PERSON

2026.01.26

若手が伸びない原因は「教えすぎ」――個性を育てるにリーダーはどうすべきか

放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、「エバース」「ヨネダ2000」をはじめ、多くの教え子を2025年M-1決勝に輩出した桝本壮志のコラム。

若手の個性を見抜く方法・潰してしまうポイント【NSC人気講師が伝授】

「人事のリーダーをしています。M-1などを見ていると、同じ漫才でも、個性や持ち味の差別化がすごいなと感じます。芸人さんの学校で実践している、若手の個性の見抜きかた、伸ばしかたのコツがあれば教えてください」という相談をいただきました。

対談やインタビューでも、「若手の個性の見抜きかたは?」という質問をよく受けます。

とくに驚かれるのは、いま人気芸人たちがメディアでやっていることを、「すでにNSC時代からやってもらっていた」と伝えたときです。

例えば、選挙特番などに引っ張りだこの、山本期日前という教え子は、10年前のNSC在学時から、注目の選挙区や政治家トリビアを授業中に語ってもらっていました。

また、都市伝説界隈で人気の、オーラが見える芸人・シークエンスはやともには、12年前からオーラ鑑定を。

コントが漫画化され、キュレーションにも定評のあるレインボーのジャンボには、14年前から毎月1冊おすすめの漫画を教えてもらい、購入していたのです。

なぜ、のちに「強み」となる個性にイチ早く気づくことができたのか? 今回は「若手の個性の見抜きかた、伸ばしかたのコツ」をシェアしていきたいと思います。

過剰なインプットは、個性をつぶすトッピングです

まず、皆さんは、若手が出す企画案やパフォーマンスが物足りないと感じたとき、どのような指導をしていますか?

「インプットが足りていないからだ」と決めつけ、あれこれ研修を開いて、企画書の作りかた、コミュニケーション能力の高めかたなどのメソッドを詰め込んでいませんか?

ココイチの野菜カレーに、ソーセージやカキフライをトッピングしていくと、野菜の個性が消えてゆくように、過剰なトッピングは「本来の持ち味」を奪うことがあります。

なので僕は、ネタの作りかたや漫才のやりかたを詰め込むのではなく、「なぜ、そのパフォーマンスになっているのか?」「そこに至る源泉は何なのか?」を丁寧に探っていく。

つまり“若手のバックボーンを、こちらがインプットしていく”マインドで育成をしているのです。

例えば、令和ロマンはNSC在学時から、漫才のツカミで、ボケのくるまが、相方・ケムリの容姿をイジっていました。ウケないこともあったのですが、必ずやるのです。

多くの指導者はその様を見て、「やめたら?」「別のやりかたにしたら?」と指摘するでしょう。

しかし、視点を彼らのバックボーンに移し、対話をしていくと、2人は大学の先輩・後輩の間柄であること、後輩が先輩をイジる「失礼な笑い」が、漫才の下敷きになっていることが分かってくる。

そして、彼らの個性は「やんちゃな後輩が、懐の深い先輩を困らせていく笑いにある」ことに気づき、それを言語化して本人に伝えることで、心の握手が生まれ、お互いの「方針」が醸成されていくのです。

桝本流「若手から個性のヒントを差し出すゲーム」

私たち指導者は、よく1on1ミーティングで若手の内面に迫ろうとしますが、僕の知見だと“内面を探るプロフェッショナルは、上司でなく同世代”です。

上役が「壁打ち」の相手になるよりも、同世代で「ボール回し」をしてもらい、それを観戦したほうが、より内面や個性を知ることができるのです。

僕の授業では、若手の個性をつかむために簡単なトークゲームを取り入れています。それはこのようなシステム。

  • ①一同に自分のスマホを持ち寄ってもらう。
  • ②同世代のMC役が「お題」を出す(「私のアオハル(青春)」「これにお金を使ってます」など、バックボーンにつながるもの)。
  • ③自分のスマホの写真フォルダから、お題に合う画像を探し、それを見せ合いながらトークする。

このようにミニゲーム化することで、おのずと自分の過去や、お財布事情を語ってくれますし、「青春」や「お金」は、バックボーンやパーソナルといった「個性」につながりやすい利点もあるのです。

観戦によって入手した個性のヒントは、こっそりメモにしておき、しかるべきタイミングで、「サッカー経験者なんだから、スポーツ系の企画を考えてみたら?」「推し活にお金かけてたよね? 今度のグッズ開発にアサインしていい?」などと、ここぞというときに「行動のテコ」にしてみる。

これが、僕が日ごろ実践している若手の個性を見抜く、伸ばしていくコツなんですね。

では、また来週、別のテーマでお逢いしましょう。

桝本 壮志/Soushi Masumoto
1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出。
新著『時間と自信を奪う人とは距離を置く』が絶賛発売中!
桝本壮志へのお悩み相談はコチラまで。
※2026年2月7日、「広島 蔦屋書店」にて桝本壮志のトークイベントを開催。詳細はコチラ

COMPOSITION=古澤誠一郎

TEXT=桝本壮志

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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