食にいっさい妥協のない美食家たちが選んだ、最上級のB級グルメから「カレー」をまとめてお届け! ※GOETHE2024年2月号掲載記事を再編。 【特集 最上級のB級グルメ】
1.緑町 生駒「麻婆カレー飯」
推薦人 ▶︎ 作詞家・秋元康氏
ゲーテ本誌の人気企画、ゲーテイストでは“美食四兄弟”の次男として、幅広いジャンルの店を紹介。「1日1食たりとも無駄にはしない」というほど、食べることに並々ならぬ情熱を注ぐ秋元康氏の本能を揺さぶる、最上級のB級グルメとは?
最近、心を揺さぶられた店として教えてくれたのは、JR錦糸町駅からクルマで10分ほどの場所にある「緑町 生駒」。店構えは気さくな町中華そのものだが、夜はなんと来年の3月まで予約がびっしり埋まっているというから驚きだ。
町中華には常連客のふとした言動によって生まれる“名作”があるが、ここの名物、麻婆カレー飯もそのひとつ。店主の小池光雄さんと息子の秀弘さんが、常連客がカレーに別注文した麻婆豆腐をかけて食べているのを見て、なんとかカレーと麻婆豆腐をひと皿に“合い盛り”にできないものかと試行錯誤を重ね、いまでは訪れる多くのお客がこれを頼むほどの人気メニューに。
「ただカレーと麻婆豆腐をご飯にのせただけではなく、それぞれの個性を生かした味のバランスに感動します。生駒は、ほかに皿しゅうまいという肉餡に皮を貼った料理もあるのですが、こちらもインパクトがすごい。テーブルに運ばれてきた瞬間に『わー、すごい!』ってみんなが驚くんです。“麻婆カレーご飯”とか“皿しゅうまい”と聞いて想像する料理をはるかに上回ったビジュアルと美味しさに圧倒されます」
2.カレーの店 プーさん「野菜あさりカレー」
推薦人 ▶︎ トランジットジェネラルオフィス代表取締役社長・中村貞裕氏
国内外を飛び回り、現地で人気のレストランの東京進出をバックアップしている中村貞裕氏。スクランブルエッグやリコッタパンケーキが有名な『bills』やハワイ好きなら知らないひとはいない『THE PIG & THE LADY』など、日本に新たな食文化を広めてきた中村氏が、東京の滞在時にほっとひと息つく店とは?
中村氏が子供の頃から通っているというのが、武蔵小金井の『カレーの店 プーさん』。
「幼馴染の家が近所だったので、ある意味ホームといえるかもしれません。ここでは野菜あさりカレーを注文するのですが、スパイス使いが妙にクセになるんです。このカレーも人生で何度食べたかわからないです(笑)」
多種の野菜、果物をベースにしたソースと20種以上のスパイスを使用し、油を使わずに仕上げるカレーは体が浄化されるような滋味も感じられる。肩の力がふっと抜けるような店名は、1980年の創業当時に先代が「女性も気軽にひとりで入れるお店に」と考えたという。テーブルに運ばれてくるカレーを見ると、素揚げやボイルした野菜がたっぷり。彩りも美しく、細部にまで店主の真心が感じられる。
「カレーのあとはデザートにアイスクリームが出てくるのですが、これもしゃりしゃりとした食感で美味しいんです」
3.珊瑚礁 本店「ビーフカツカレー」
推薦人 ▶︎ ダイニングイノベーショングループ Founder・西山知義氏
“飲食業界の神様”として同業者からも、その動向につねに注目が集まる西山知義氏。類まれなる先見の明を持ち「炭火焼肉酒家 牛角」や「しゃぶしゃぶ温野菜」「焼肉ライク」「イタリアンキッチンVANSAN」「やきとり家 すみれ」など、ヒットさせた飲食ブランドは数しれず。常識にとらわれない店づくりで日本の外食文化に新たな価値をもたらしてきた。
カレー好きな西山氏が「歴史とロマンを感じる鎌倉グルメ」というのが「湘南珊瑚礁 本店」のビーフカツカレーだ。いまでは全国にその名を馳せる鎌倉グルメの老舗だが、西山氏の心を惹きつけた理由は?
「もともとは牛乳を販売する店からスタートし、乳製品をたっぷり使ったカレーを出し始めたと聞きました。夜は外観に松明が灯って、それも鎌倉の名物風景のひとつだと思いますが、時代に合わせてレシピをすべて見直しているというカレーの味は素晴らしい完成度です。フルーツの甘みとバターを使ったソースがすごく濃厚。中がレア気味になるように揚げられたビーフカツもくどさがまったくなくて美味しい」と西山氏。
4.インデアンカレー「インデアンカレー タマゴ入り」
推薦人 ▶︎ フリーアナウンサー・高橋真麻さん
高橋真麻さんが「大阪のグルメ番組のスタッフさんから教えてもらって以来通っている」と言う「インデアンカレー」は、1947年に大阪で創業したカレー専門店。
戦後の不況下に「活力のある美味しいものを出したい」という思いから考案されたカレーは、多種のスパイスと野菜、フルーツ、選び抜いた肉でつくられる。特徴はひと口食べると懐かしい甘さが舌に広がり、ホッとした途端に辛さが弾ける、意外性のある味わい。
「何度食べても味の秘密が解明できないところに惹かれるんです。口に入れた瞬間は甘いのに、次に辛さが来て、最後はほどよい中辛になるのはどうしてなのか? まさに唯一無二のカレーですね。付け合わせのキャベツのピクルスもカレーとばっちりの相性で美味しいです」
毎回注文するのは生卵をのせた「タマゴ入り」。途中で卵を混ぜると、辛さが和らぐ。口内でジェットコースターのように変化する、創業以来の味はカレー好きを惹きつけてやまない。
5.焼肉一七三「牛すじインドカレー」
推薦人 ▶︎ 稲本健一氏
飲食業界のカリスマ、稲本健一氏が今回挙げてくれた東京・恵比寿に店を構える「焼肉一七三」は5年前のオープンと比較的新しい店ながら、稲本氏の胃袋をガッツリつかむ、とっておきのメニューがある。それが、店主が大阪在住のインド人にオーダーしているという「牛すじインドカレー」。
「甘みとスパイスが絶妙にマッチした、完全なる王道の大阪カレー。二日酔いの翌日、必ずといっていいほど食べたくなります」
そのココロは、「カレーに使われているターメリック=ウコンは、肝臓の保護や二日酔いを引き起こすアセトアルデヒドの代謝を助ける成分があるから」。