PERSON

2025.05.26

仲直りの達人「コンビ芸人」から学ぶ、険悪になった相手との関係修復のコツ

放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出した・桝本壮志のコラム。

吉本NSC人気講師・桝本壮志

「仕事の方針をめぐって仲たがいして、関係が険悪になった人がいます。『そろそろ仲直りしたいな』と思っているのですが、なかなか難しく……。職場での仲直りのコツを教えてください」という相談をいただきました。

仲たがいは十代の限定イベントと思いきや、社会人になってからも訪れる生涯イベント。

幼少期のように手が出る「喧嘩」ではなく、お互いがトゲトゲしたまま距離をとってスルーし合うので、仲直りのハードルがどんどん上がっていくんですよね。

そこで今回は、険悪や疎遠になった人と仲直りしたいと感じている社会人の皆さんに、僕なりの「大人の仲直りのコツと思考」をシェアしていきたいと思います。

社会人の仲直りツールは「頭」でなく「手」

僕は30年以上にわたり、テレビ局、制作会社、教育現場、一般企業に出向いてコンテンツを創ってきましたが、どの現場でも「仲たがい」を目にしてきました。

プロジェクトを束ねてきたトップ二人が急に口を利かなくなったり、一緒に起業した学友が決別したり、二大看板の司会者がCMに入ると目を合わせなくなったり……仕事の数だけ不仲があることを学んできました。

職場での仲たがいの辛さは「近くにいる」こと。気にしないようにしていても、会議で顔を合わせたり、エレベーターで鉢合わせしたりするので、そのつどイライラして、仕事意欲や集中力を減退させていきますよね。

そんなとき、多くの大人は頭でいろんなことを考えます。

  • 「さっきのツンとした顔はなんだよ!」
  • 「そっちが悪いんだから、そっちから歩み寄れよ!」
  • 「次に会ったら、こっちが無視してやろう」

……などと、心がかき乱れていきます。

しかし、そんなイラ立ちを感じたときに大切なのは“方向転換をするのは自分だ”という思考です。

いくら目つきや仕草が鼻についたとしても“相手をコントロールすることはできず、唯一できるのは自分のコントロールのみだから”です。

大ヒットしたドラマ『梨泰院クラス』の中で、堅物な主人公と仲たがいした女性が、洗濯物を協力して干そうとするシーンがあります。

この“あれこれと頭で考えるよりも一緒に何かをやってみる”という、「頭でなく手を動かす」行動こそ、僕は仲直りの最適解ではないかと思っています。

同じ職場にいる者どうしだからこそ、資料の配布や掃除など、軽作業でいいのでシンプルに一緒に手を動かすことからリスタートしてみる。

この頭でも言葉でもなく、手を使った「単純なミラーリング」は、誰もがすぐにできる方向転換ですし、けっこう効果があるのでおススメです。

社会人は「仲直り」でなく「仲直し」を目指す

お笑い芸人コンビは、鼻っ柱の強い二人が仕事や運命を共にするので、しょっちゅう仲たがいをしています。

とくに兄弟コンビの衝突ぶりは凄まじく、楽屋にいる芸人全員で喧嘩を必死に止めた……なんてエピソードもあります。

しかし、芸人さんは仲たがいも多いけど、関係修復のスペシャリスト集団でもあります。

僕はそこに2つのスキル、「アウトソーシングの上手さ」と「仲直りよりも仲直しの精神」があると思っています。

芸人コンビがAとBの意見で対立したとき、彼らは決まって第三者の芸人、作家、マネージャーなどに、「これについてどう思う?」とアウトソーシングして、意見Cを机上にのせます。

本音をぶつけ合うときは、あらかじめ第三者を同席させ、二人だけでぶつからないようにする“状況づくり”の上手さがあるんですね。

さらに、彼らの関係修復は「仲直り」というより「仲直し」に近い。つまり、時間となりゆきに任せてゆく「仲直り」でなく、化粧直し、口直し、世直し、のように“今ここで直すぞ”といった使命じみたものがあるんです。

これは、1日に10ステージもの舞台に上がり、一緒に笑いをとらなくてはならない稼業だからこその知恵とイズムなんですね。

私たちビジネスパーソンも、共に一つの目標やプロジェクトに向かって進んでいる者どうし。ときには互いの感情は横に置き、まずはビジネスライクな環境をつくることも社会人にとって必要なことではないでしょうか。

ではまた来週、別のテーマでお逢いしましょう。

桝本 壮志/Soushi Masumoto
1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出。

COMPOSITION=古澤誠一郎

TEXT=桝本壮志

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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