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2024.09.07

J1大躍進のFC町田ゼルビア。太田宏介が語る、黒田監督の”効果的な言語化”の正体とは

「黒田剛監督の言語化能力は凄い!」。そう語るのは、太田宏介氏。だが、FC町田ゼルビア(以下、ゼルビア)のJ2優勝、現在のJ1快進撃の理由はそれだけはないという。太田氏は2022〜23年にゼルビアに在籍、J2優勝・J1昇格を置き土産に引退。現在は「FC町田ゼルビア アンバサダー」に就任し、クラブの発展を公私ともにサポートしている。生まれも育ちも町田の、生粋の町田っ子でもあり、2023年シーズンに間近で見てきた太田氏が裏側を語るインタビュー第1弾。新刊「勝つ、ではなく、負けない。」(黒田剛著)より一部抜粋。

主力、ベテラン、外国人、選手の区分けは一切なし!

現在、J1でも上位をキープするFC町田ゼルビア、率いるのは黒田剛監督。その采配や指導法は多くのメディアで取り上げられているが、間近で見ていた選手の告白は少ない。

太田宏介氏は2022年にチームに加入。2023年シーズンでは黒田監督の側で指導スタイルをあますところなく体験してきた。監督の新刊では初めて手腕の秘密が明らかにされているが、実際はどのようなものだったのか。太田氏が真っ先に挙げたのは黒田監督の”言葉のマジック”だ。

「監督の言語化能力がよく取り上げられていますが、お話や言葉自体が独特で面白いんです」

黒田監督の言葉は選手各自の心に響くものがある。的を射た指摘で一人一人の選手を奮い立たせる。ただし、試合でのミスに対する指摘、とりわけ失点に関連するものは本当に厳しいという。

「ミスに対して本当に厳しく指摘します。ミスや良くないプレーをした選手に『ここでこういうプレーをしては絶対にダメ』と忖度なくはっきりと伝えるのです」

多くのJリーグの監督は主力選手やベテラン、外国人選手に対して言葉を選ぶが、黒田監督はそういった区別をしない。忖度一切なし! だが、逆にそんな一貫した姿勢が若いZ世代など含めた多くの選手の心をガッツリと掴んでいる。

言葉のマネジメント力も素晴らしいが、黒田監督のこの徹底した平等性がいい方向に進んでいる。厳しいものの言い方に当初は戸惑う選手もいたようだが、全選手を平等に扱う姿勢が認識され始めると、選手たちに納得感と共感が生まれていった。

徹底した選手一人一人への「観察力」

選手との真摯なコミュニケーションを日々重ねる黒田監督。彼の放つ言葉の力が、チームの躍進を支えている大きな要因なのは間違いない。さらに太田氏は、もう一つの黒田監督の特徴を語る。それは、観察力。監督による指摘が選手のモチベーションを高めて奮起を促しているという点だが、肝心なのは指摘している内容だ。

「指摘され続けた選手が、次の試合で活躍することが不思議と多かったのを目の当たりにしました」

結果的にそういう選手が活躍する姿をシーズンを通して見てきて、黒田監督はそれを計算して選手にうまく発破をかけていたのだと太田氏は振り返る。

厳しい指摘も、各選手が現在抱える課題やウィークポイントを的確についていたもの。熱量のある言葉だけでは今の若い選手はついてこない。こういった面から日頃の観察力の高さも監督の能力の一つなのだ。

そして、太田氏自身は、もう一つの監督の特徴を見抜いた。それが独特のコミュニケーション力だ。

黒田監督独特の1対1コミュニケーション術

「普段の練習で選手と直接コミュニケーションを取るタイプではありませんが、練習後に気になってる選手を呼んで、1〜2分喋るのをよく見かけました。自分で発破をかけた選手の反応を見て、プラスに動く選手、マイナスに動く選手を見極め、それぞれに合ったコミュニケーション方法で、選手をコントロールし、モチベーションアップへ繋げているように感じました」

ベテラン選手であった太田氏にとって、黒田監督のアプローチは新鮮だったようだ。言葉のマネジメント、細やかな観察力、一人一人への接し方、こういったプロセスのひとつひとつが選手やチームにプラスに働くことが驚きであった。

監督を紐解いていくと、熱量とロジカルさ、厳しさと優しさ、定量と定性…相対するものの絶妙なバランスの上にあるのが「黒田剛」という存在なのかもしれない。高校サッカーで築きあげた能力は、プロの世界でさらに精緻(せいち)さを磨き上げていく。

次回へ続く。

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TEXT=上野直彦

PHOTOGRAPH=アフロ

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