放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出した・桝本壮志のコラム。

「会議の場で、考えていることはあるのに上手く発言できません。もうすぐ新入社員も入ってくるので焦っています。たくさん番組会議に出てきた桝本さんは、若手にどんなアドバイスをされていますか?」という御相談をいただきました。
分かります。若手のころは僕もそうでした。意見やアイデアはあるのに上手く発言できない、話せない。声のデカい人や、どんな話題にも口を挟んでくる調子のいい人に圧倒され、気づけば一言も発しないまま散会に……、会議の悩みは尽きませんよね。
そこで今回は、これまで200以上の番組会議に出て、現在も週間40以上の会議をこなしている僕が、「会議でうまく発言できない若手の共通点」をシェアしていきたいと思います。
「会議」は社会人になってから習う「未学習の科目」
まず、若手に「会議で上手く話せないんです」と相談されたら、僕は「学生時代に、会議の授業なんて無かったんだから当然でしょ」と答えています。
国語で語彙力、数学で問題解決能力、道徳で人間力などは身につけてきたけど、会議のやりかた、こなしかたは未学習なので上手く立ち回れないのは当たり前。
会議は、社会人になってから始まる新しい科目のようなものなので、「今」「ここ」から学んでいけばいいんです。
安心してください。あのスティーブ・ジョブズだって、CEOになったあとも丸2日かけてプレゼンの練習をしていましたし、堂々と会議をこなしている上司たちも同じ道を通ってきた「元会議ビギナー」です。
二十歳になった人が、お酒で失敗をしながら「自分に合った酒量を覚えていく」ように、あなたも“失敗しながら自分に合った会議パフォーマンスを身につけていけばいい”のです。
会議は「13文字」を意識して発言する
しかし、会議に不慣れな人には、早めに気づいておくべき「やりがちな共通点」があるので、今回は2つほどシェアしていきましょう。
まず1つ目は“意見が「演説」や「早口」になってしまう”です。
発言のチャンスが限られるポジションでは、自分のターンになると、長々と演説をしてしまったり、緊張から早口になり同じことを繰り返してしまったりするケースが頻発します。
そんな方は“13文字のブレス”を意識してみてください。
これは約10年前から、僕がテレビ出演時やSNSで明かしてきたテクニックですが、報道番組のニュースタイトルやトピックスは、すべて13文字以内にまとめられています。以前はYahooニュースも13文字でした(現在は15文字)。
これは“世の中で起こる事象は、すべて13文字内でまとめることができる”ということですし“ひと息で語れる文字数でもある”ので会議テクニックとしても有用です。
自分の発言が「演説や早口」になっている自覚がある人は、最初は言葉がまとまっていなくてもいいので、「13文字くらいを“ひとかたまり”にして話してみよう」「13文字くらいで息づぎをしてみよう」と心がけて、会議に臨んでみてください。
リズムとブレスに慣れてくると、落ち着きと余裕が手に入るはずです。
相手の「関心をひく」から「関心を持つ」にシフトする
2つ目は“関心を引くことに終始してしまう”です。これは僕にも経験がありますが、とくに若手は「有能な人材に見られたい」という承認欲から、さも雄弁に語ったり、大袈裟な手ぶりをつけたりしがち。
なかには、YouTubeで見かける若きIT社長を模倣したような振る舞いや、流行りの構文を引用する人も散見されます。
そこに共通しているのは“関心を引いて、早く信頼されたい”という感情ですが、会議チームが求めているのは、まずは「信頼できる人」でなく「信用できる人」だということを知らなくてはなりません。
信頼とは「個人の主観で相手を信じること」で、信用は「社会的な視点で相手を信じること」。
そう、最初は「個人ではなく、組織として信用できる人」を求めているので、「関心をひく」は第2章に構成して、まずは「相手に関心を持つ」という第1章をこなしてみる。
人は「関心をひこうとする人」よりも「自分に関心を持ってくれる人」のほうを、同じ組織の仲間として信用しやすいからです。
チームの成員に興味を持ち、傾聴してみると、第2章の解像度が上がるのでこちらもおススメです。
ではまた来週、別のテーマでお逢いしましょう。

1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出。