最上級のB級グルメとは何か。食にいっさい妥協のない9人が偏愛する逸品を紹介する。今回は、作詞家・秋元康氏が「本能が欲する食べ物」と絶賛するB級グルメ。 【特集 最上級のB級グルメ】
僕のなかにB級グルメはありません
ゲーテ本誌の人気企画、ゲーテイストでは“美食四兄弟”の次男として、幅広いジャンルの店を紹介。「1日1食たりとも無駄にはしない」というほど、食べることに並々ならぬ情熱を注ぐ秋元康氏の本能を揺さぶる、最上級のB級グルメとは?
「カレーとか町中華とか、焼肉もそうですが、僕のなかにB級グルメというものはありません。もちろん、親しみを込めた呼び方のひとつだと思っていますが、職人や料理人が全身全霊でつくる食べものをそんなふうにカテゴライズすることはあまりしません。
たとえば、町の中華屋さんで皮から丁寧につくられる餃子やじっくり時間をかけて煮込んだカレーをB級というのはなんだか違和感があります。もし、僕のなかでB級グルメというものがあるのだとしたら、それは目の前にあったら手が伸びてしまうような、本能が欲する料理なのだと思います」
最近、心を揺さぶられた店として教えてくれたのは、JR錦糸町駅からクルマで10分ほどの場所にある「緑町 生駒」。店構えは気さくな町中華そのものだが、夜はなんと来年の3月まで予約がびっしり埋まっているというから驚きだ。
町中華には常連客のふとした言動によって生まれる“名作”があるが、ここの名物、麻婆カレー飯もそのひとつ。店主の小池光雄さんと息子の秀弘さんが、常連客がカレーに別注文した麻婆豆腐をかけて食べているのを見て、なんとかカレーと麻婆豆腐をひと皿に“合い盛り”にできないものかと試行錯誤を重ね、いまでは訪れる多くのお客がこれを頼むほどの人気メニューに。
「ただカレーと麻婆豆腐をご飯にのせただけではなく、それぞれの個性を生かした味のバランスに感動します。生駒は、ほかに皿しゅうまいという肉餡に皮を貼った料理もあるのですが、こちらもインパクトがすごい。テーブルに運ばれてきた瞬間に『わー、すごい!』ってみんなが驚くんです。“麻婆カレーご飯”とか“皿しゅうまい”と聞いて想像する料理をはるかに上回ったビジュアルと美味しさに圧倒されます」
もうひとつ、秋元氏が長年通い続ける“本能が求める味”は、静岡県・熱海に。
「お昼どきは行列ができる『中国菜室 壹番』には、ときおり無性に恋しくなる餃子があります。食べることが好きなメンバーで新幹線にのって餃子の旅に出かけたことも。僕はそういう“大人の遠足”がとても好きなのですが、みんなでちょっとだけ足を伸ばして美味しさを共有する体験はどれも思い出深いです」
水ではなく、スープでパリッと焼きつけた薄皮とジューシーな餡のコンビネーションが考え抜かれた餃子は秋元氏も、世界一と太鼓判を押す。「予定調和ではなく、そこにしかない味があること」。秋元氏の心を夢中にさせるのは、きっとそういう店なのだろう。
秋元康の胃袋を掴む最上級のB級グルメ
1. 食いしん坊のツボをついた強烈ハイブリッドに感嘆!
緑町 生駒「麻婆カレー飯」
常連客がカレーに、別注文した麻婆豆腐をかけて食べていたのを見た店主が試行錯誤を重ねて考案。
カレーは片栗粉で少しとろみをつけることで、中国山椒をきかせた麻婆豆腐との一体感を出している。排骨のせは¥1,300、排骨なしは¥950。
緑町 生駒/Ikoma
住所:東京都墨田区緑4-6-1 パークホームズ錦糸町エアヴェール 1F
TEL:03-3633-4089
営業時間:11:30~L.O.13:00、18:00~L.O.20:20
定休日:火・土曜ランチ、水曜
席数:24席
2. “日本一、恋しくなる餃子”を目指して熱海へ
中国菜室 壹番「餃子」
とにかく餃子には目がないという秋元氏。食べることが好きなメンバーと“大人の遠足”へ出かけることも少なくないが、その原体験ともいえるのが熱海の「中国菜室 壹番」だ。
スープでパリッと焼きつけた薄皮とジューシーな餡のコンビネーションに唸る「餃子」(¥605)。辣油を手づくりするという細やかな仕事にも、長く愛され続ける理由がある。
中国菜室 壹番/Ichiban
住所:静岡県熱海市咲見町7-48 咲見ハイツ1F
TEL:0557-83-4075
営業時間:11:30~14:00/17:00~L.O.20:00
定休日:木曜
席数:30席
秋元康/Yasushi Akimoto
日本を代表する作詞家、音楽プロデューサーとしてさまざまなムーブメントを巻き起こす。企画・原作や脚本を手がけた作品も多数。新たにプロデュースする『IDOL3.0 PROJECT』も話題。