最上級のB級グルメとは何か。食にいっさい妥協のない9人が偏愛する逸品を紹介する。今回は、飲食業界のカリスマ・稲本健一氏が「“特級”グルメ」と絶賛するB級グルメ。 【特集 最上級のB級グルメ】
おいしさの歴史を手頃な価格で体験できる“特級”グルメ
飲食業界のカリスマ、稲本健一氏が今回挙げてくれた3店のうち2店は、自身が30年、40年と通い続ける“歴史のある”店。
「移り変わりの激しい飲食業界で何十年も店を守り続けていられるのは、味や接客に定評があるから。その歴史を安価に体験できるのだから、ものすごくお得。B級ではなく特級、いや、最上級グルメですよ」
そのひとつが、「飲んだ後の〆は、たいていここのラーメン」と足繁く通う「博多麺房 赤のれん 西麻布本店」。創業1978年、東京における豚骨博多ラーメンの先駆けとされる人気店だ。
「まず水餃子でビール中瓶を1本飲んだ後、ミニラーメンをオーダーして食べる。これが、もう20~30年続くルーティーンですね」
稲本氏いわく、「豚肉に多く含まれるアラニンと小麦粉に豊富なグルタミン酸は、アルコール分解に必須の栄養素」。おなじみの“飲んだ後にラーメン”というのは、理にかなっているというわけだ。
「つまり、B級グルメとお酒は切り離せない関係ということ。もっとも、それは後づけで、通う一番の理由は、おいしいからですけどね(笑)」
もう1店は、故郷・石川県金沢にある「宇宙軒食堂」。
店内中央にすえられた鉄板で、薄切りにした豚バラ肉をカリっと焼き上げ、キャベツの千切りの上に豪快にのせた「とんバラ定食」は、稲本氏にとって「中学生の頃から食べ続けているマイB級グルメの王道」。
「帰省するたびに食べていますが、秘伝のタレは40年前からまったく変わっていませんね。ご飯が何杯でも食べられる魔法の味です」
東京・恵比寿に店を構える「焼肉一七三」は5年前のオープンと比較的新しい店ながら、稲本氏の胃袋をガッツリつかむ、とっておきのメニューがある。それが、店主が大阪在住のインド人にオーダーしているという「牛すじインドカレー」。
「甘みとスパイスが絶妙にマッチした、完全なる王道の大阪カレー。二日酔いの翌日、必ずといっていいほど食べたくなります」
そのココロは、「カレーに使われているターメリック=ウコンは、肝臓の保護や二日酔いを引き起こすアセトアルデヒドの代謝を助ける成分があるから」。
B級グルメとお酒の関係は、かくも深い。
稲本健一が胃袋をガッツリつかまれたB級グルメ3選
1.飲んだ後はここで〆ないと落ち着かない
博多麺房 赤のれん 西麻布本店「らぁめん」
丁寧に下処理をした豚骨を用い、五右衛門釜で1日かけて出汁をとった純豚骨スープは、こってりした味わいながら、醤油ダレを合わせることで後味はさっぱりと。コシのある平打ち極細麺もスープとの相性抜群。
博多麺房 赤のれん 西麻布本店
住所:東京都港区西麻布3-21-24 ARUGA 1F
TEL:03-3408-4775
営業時間:11:00~翌5:00
定休日:日曜
席数:27席
2.40年変わらぬ特製ダレは白飯が何杯でもイケる魔法の味
宇宙軒食堂「とんバラ定食」
肉自体には味つけがされておらず、野菜や果物、数種類の味噌をブレンドした特製ダレをつけて食すスタイルだが、「タレをとんバラの上にぶっかけ、最後は皿いっぱいにたまったタレをご飯にかけて食べる」のが稲本流。
宇宙軒食堂/Uchukenshokudo
住所:石川県金沢市片町1-5-29 ニュー銀座会館1F
TEL:076-261-8700
営業時間:11:00~15:00、17:00~21:00
定休日:火曜
席数:22席
3.甘味とスパイスが絶妙にマッチする王道の大阪カレー
焼肉一七三「牛すじインドカレー」
カウンターに設置されたロースターで、煙をあげながら肉を焼く“大阪下町スタイル”の焼肉店。
稲本氏が「牛すじインドカレー」を食すのは焼肉の〆として。
「そのままでも最高においしいけれど、最後に焼肉のタレをかけて味変させると、うまみがさらにアップしておすすめです」
焼肉一七三
住所:東京都渋谷区恵比寿西1-9-2 ヤマビル1F
TEL:03-6277-5528
営業時間:15:00~翌4:00(日曜13:00~22:00、月曜15:00~24:00)
席数:26席
稲本健一/Kenichi Inamoto
1995年ゼットンを設立。国内外に人気の飲食店を多数展開。そのほか、サウナ& プールリゾートホテル「BOTANICAL POOL CLUB」など、話題の施設も手がける。