PERSON

2026.01.05

ミッキー・カーチス「死ぬまで生きる」【和田秀樹対談⑤】

ロカビリー歌手、音楽プロデューサー、作詞家、俳優、レーサー、落語家、画家。常に変化し続けるミッキー・カーチスさんと医療の壁に挑み続ける和田秀樹さん。反骨同士の対談は静かで熱い“ロック”だった!【対談5回目

87歳ミッキー・カーチスと和田秀樹

年を取るってことは、できることとできないことが分かれる。でも諦めるんじゃなく、残ってることをやってみるのが大事

ミッキー この間、名寄で落語をやったの。そしたらもう。

和田 喜ばれた?

ミッキー うん。

和田 でしょうね。地元で本物の真打の落語を聞く機会なんてめったにないでしょうし。

ミッキー ないからね。だけど座ったらね、立てないの。

和田 あー。

ミッキー 正座できないから。

和田 いやあ、難しい。

ミッキー で、立てないのが立川流とか言って。

和田 (笑)。でも、これはすごい大事なことだと僕は思っていて。年を取るってことは、できることとできないことが分かれることなんですよ。

ミッキー まあそうだよね。

和田 元気な人が左半身動かなくなるとか。絵は描けるけど頭はボケてるとか。いろんなことが、いろんなカタチでちょっとずつできなくなってくる。

ミッキー 俺みたいだね(笑)。

和田 だけど、できることはまだ残ってる。だから、できなくなったときに諦めるんじゃなくて、残ってることをやってみるのがすごい大事だと思うんです。体は不自由だけど料理だけはできるとかね。

ミッキー 横尾忠則さんだって毎日描いてるんでしょ。俺より1つ年上だけど。

和田 恐ろしく元気ですよ。

ミッキー あの人は年中よみがえってるよね(笑)。

和田 そうですね(笑)。

ミッキー 耳がだめなんだって言ってた。

和田 そうです。耳がだめだから、かえって絵に集中できるんじゃないですかね。

ミッキー 横尾さん、俺の最初のレコードのジャケットの絵を描いてくれたんだよ。

和田 え、そうなんですか。

ミッキー だからもう60年代から知ってる。横尾さんは寺山修司なんかと一緒にやっててね。「天井桟敷」って劇団で。

和田 才能豊かな人の集まりだ。まあ僭越ながら僕が言えるのは、調子悪くてもいろんなことを続けられるってことです。調子悪くなったから引退するとか、手足が動かなくなったから引退するって言うんじゃなくて。

ミッキー だって口で描いてる人もいるもん。

和田 そうですよ。僕の知り合いにもALSって怖い病気になった人がいて。手足全部が動かない。それでも目で本を書いてますよ。

ミッキー 画家のアンリ・マティスなんかもそうだよね。病院で奥さんに全部色を調節させて。切り抜きやって。晩年はね。

和田 命が果てるまでやり続ける。何かができなくなったからやめたと言うんじゃなくて。

ミッキー 死ぬまで生きようとする。

和田 そうなんです。それができたら素敵だと思います。なかなかできないですけどね。

和田秀樹
和田秀樹/Hideki Wada
精神科医・幸齢党党首。1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒業後、同大附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー等を経て、和田秀樹こころと体のクリニック院長に。『80歳の壁』『幸齢党宣言』など著書多数。

考えないことの大事さ。思考を縛らない

和田 とてもカラフルな絵ですが、色の組み合わせはどんなふうに考えるんですか。

ミッキー 考えない。何を描こうかっていうのは前の晩に考えて。明日はヤギ描いちゃおうとかね。その色が夢の中に出てくる。それで描く。だからあてずっぽう。

和田 あてずっぽう(笑)。ミッキーさんはもともと自由闊達な人なんでしょうけど、年を取るほど自由が出てきている。それが素敵ですよね。縛られちゃう人も多いから。

ミッキー (右手を広げて見せながら)若いときって、こう、尖ってるじゃないですか。年取ると丸くなったねって言われるでしょ。だけど丸くなったんじゃないんだよね。尖ってる間が埋まっていくんだよ。だから丸くなったように見える。

和田 なるほど。素敵な言葉ですね。尖がった指と指の間をいろいろな経験が埋めていくんですね。とてもいい話です。

食事はつらいよ

和田 食事で気をつけてることはありますか?

ミッキー ん、食事? 食事が一番辛いんだよ。喉を通らなくなって。

和田 あ、そうか。

ミッキー だから結局、食べやすいものを。

和田 手足だけじゃなく声帯の筋肉とかも片側をやられちゃったんですかね。

ミッキー そうです。

和田 大変ですよね。

ミッキー ゼリー状のものとか。カレーライスばかり食ってるよ。

和田 味はわかりますからね。

ミッキー まあ。

和田 医者にもいろいろとうるさいこと言われるでしょ?

ミッキー 言われてない。俺、聞かないから(笑)。

和田 (笑)。いいことです。聞いたら余計に元気がなくなりますから。

ミッキー・カーチス
ミッキー・カーチス
ミュージシャン・俳優。1938年7月23日生まれ。1958年、第1回「日劇ウェスタン・カーニバル」でロカビリー三人男としてブームを巻き起こし、同年、映画『結婚のすべて』で俳優デビュー。日本初の音楽プロデューサーとしてガロやキャロルなどを世に送りだす。ハーモニカや養蜂など幅広い趣味も。自伝書に『おれと戦争と音楽と』。

病気でも生きている。そして最後は死んでいく

和田 じつは僕も医者のくせに、医者の言うことを聞かないんです。だけど最近、人生で初めて医者の言うことを聞くようになって。

ミッキー どうしちゃったの。

和田 前立腺肥大でおしっこが出なくなって。薬で調整しながら手術を待ってるんだけど。

ミッキー 俺も同じ。前立腺の薬飲んでる。

和田 だけど困ったことに、前立腺肥大の手術ができないんですよ。糖尿病が悪いからって手術をしてくれない。血糖値が下がるまで手術は見送りだと言われて、お酒を我慢させられ、飲みたくない薬も飲まされて。

ミッキー (笑)。

和田 そうやって嘘をついてでも手術を受けないと。だっておしっこが出ないのは辛いから。だから仕方なく医者の言うことを聞いて、血圧とか血糖値を下げてる。でもそうすると、一日中眠いんですよ。

ミッキー 俺はすごい頻尿。医者の不養生ってやつだね。

和田 そうなんですよ。不養生を貫いてたらこういうことになって。だから来月までは修行だと思ってとにかく我慢します。

ミッキー (笑)。

和田 でもね、僕の場合は手術まで1ヶ月くらいだから我慢できる。だけど一生あれ食べちゃだめ、酒を飲んじゃだめなんて言われたら僕は耐えられない。でも医者は患者に平気でそれを言うわけですよ。そして患者さんはそれに従う。残酷ですよ。僕はそれが信じられなかったんだけど、今回自分が我慢して、余計に信じられなくなった(笑)。

ミッキー (笑)。山田五郎はさ、がんだって言いながらタバコ吸ってんだよね。

和田 タバコのせいでがんになることはあるけど、タバコのせいでがんが悪くなるって証拠はないですからね。

ミッキー ないんだよ。養老先生なんかもタバコ吸うでしょ。

和田 そうそう。

ミッキー 吸わなきゃがんになるぞって言って。それで自分は吸ってがんになってんだ。

和田 そう。でもちゃんと元気に生きておられるから。そして誰だって最後は死にますから。

※6回目に続く

TEXT=山城稔

PHOTOGRAPH=鈴木規仁

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