「努力しているのに、なぜか突き抜けられない」――そんな停滞感の正体はどこにあるのか。導入5000社を超えるマネジメント理論「識学」の提唱者・安藤広大氏によれば、成長を阻む最大の要因は能力不足ではなく「迷い」だという。無意識に曖昧さを選び、成果から遠ざかってしまう人の共通点とは。#部下が動かないのはなぜか #静かな退職に合わせるべき?

成長の材料は「失敗の数」。行動スピードを止める“迷い”の罠
前回の記事では、成長できない人が目を背けがちな「会社との評価のズレ」について安藤氏に解説してもらった。
自分の現状を正しく認識できた次のステップとして、本来誰しもが持つ「成長したい」という思いを確実に形へ変えるために、識学では「迷いがなくなれば、人はもっと成長できる」と説く。
「迷いがなくなるということは、すぐに行動を起こせるということ。ひとつひとつの行動の速度が上がります。そして行動の速度が上がれば、当然全体の行動量も増えますし、迷わなければ、その行動ひとつひとつに対する集中力も高まるわけです。
もちろん経験の浅いプレイヤーであれば、行動量が増える分だけ失敗する数も増えるでしょう。でも失敗は、成長には不可欠な経験です。経験値が増えるのだから、 “失敗できる”ぐらいに思ったほうがいい。そこで失敗という体験にしっかり向き合うことができれば、失敗の量=成長の材料になってくるわけですから」
迷いが生じると、行動のスピードが落ちるだけでなく、足が止まってしまう。結果として経験値も積めず、前進するチャンスそのものを逃してしまうのだ。
必要なのは“曖昧さ”の排除
では、なぜ人は立ち止まり、どちらへ進むべきか迷ってしまうのか。安藤氏は「明確な目的や評価基準の欠如」を挙げる。
「立ち止まって、どっちに行けばいいか迷ってしまうという状態を脱するには、明確な目的や評価が必要です。
例えば、営業の仕事だったとしましょう。今週の売り上げ目標は100万円、というのは明確な目標設定ですよね。目標が明確にあれば、現時点で見込める売り上げが80万円なら残りは20万とわかるので、そこを埋めるためにどんなアクションを起こせばいいのかも明確になり、的確に行動が起こせるわけです。
でも『今週できるだけ頑張ります』という目標になると、なんとなく『努力しなければ』という意識だけが先行し、自分が取るべきアクションが明確になりません。現状で足りているのか不足しているのかすら分からないため、目の前の案件を詰めるべきなのか、それとも先々の種まきに動くべきなのかの判断がつかず、あれこれと考えて迷ってしまうので、結果的に行動の量も質も低下してしまうのです」
あえて曖昧にしていないか? 成長のブレーキを外す「目的と責任」
目的を具体化せず、迷い続けてしまう背景には、人間の無意識の心理が働いていると安藤氏は指摘する。
「当たり前ですが、明確な目標を設定すれば、そこには責任が生まれますし、単純に勝ち負けもはっきりしてしまう。だからこそ、あえて曖昧な状態にしておいたほうが、自分にとって『安全』だと無意識に防衛線を張ってしまうのです。
この心理は、現場のプレイヤーだけではなく経営者にも当てはまります。識学がコンサルティングに入っている会社を見ていても、マネジメント側が曖昧で迷ってしまっているケースは珍しくありません。
でも曖昧な状態は、実質利益を失っているのと同じです。仕事における目的や役割、責任、そして評価を明確にする。それによって人を組織の『ムリ・ムダ・ムラ』から解放し、本来持っているパフォーマンスを最大限に引き出すことこそが、識学のアプローチです」
仕事において、迷いは成長を阻むブレーキ以外の何物でもない。個人も組織も真の成長を求めるのであれば、まずはその曖昧さを脱ぎ捨て、明確な目的意識を持つことから始まるのだ。
安藤広大/Kodai Ando
識学 代表取締役社長。1979年大阪府生まれ。早稲田大学卒業。大学時代はラグビー部に所属し、勝敗と向き合う厳しい環境で4年間を過ごす。NTTドコモ入社後、営業としてキャリアをスタート。上場企業への転職を経てマネジメントに携わるなかで、「人のやる気」や「人間力」に依存する組織運営に限界を感じ、識学と出合う。誤解や錯覚を排した明確なルールと仕組みによるマネジメント理論に強く共感し、事業部の立て直しでその有効性を実証。2015年に株式会社識学を設立し、創業4年足らず(3年11ヵ月)東証グロースに上場。現在は延べ5,000社以上の組織改革を支援している。組織マネジメントに関する著書は『リーダーの仮面』などベストセラー多数。「がんばっている人が、正しく報われる組織を増やしたい」という思いが、識学の根底にある。

