2025シーズンの振り返りから2026シーズンの抱負まで、FC町田ゼルビア・黒田剛監督のインタビュー記事をまとめてお届け! ※2026年3月掲載記事を再編。

1.J1町田・黒田剛「ピンチの際も、ブレずに軸を通すことがリーダーの役目」

――2025年4月6日、Jリーグ第9節を終えた時点では首位にいたものの、その後3連敗を期して暫定11位に後退。6月から8月にかけては8連勝で1位に返り咲きましたが、8月31日の第28節で川崎フロンターレに敗戦し、その後は2勝3敗4分けとなかなか勝ちきれませんでした。
黒田 J2では強度、トラジション、フィジカル、精神力で他チームを上回って優勝し、それらを強化して臨んだJ1初年度の2024シーズンは3位という結果を出せました。2025シーズンは、より高いクオリティーを目指そうということで、ボールを保持する時間やパスを繋ぐ機会を増やすなどのチャレンジをしたのですが、選手同士の連携はすぐにうまくいくわけではありません。
簡単なミスを誘発させてしまうなど、悪く出てしまったところはあったと思います。ただ、そうしたリスクを承知の上でのチャレンジでしたし、自分たちのサッカーをアップデートするために必要不可欠な選択だったと思います。
勝ちきれない試合が多かったのは、2023、2024シーズンがうまくいったがゆえに、選手の中に多少の慢心があったのではないかと考えています。どの選手も負けたいと思って挑むわけではないけれど、サッカーは一瞬の判断で勝敗が分かれるスポーツです。どこかで「これくらいで大丈夫」という気持ちの甘さや緩みが出ると、それが失点につながってしまいます。
とくにアディショナルタイムを含め75分以降の失点は、その要素が最も大きい。勝てなかった時期は、あの試合はA選手、この試合はB選手と、緩慢なプレーが日替わりで起こり、現実を受け入れられない状況が続きました。
2.町田・黒田剛「若手とベテランの融合なき組織はいつか限界を迎える」

――2025年リーグ終盤からチームの調子が少しずつ上向きになり、2025年11月22日に開催された天皇杯決勝では、2024年覇者・ヴィッセル神戸を破り、優勝しました。
黒田 2025シーズンにチャレンジした戦術が選手に浸透し、我々が理想としていたサッカーが現実味を帯びてきたこと、シーズン当初のコンセプトに立ち返るなどチームを再構築したこと、怪我人が戻ってきたこと。そうした要因が重なって、終盤チームが非常に良い状態になり、悲願だった初タイトルを獲得できました。
主力選手が怪我で離脱していた期間に起用した選手たちが成長したのも大きかったですね。慣れないポジションに取り組んでいた選手がフィットしてきたり、試合経験が少ない選手が場数を踏んで良いパフォーマンスを発揮してくれたり。結果的に選手層が厚くなり、チーム全体としてレベルアップしたのも、天皇杯優勝につながったと思います。
――確かに、林幸多郎選手、望月ヘンリー海輝選手、藤尾翔太選手といった若手選手が台頭してきた印象があります。
黒田 もともと力のある選手たちですが、キャリアがあるベテランや先輩たちと良い関係性が築けていたのが成長の一因でしょう。彼らに限らず、うちのチームは若手とベテランがうまく融合し、互いに切磋琢磨する土壌があります。
若い選手は、先輩からアドバイスを受け、その言動から学び、自信をつけることで、さらに成長する。ベテラン選手は、若手のパワーやエネルギー、自分たちとは違うメンタリティーに触発され、もう一段上にいく。その相乗効果が実感できたシーズンでもありました。
会社組織でも言えることですが、経験のあるベテランだけで成り立っているチームには、必ず限界が訪れる。チームが成長するには、ベテランと若手が融合し、化学反応を起こすことが必要なのです。組織は生きもの。マンネリ化していては停滞する一方ですから、手を変え、品を変え、ベストな方法を模索しながらコントロールすることが不可欠だと思います。
3.J1町田初タイトル、天皇杯優勝の裏側。黒田剛監督がしていたこと

――2025シーズン、リーグ戦は6位に終わりましたが、天皇杯では初優勝を果たし、アジア最高峰のクラブトーナメントACLEに初参戦中です。天皇杯のラウンド16が8月から始まり、ACLEは9月からスタートしましたが、すでにリーグ戦は優勝争いが難しくなった時期でした。選手のモチベーションはいかがでしたか?
黒田 天皇杯は8月27日に鹿島に勝ってベスト8まで進んだので、チームとしては「絶対にタイトルを獲る!」という気持ちで一丸となっていました。カップ戦のタイトル獲得は目標のひとつでしたし、クラブとしての悲願でしたからね。
ちょうど怪我人が戻って来たり、新たに起用した選手たちがフィットしてきたりと、チームの状態が好転していた時期で、いい具合に選手たちのモチベーションも高まっていました。ギアが一段上がったという感じです。そう考えると、前半苦しんだ時期がチームや選手にとって糧となり、より強いチームになれた結果、天皇杯を獲れたとも言えます。
もちろん、リーグ戦でも素晴らしい内容の試合もありました。優勝の目がなくなったといっても20チーム中6位です。簡単に得られる結果ではありません。我々はひとつでも順位をあげようと、全力で挑み続けました。それは、プロとして当たり前のことですし、そうでなければ応援してくださるファンやサポーター、スポンサーに申し訳ない。それに、全力で挑むからこそ取り組むべき課題が見つかるわけです。中途半端に力を抜いて得た順位は、次につながりません。
ACLEは、ヴィッセル神戸とサンフレッチェ広島を含む東西12クラブ、全24クラブが参戦し、FC町田ゼルビアは、6試合終えた2025年末時点でEAST2位につけています。正直、「もっとやれた」「勝たなければならなかった」という試合もありますし、ウチの力はまだまだこんなものではないという気持ちもありました。クラブ初のACLE参戦、最低でも8位以内(予選リーグ突破)と考えていましたし、選手たちはそれ以上(4位以内)という欲が出ていると思いますよ。
4.黒田剛「常勝軍団になるには24時間365日、自分をマネジメントすることが必須」

――いよいよ新シーズン開幕。明治安田Jリーグ百年構想リーグは、順位はつくものの、昇降格なしというイレギュラーなシーズンになります。昨シーズンは、リーグ戦5位以内、カップ戦のタイトル獲得、ACLEは8位以内を目指すという目標を掲げられていましたが、その設定はどのように決めているのでしょう。
黒田 高過ぎず、低過ぎず、チャンスがあればもっと上を狙うといった感じでしょうか。リーグ戦で優勝を掲げるのは簡単ですが、一度でも順位が2桁台で推移してしまうと、選手やスタッフのモチベーションを維持するのは、なかなか難しい。
でも5位以内であれば、暫定10位でもまだ狙える位置だし、5位につけていれば1位を狙うことも不可能ではない。モチベーションが急激に上がったり下がったりすることなく、みんなが、最後まで気持ちを切らさずに取り組めるような目標設定をすることが大事なような気がします。
もちろんJ1で常に首位争いを繰り広げられるような常勝軍団でありたいと思ってはいます。優勝というのは結果であって、後からついてくるもの。そこにこだわり過ぎず、まずは常勝志向、勝つための良い準備を目指すことが大切だと思っています。

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