100年構想リーグが開幕した2026Jリーグ。FC町田ゼルビアの2025シーズンは苦しい一年だった。怪我人の続出、黒田剛監督就任以降初となる3連敗…、6位に甘んじた2025シーズンを振り返りつつ、ピンチの際のリーダーの心得を聞いた。1回目。【インタビューをすべて読む】

気持ちの甘さや緩みがチームの停滞を招く
――2025年4月6日、Jリーグ第9節を終えた時点では首位にいたものの、その後3連敗を期して暫定11位に後退。6月から8月にかけては8連勝で1位に返り咲きましたが、8月31日の第28節で川崎フロンターレに敗戦し、その後は2勝3敗4分けとなかなか勝ちきれませんでした。
黒田 J2では強度、トラジション、フィジカル、精神力で他チームを上回って優勝し、それらを強化して臨んだJ1初年度の2024シーズンは3位という結果を出せました。2025シーズンは、より高いクオリティーを目指そうということで、ボールを保持する時間やパスを繋ぐ機会を増やすなどのチャレンジをしたのですが、選手同士の連携はすぐにうまくいくわけではありません。
簡単なミスを誘発させてしまうなど、悪く出てしまったところはあったと思います。ただ、そうしたリスクを承知の上でのチャレンジでしたし、自分たちのサッカーをアップデートするために必要不可欠な選択だったと思います。
勝ちきれない試合が多かったのは、2023、2024シーズンがうまくいったがゆえに、選手の中に多少の慢心があったのではないかと考えています。どの選手も負けたいと思って挑むわけではないけれど、サッカーは一瞬の判断で勝敗が分かれるスポーツです。どこかで「これくらいで大丈夫」という気持ちの甘さや緩みが出ると、それが失点につながってしまいます。
とくにアディショナルタイムを含め75分以降の失点は、その要素が最も大きい。勝てなかった時期は、あの試合はA選手、この試合はB選手と、緩慢なプレーが日替わりで起こり、現実を受け入れられない状況が続きました。

1970年生まれ。大阪体育大学体育学部卒業後、一般企業等を経て、1994年に青森山田高校サッカー部コーチ、翌年、監督に就任。以後、全国高校サッカー選手権大会3度の優勝を含む全国大会7度の優勝。2023年からFC町田ゼルビアの監督に就任し、2023シーズンはJ2優勝、2024シーズンはJ1 3位、2025シーズンは天皇杯優勝を果たす。著書、『勝つ、ではなく、負けない。 〜結果を出せず、悩んでいるリーダーへ〜』(幻冬舎)も好評。
――それを改善するために、どんな対策をとったのでしょうか。
黒田 シーズンに入る前に全員で共有したチームコンセプトを、選手だけでなくスタッフにも再認識させ、浸透させました。怪我人が続くなど、私自身、不安を感じることは多々ありましたが、だからといって、コンセプトや目指す方向が変わってしまったら、選手やスタッフからの信頼がなくなりますし、チームがバラバラになってしまう危険性もあります。
状況がどうであれ、チームの軸となるコンセプトを貫き、横道にそれてしまった時は原点に立ち返る。選手やスタッフにはそう言い続けてきましたし、そんな風にブレずに軸を通すことが、リーダーの役目だと思っています。
実際、2025年8月31日の敗戦以降1~2ヵ月は、コンセプトに基づいてチームを再構築することに追われていました。選手たちも、押していたにも関わらず、アディショナルタイムを含め、(試合開始から)75分以降に2失点して敗れた川崎フロンターレ戦はショックだったようで、あの試合を機に、チームの空気が変わりました。
「チームの勝利にマイナスの要因となるプレーはチームとして絶対に許容しない」というチームコンセプトに立ち返り、「緩慢なプレーや妥協は許さない」という意識を全員が再認識した結果、終盤にかけて持ち直すことができました。残念ながら、リーグ5位以内という目標には一歩届きませんでしたが。
ピッチで戦い続けるのがプロの責務
――2025Jリーグ開幕早々、センターバックの主軸である岡村大八選手と菊池流帆選手が怪我で離脱し、その後も断続的に怪我人が出ました。
黒田 確かに、レギュラー選手が怪我をして、やっと復帰してくれてチームが上り調子になったと思ったら、また別の選手が怪我をして、チームとして不安定な状況を繰り返しました。今振り返っても、地獄から天国に這い上がり、そしてまた地獄へ突き落されたような感覚で、まさに波乱万丈なシーズンでしたね。正直、悲観的な気持ちになったこともありました。
FC町田ゼルビアは、まだJ1参入2年目のシーズンで、とても選手層が厚いチームというわけではありません。怪我人が膨らんだ時には、不慣れなポジションであっても選手を何とかやりくりしながら起用するなどして、怪我をした選手の復帰を待つという時期が続きました。ひとりで3つくらいのポジションをこなした選手もいたくらいです。いろいろなポジションを担えるポリバレントな選手を育成することも、我々の今後の課題だと思っています。

――怪我は、監督自身ではどうにもできないことだけに歯がゆい思いもあったのではないでしょうか。
黒田 怪我には、不可抗力でしかたがないものもあれば、一瞬の不注意や日頃の準備不足など、自分が原因のものもありますので、試合に出られなかった選手には、より自分に矢印を向け、なぜそうなったのか、どうすれば避けられたかを考える必要があると思います。
いつも全力で応援してくださるファンやサポーター、スポンサーに対して、プロとして一番無責任なのは、“ピッチで戦えない”ことです。自分の責務を果たし、輝き続けるためにも、24時間365日、自分の身体をケアし、戦い続けられる身体をつくる。真のプロフェッショナルとは、そうした精神や思考の持ち主であるべきだと、私は思います。
常勝軍団といわれるチームは、怪我で離脱する選手が少ないといったタフさがあります。我々もそれを目指しているわけですから、今季は怪我人をなるべく出さず、シーズンを通して選手層を維持していきたい。なので、今シーズンのキャンプでは、「怪我をしない身体づくり」を課題に、この思考や考え方を選手にレクチャーすることから始めました。
責務を果たすために戦える身体をつくることは、サッカーに限らず、ビジネスの世界でも同じでしょう。感染症などの病気にかかれば、会社を休まなければいけないし、周りに迷惑をかけることになる。健康管理は、どんな世界であっても、プロとして最低限心がけることだと思います。
※次回は、2025シーズンFC町田ゼルビアは若手の台頭も目立った。第2回は、若手とベテランが切磋琢磨する黒田流起用について話を聞く。

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