メールの文面ひとつにもやたらと時間をかけてしまうなど、他人の評価を恐れて足踏みしてしまう人もいるだろう。
「ひと言で言えば、正解を求めすぎず、とにかく動けということです。評価は他人がするものですよね。メールだって丁寧に書きすぎて、逆に『もっと簡潔でいいのに』と思われているかもしれません。
こちらがいくら想像を膨らませても、実際に動いて評価を受けないと、その差分はわからない。他者評価を受けて初めて、現在の自分の行動とのギャップに気づくことができます。そして、そのギャップに気づいて初めて人は変わることができるんです」
ただ、「まずは動け」と言われても納得できない人もいるかもしれない。無駄な作業は避けたいし、効率的に進めるべきではないかと考えるのは自然なことだ。
「もちろん効率化を追求することは否定しません。ただ、それはたくさん動けるようになってから考えるべきことです。いろいろ動いて、それこそ無駄な動きをして初めて、それが本当に無駄だったのかがわかる。
経験値がないなかで頭だけで考えるのは避けたほうがいい。何も経験しないうちに効率化だけを追い求めても意味はありません」
安藤広大/Kodai Ando
識学 代表取締役社長。1979年大阪府生まれ。早稲田大学卒業。大学時代はラグビー部に所属し、勝敗と向き合う厳しい環境で4年間を過ごす。NTTドコモ入社後、営業としてキャリアをスタート。上場企業への転職を経てマネジメントに携わるなかで、「人のやる気」や「人間力」に依存する組織運営に限界を感じ、識学と出合う。誤解や錯覚を排した明確なルールと仕組みによるマネジメント理論に強く共感し、事業部の立て直しでその有効性を実証。2015年に株式会社識学を設立し、創業4年足らず(3年11ヵ月)東証グロースに上場。現在は延べ5,000社以上の組織改革を支援している。組織マネジメントに関する著書は『リーダーの仮面』などベストセラー多数。「がんばっている人が、正しく報われる組織を増やしたい」という思いが、識学の根底にある。

