「仕事を断ったら評価が下がるかもしれない」。そう思うあまり、頼まれた仕事をすべて引き受け、気づけば自分の業務が回らず残業続きになっている――そんな経験はないだろうか。評価を守りながら仕事を引き受けるべきか、それとも断るべきか。5,000社以上に導入されてきた組織マネジメント理論「識学」を提唱する安藤広大氏が、その判断基準を解説する。【その他の記事はコチラ】

仕事を断るかどうかは「評価」ではなく「責任」で判断する
【相談】評価が気になって、頼まれた仕事が断れません。(20代・事務職)
今の部署のなかでは比較的若手ということもあり、上司や先輩から仕事をよく頼まれます。「断ったら評価が下がるのでは」と思ってしまい、頼まれると断れません。結果的に⾃分の業務が回らなくなり、残業が続いています。この状況を改善したいのですが、どうしたらよいでしょうか。そして仕事を断らないという前提は正しいのでしょうか?
前回の【識学17】で安藤氏が指摘したように、仕事を頼まれるということは上司や先輩があなたを信頼し評価しているということに他ならない。
「基本的には、仕事を断らないという考え方は間違っていません。ただし仕事を受けるかどうかを、申し訳ないとか言いにくいとかで判断すべきではありません。まず、あなたは会社のなかでいち役割を担っている存在です。
であれば判断すべきなのは、受ける仕事に対し業務量や仕事のレベルが自分の役割でできる範囲なのかということ。自分の責任を果たせる業務量なのか。その点を基準に判断することが重要です。」
つい「期待に応えなくては」「評価に関わるかも」などと考えてしまうが、あくまでも感情ではなく、自分の今の状況を俯瞰的に捉えたうえで考えなくてはいけないというわけだ。
「そのうえで本来の業務の時間がなくなるとか、期限が遅れそうだといった状況になりそうならば、それを上司にちゃんと伝えましょう。
例えば『今の仕事の期限が◯日程度遅れると思いますが、こちらを優先したほうが良いですか』『業務が増える分、残業が発生しそうです』。あるいは『現案件の期限が遅れそうですが、どうしたらいいですか?』と助言を求めてもいいでしょう。自分の状況を把握し伝えることは、会社での責任を果たすために必要な行動ですから」
それでは、仕事を断ることは評価が下がることにつながるのだろうか?
「結論から言えば、一般的にはつながると考えられるでしょう。なぜなら上司はその人にやってもらいたい、やったほうがいいと期待して頼んでいるからです。ただし、それは上司が部下の業務量や責任範囲を把握できている場合。
相談者の方が悩まれているのは、その人がどれぐらい仕事を抱えているかを上司側が把握していないからではないかと思います。その場合は、先ほどのように状況をちゃんと伝え、自分が果たす責任範囲を上司にも認識してもらい、その仕事を受けるべきかを判断してもらう。
そこを明確にしないまま他の業務がおろそかになってしまっては、その仕事を受けたとしても、結局評価が下がることになってしまいます」
仕事を頼られるのは自分への期待だと捉えるべきだが、自分のやるべき責務と照らし合わせて、期待に応えることと、自分の責任を果たすこと。その境界線を見極めることが重要だ。
何となく申し訳ないといった感情からではなく、自分の責任が果たせない可能性があるのならば、上司に伝え改善策を探ることこそ必要な行動なのだ。
安藤広大/Kodai Ando
識学 代表取締役社長。1979年大阪府生まれ。早稲田大学卒業。大学時代はラグビー部に所属し、勝敗と向き合う厳しい環境で4年間を過ごす。NTTドコモ入社後、営業としてキャリアをスタート。上場企業への転職を経てマネジメントに携わるなかで、「人のやる気」や「人間力」に依存する組織運営に限界を感じ、識学と出合う。誤解や錯覚を排した明確なルールと仕組みによるマネジメント理論に強く共感し、事業部の立て直しでその有効性を実証。2015年に株式会社識学を設立し、創業4年足らず(3年11ヵ月)東証グロースに上場。現在は延べ5,000社以上の組織改革を支援している。組織マネジメントに関する著書は『リーダーの仮面』などベストセラー多数。「がんばっている人が、正しく報われる組織を増やしたい」という思いが、識学の根底にある。

